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『旧市町村日誌』33 長崎の島つれづれ文・写真 仁科勝介(かつお)

平戸市から船で的山大島を目指します。「まとやまおおしま」ではなく「あづちおおしま」と読むとは、知らなかった! 神浦の町並みを訪れると、路面と車以外はそっと昔の姿のままで、流れている時間の優しさに感動。

 

平戸市の北にある生月島。大学の先輩の出身地で、「とっても良い島だから!」と話されていたので楽しみにしていましたが、遠方から生月島の輪郭が見えただけで、「なんだこの島は!」。良い島だと直感させる気配がありました。遠目からでも島の斜面に建つ家並みが抜群に良い。

 

長崎県は港も多く、船もたくさん見かけます。生月島で見た漁船はなかでもとりわけ鮮やかで、力強さがありました。例えるなら気仙沼で見た漁港と似ていて、気仙沼の漁港は、歩いているだけでもパワーを分け与えてもらえるような力強さを持っています。生月島でもそれに似た引力を感じました。美しい島でした。

 

西海市には大島と崎戸があります。元々は炭鉱の島でしたが閉山し、今は国内有数の大島造船所が稼働しています。赤と白の大きな建造物が、造船所のアイデンティティを語っていました。2021年の高校野球、春の選抜に出場した大崎高校もこの地域。この日はグラウンドでサッカーをしている少年たちに出会いましたが、強いチームの持つ規律と落ち着きを感じました。あとで聞いた話では、大島や崎戸はスポーツが盛んだといいます。強いチームが強い、それがスポーツの平等なところだし、それを信じていれば強くなれる。そして、島の人たちもその姿を応援する。良い循環だなあ。

 

長崎市の軍艦島の東には、高島という島があります。先に炭鉱で栄えたのは高島で、あとから端島(軍艦島)が急速に栄えたと。軍艦島は現在無人島ですが、高島は今も島民の方が暮らしています。歩いていると無人になった団地のマンションがあり、濃い匂いを感じました。壁のシミや空っぽのベランダに、人が暮らした時間が染み込んだ、鼻ではなく、目で感じる匂い。東京でも無人のマンションがたまにありますが、それよりもぐんと濃いのはなぜだろう。

 

と、今まで記事を一週間ごとの日記でまとめていましたが、今回から自由に書かせてもらっています。年が変わったタイミングでスタイルを変えてみました。旅の更新が遅れてしまっていますが、長崎県の離島を含めて、新しい出会いに驚かされる日々です。



無人になったマンション。穏やかな暮らしも広がっています。(長崎県旧高島町(長崎市))


仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。


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