『旧市町村日誌』44 休日の日記 文・写真 仁科勝介(かつお)
6月28日(金)
カプセルホテルに連泊している。大部屋に入ると小さなカーテンが幾つも閉まっていて、蜂の巣へもぐり込むようだった。ネットカフェには数えきれないほど泊まってきたが、カプセルホテルは初めてだ。
知らない誰かの目覚ましで起床する。雨がしとしと降っており、当初の計画通り旅を休んだ。肌寒く、湿度が高い。ホテルの硬い椅子に座って作業を進めた。Wi-Fiと電源、そこに座り続けても怒られない環境さえあれば、構わない。
直近の考えごとは雨と隠岐。隠岐への往復が無事にできたとき、旅の見通しが立つ。多少の雨は構わないけれど、大雨は避けたくて、乗船日を探っている。それにしても雨マークが週間予報の終わりまで続く。焦ってはいけない。天気予報との睨めっこにも、旅のやりがいはある。
昼に出雲そばを食べた。島根県で3回目。割子そばを2回、今日はあたたかいそばに。まだ、顕著な味の違いはわからない。秋田の稲庭うどん、福岡のやわらかいうどん、宮崎のチキン南蛮……地元の食べ物はどれもお店によって、確かに微妙な違いがある。でも、そばの違いは、まだよくわからない。気づける日が来るだろうか。それに旅の8割は空腹だ。満腹になれる瞬間は尊い。
1200の町を訪れて、もう少しでこれから訪れる町が1000を切る。この数に、東京23区は含まれていない。ほとんどが地方と呼ばれる土地だ。さらにその多くの町は、地方都市の辺境に位置する。そうした土地の声を大きな場所に届けることは、容易いことではない。しかし、社会の中心地から日本を観るだけでは見えないことがたくさんある。そのことをずっと考えている。
仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。
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