『旧市町村日誌』22 秋田県の旅 文・写真 仁科勝介(かつお)
9/16(土)雨のち晴れ
秋田市から三種町までは50kmほどの距離があるものの、着いてからの移動は早い。さらにUターンして秋田の旧市町村を巡った。途中、川の橋の柱に大小さまざまな木々が引っかかっている。7月の豪雨の影響だろうか。でも、その場にいなかった自分が想像しようとすることも卑しい。
9/17(日)晴れ
唯一と言っていいぐらい、走ってみたかった道。それは秋田と青森を日本海沿いで結ぶ国道だ。ここに有名なスポットはない。地元の人たちからすれば、何の変哲もない道かもしれない。だからこそ、その何もない感じに触れたかったし、いよいよ八峰町を北上して青森県に入ったとき、歴史的な日だと思えた。
9/18(月)雨のち晴れ
濡れた路面に差し込んだ朝日が、モノクロの世界を光で染めている。今日は土砂降り、晴れ、土砂降り、晴れ……といった天気を繰り返していた。今日と明日は作業日にしている。秋田で作業日に使える日数の理想は3日間。先にその2日分を消化することにしたが、午後からは晴れてきたので、すこし歯痒さもあった。
9/19(火)大雨、雷
朝は日差しも差し込んだくらいだが、昼頃には土砂降りへと変わり、雷のオンパレード。秋田市内も相当雨が降ったようで、これ以上水害が広がらないように心から願う。
9/20(水)気まぐれな晴れ、途中、唸るような雨
今日ばっかりは、どこで雨につかまってもおかしくないと思っていたが、旧森吉町の浜辺の歌音楽館に入った直後、唸るような雨が降ってきた。しばらく雨宿りをさせてもらう。それからは降ったり止んだりであった。
旧阿仁町のくまくま園に、出版社のような響きの「ヒグマ舎」があって、かなり近い距離からヒグマを3頭見た。もちろん野生ではないし、安全な場所から見ている。そのことによる心理的な安心感があったわけだが、もし森の中で出会ったら、果たして命が助かるだろうか。一頭のヒグマと目が合ったが、理性的な感情を持っているようにしか思えなかった。
9/21(木)1日雨
新しいカブの乗り方をひらめいた。雨の日で、流石に写真をたくさん撮る状況ではない移動では、カメラバッグを荷台に入れれば良いのだ!
リュックではなくショルダータイプのカメラバッグを使っているのは、すぐにカメラを取り出すため。いつもカメラバッグを座席の後ろに置いているのも、同じ理由。ただ、座席の2/3がカメラバッグに取られて、自分は座席の先っぽに座っているので、お尻がすぐに痛くなるのだ。
そうした状況だったわけだが、先日荷台を大きなものに新調したおかげで、カメラバッグも入るようになった。しっかりと雨も降っているし、試しにカメラバッグを荷台に入れて走ってみると、なんとまあカブの乗りやすいこと。どこまでも走っていけるような気がした。
9/22(金)晴れ
空の青が、夏から秋へと変化しつつある。濃いブルーの気配から、淡いブルーへ。この秋空が、今の黄金の稲穂に似合うんだ。写真にするよりも、目で見て味わう方が綺麗に思える。
大曲の花火会場の河川敷に立ったとき、長岡花火で見た光景を思い出した。広大な河川敷を埋め尽くす、圧倒的な人の数。ここにもあの日見た世界が現れるのだと思うと、たったそれだけでも花火大会に行きたくなった。もちろん、人混みが大好きなわけではない。それでも、花火大会の人混みは、同じ志を持つ群衆なのだ。そこには同じ夜空を見上げる、確かな一体感がある。だから、その世界をまた体験してみたい。大曲の花火大会、いつか必ず。
仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。
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