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『旧市町村日誌』 57 雨の日のこと 文・写真 仁科勝介(かつお)
10月23日(水)
長野県の旅を進める中で、今日が初めての本格的な雨となった。
出発前は雨雲レーダーを見て、「あ、もうすぐ降りそうだな」というタイミングだったので、合羽と長靴を装備して出発する。最初に訪れたまちでは確かに雨が降りはじめた。
でも、そこまでひどくはない。
次に向かった松本市街地では雨が止み、時折日差しが差し込む。この日差しがずいぶん熱を帯びていて、思わず汗をかく。長靴は履いたまま、合羽を脱ぐ。ここから先、雨が降るのかどうか、予想がつかない。テザリング用のガラケーの電源を切っているので、チェックするのも面倒。なんなら、次に向かっていく方角の空は明るい。今日はもう降らないのか?
と、松本市から塩尻市街地を通り、奈良井宿へ着くと、小降りに変わる。雨になると風が冷たくビュウビュウと吹く。
それから木曽町へ移動する頃、小雨から本降りに変わった。カブの移動中に本降りになると、顔に当たる雨粒が大きくなって痛くなる。耐えられる痛さなら構わないが、顔をゆがめないと痛いぐらいの痛さなので、ずっと顔はゆがみっぱなし。たまに風よけのウインドシールドに隠れるけれど、ウインドシールドは雨粒で視界が悪く、ワイパーも付いていないので、路面がはっきり見えない。結果、すぐウインドシールドから顔を出すので、雨粒が顔に当たる。そして、それがずっと痛い。その繰り返し。
日義支所に着いた直後からは、さらに土砂降りに。この雨でカブに乗るのは控えようと雨宿り。屋根付きの駐輪場があって助かった。支所内ではおじいちゃんたちがすでにぼくの存在に気づいて目線を送っている。だけど、さすがにこの状況は分かってくれるでしょう、と気にしない。
ここでようやくガラケーの電源を入れてテザリングを飛ばし、雨雲レーダーを見る。ああ、これは、完全に雨雲に囲まれたなあと。
それでも一瞬雨が弱まったタイミングで最後のまちへ移動。最後に訪れた木曽町の旧木曽福島町は、ふつうの雨が降っていたけれど、やがて土砂降りが戻ってくる。
もう、すでに歩いていたので雨宿りせずそのまま散策する。風が強く、雨も激しく、合羽のフードを風で飛ばないよう片手で持ち、前傾姿勢で歩いているとき、中山道を旅した江戸人も、大雨の日はこんな感じで歩いていたのではないか、と思った。
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仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。
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