遺産分割協議書は必要か【争いを避ける】
残された時間に大切な人を大切に。
相続アドバイザーのつむつむです。
遺産分割協議書を作成するには、専門家に見てもらわないといけないのでしょう。お金がかかるし、大して財産もないんだから、遺産分割協議書を作成しなくてもいいんじゃない。
遺産分割協議書を作成していなくても、すぐに困るということはないかもしれません。けれど、契約書もそうですが、こういった書面での記録というのは、何かあったときにとても役に立つものです。
遺産をどのようにわけるのかは、相続人の話し合いだけで決めることができます。別に、書面にする必要はないのです。
けれど、多くの方が最初に直面するのは、それを第三者に伝えるときです。不動産の名義を変更するときには、遺産分割協議書が必要になります。そうでなければ、法定相続分に応じた登記しかできませんから。
相続税の申告をするときにも、法定相続分とは異なる割合・方法で遺産分割するのであれば、遺産分割協議書を作成して、具体的な相続分・具体的な分け方を示す必要があります。
預貯金の引き出しの際にも必要になりますね。
では、相続税の申告もする必要がないし、不動産の名義も今は変更するつもりもなく、預貯金も引き出さなくてもよい、ということであれば、遺産分割協議書を作成する必要はないのでしょうか。
例えば、父親が亡くなって、母親と娘、息子が相続した場合に、母親に全て相続させる合意があったとします。けれど、母親が亡くなる前に、母親と娘が仲たがいして、母親は全財産を息子に相続させるという遺言を書いていたとします。
娘としては、母親が書いた遺言に納得がいかなかった場合に、父親の相続について、母親に全て相続させる合意があったことを否定するかもしれません。
遺産分割協議書がなければ、母親に全て相続させる合意があったかどうかについて、壮絶な争いが始まるかもしれません。各自のメール、LINE、手紙をひっくり返して何か有利になる記録が残っていないか。故人である母親の日記までひっくり返されて何か書いていないか調べることになるかもしれません。もう、娘と息子の仲は最悪で、生涯修復されることはないかもしれません。
結局、証拠が不十分であれば、娘が勝つかもしれません。
裁判所を利用した手続でも、真実が明らかになるとは限らないのです。裁判所を利用した手続は、誰にも同じように主張をして、証拠を提出して、公平な第三者である裁判官に判断してもらう平等な手続きです。しかし、真実が発見されるとは限りません。
息子は、娘に対して、一生、嘘をついて財産を多く取得したと思い続けるでしょうし、娘の方としても、真実に反して財産を多く取得してしまい罪悪感を抱え続けることになるかもしれません。
書面化することは面倒なことですし、費用もかかります。けれど、親族で争うことを避けられるのであれば、ぜんぜん安いものです。
まずは、将来の争いを避けるための簡単なもので構いません。実際には争いにさえならないのであれば、遺産分割協議書という正式なものでなくてもいいのです。メールやLINEや写真など後日確実に相続人の全員が同じ内容で合意していたということがわかるような記録を残して置ければまずは充分です。専門家に依頼する必要もありません。
とはいえ、余裕があるのであれば、不動産については、登記移転ができるほどに登記簿に記載された情報をきちんと載せたものにしておきましょう。
預貯金についても、金融機関に示して引き出し手続ができる程度には、銀行名、支店名、口座番号、名義人氏名、口座の預貯金全額なのかそれとも特定の金額なのか、などを記載しておくとよいと思います。
書面にするのであれば、せっかくですので、きっちり署名・実印での押印までしておいた方がのちの手続きに利用できてよいでしょう。
では、残された時間に大切な人を大切に。
最後までお読みいただきありがとうございました。
つむつむ