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立石監査役・佐々木社長対談「攻めのガバナンス強化・リスク管理・経営支援」20240823

こんにちは。コーポレート部門担当役員の安田です。
フュージョン株式会社は、本年5月に新たに監査役として弁護士の立石光宏氏をお迎えしました。
ご就任から4カ月経ち、当社の全般を把握されてきたこのタイミングで、「攻めのガバナンス強化・リスク管理・経営支援」に懸ける思いについて、佐々木社長との対談を通じてお伺いしました。

司会者(安田)
よろしくお願いします。
本日は、本年5月に当社監査役にご就任いただいた弁護士の立石光宏さんにお越しいただき、佐々木社長と対談いただくことになりました。
立石さんとは、札幌証券取引所が開催したセミナーの席で、私が初めてお会いし、その後意見交換をする中で、当社と立石さんの間には北海道発、上場企業法務、そして攻めのガバナンスという三つの部分で共通する思いがあると確信してご就任要請をするに至りました。
今日は社長と立石さんにそれらを掘り下げるような対談をしていただき、社内外のステークホルダーにお伝えすることを目的としてこの対談を企画しました。当社のさらなる成長につなげたいと考えますので、どうぞよろしくお願いします。
初めに自己紹介をお願いします。また、専門領域を教えてください。

立石
弁護士法人森・濱田松本法律事務所 札幌オフィス代表の立石です。
企業法務全般をカバーし、専門分野として上場会社のガバナンス強化に力を入れています。
また、株主総会のサポートや、アクティビストが入ってきた時の有事対応なども得意とするところです。その他、最近注力しているのはM&Aに関する支援や、スタートアップ支援の分野です。スタートアップ企業自体をサポートすることもあれば、スタートアップ企業に資金を提供する側から要請されて契約面のアドバイスをすることもあります。

安田
なるほど。それでは次に、森・濱田松本法律事務所札幌オフィスを開設することとなった経緯を教えてください。

立石
まず前提として、森・濱田松本法律事務所は新しい拠点を設ける際、ある弁護士が責任を持って「立ち上げたい」と名乗り出る形をとっています。その弁護士が代表として立ち上げから運営まで強い意志を持って一貫してやるという、ある種の立候補制をとっているわけです。
それで私が立候補しました。私の生まれは東京ですが、母親が千歳市出身ということもあり、北海道にご縁がありました。また、13年前に弁護士になる前の一年間の研修期間(-全国の裁判所が所在する地域から選択する-)に札幌を第一希望として選択し、一年間住んでいたということも背景にあります。
北海道のことが大好きになっていたのです。どこかのタイミングで恩返しのためにこちらに戻ってきたいと考えていたのですが、それなりに弁護士としての経験を積む中で、自分のやっていることが本当に北海道のための役に立つのではないだろうかという手応えも出てきたタイミングだったので、思い切って事務所に相談して札幌の立ち上げに名乗りを上げたという経緯です。東京以北に関しては、拠点が無く、マネジメント層の中で課題として数年前から考えていたようです。ですから、私が立候補した際には全力を持って任せてもらえるということになりました。

安田
札幌オフィスとして、その代表としてのミッションを教えていただけますか?

立石
東京で仕事をする中で、当然どうしても東京には人・モノ・サービス・お金が集中してしまうことを感じていました。今後も恐らく東京が最大の都市であることは間違いないと思います。しかし一方で私は、ここ北海道が最先端の都市になれる可能性を秘めているのではないだろうかと思っていたのです。何か新しいことをするとなった時には、まず北海道でやるんだという形で、新しいことやチャレンジングな取り組みを北海道で最初に行うというのは恐らく国の政策や方針としてもあり得る話だと思っています。
まず土地が広く、今後最先端エネルギーを含めてかなり開発が進んでいます。また、食料の自給率も高いです。安全保障の観点からも北海道はポテンシャルが非常に強いという実感があります。
また、例えば自動車の自動運転を検証するとか、ドローンの新たな活用方法をテストしようとなった時に、まずは北海道で最先端の取り組みをやろうという動きが常に出てきておかしくないと思うのです。
最大の都市にするのは難しいかも知れませんが、最先端の都市にするというのは大きなビジョンとして持っていておかしくないです。そのためには、アクションする人に対して専門的な支えが必要だし、その伴走者となるというのが、札幌オフィスの大きなビジョンでありミッションと言えます。

佐々木
現実に、札幌や福岡が政策のテストケース、企業のアンテナブランチとして選ばれることがとても多いですよね。

立石
大樹町のロケットとか、洋上風力といったGXの流れなど、北海道は実証実験の場所になっています。

佐々木
最先端になり得るポテンシャルとしてはよく分かります。
逆に不足していると感じる事はありますか?

立石
北海道を軸足として何か始めるとき、東京でやっていることは、実はあらかた北海道で基本的なことを既にやっていますよという状況にしたいです。且つプラスアルファで、新しいことはもうなんでも北海道で出来ますよという状態にしたいです。むしろ北海道に行けば、最先端のものに触れられますというところに持っていかないといけないと思います。

佐々木
逆に言うと、遅れている部分も相当感じておられるのですね。

立石
我々がやっている企業法務に関することを北海道でも当たり前にやれるようにしたいです。例えば企業間取引のストラクチャーやスキーム、考え方等です。導入して力になれることが沢山あると感じています。
最終的な理想像は、先ほど申し上げた「最先端」だと思いますが、その準備段階として、まず東京での「当たり前」と同じ状況にして、足腰を強くする時期だと考えています。

佐々木
なるほど。開所して1年経過してみて、今の北海道や札幌に特有の傾向はありますか?

立石
例えばファイナンスの取り組みが、徐々に根付いてきていると感じます。恐らく北海道と地元の金融機関の方たちがかなり頑張っていると思います。難しいファイナンスのストラクチャーや、スタートアップ支援の金融周りが東京に追いついています。
また、北海道の特色である再生エネルギーやGX周辺には力を感じます。地域全体でそれらについての問題意識が高いからこそ、絡めたファイナンスも動いているように思います。GXの事業を頑張っているところにお金を出したいというメッセージが先行しているのは非常に良いことだと思います。国や道からの力強く分かりやすい発信があることで、それらの周りの事業にも波及しているように感じます。

佐々木
GX、エコ、半導体の集積地にするという流れについてその通りだと思います。あとはスタートアップ創出のエリアになりたいし、私たちも関わっていきたいですね。
産学官がうまく組み合わさり、イノベーションを起こしたいというテーマ設定は上手いです。しかし残念ながらまだそこに関わるプレイヤーの絶対数が少ないと感じています。。
各種の会議に同じ人たちが集まってしまいます。「ああ、またお会いましたね。」と。産学官全員そうなっている面があります。分かり合えるという良い部分もありますが、悪く言えば裾野が広がっていかないのです。
感度が良い人が固まっているがゆえの現象かも知れません。そこからもう少し裾野が広がっていくと、ボリュームが出てくると思います。GXにしても半導体にしても盛り上がっているけれど、じゃあ北海道の地元の会社でやれることは何かというと、宿泊業や飲食業や清掃業という副次的なサービス業のことばかり考えてしまうように見えます。本流になかなか関わっていないのが現実です。。
本丸は道外の人が考え、周辺のビジネスをしようという昔からの流れだと思います。そこが変わらなきゃいけないところです。立石さんが言った「札幌・北海道の会社でも東京と同じクオリティを当たり前に出せる状態」にしなければと思います。
我々フュージョンとしても、マーケティングの仕事の中で、札幌の会社でもクオリティを出して在京の大企業の仕事を普通にいただいていることに誇りを持っています。その感覚を道内の企業と共有したいし、続けていると潮目が変わると思っています。

立石
おっしゃる通りで、コンセプトが一人歩きしている感じはあります。GXや金融の世界で十年いや百年に一度のチャンスという報道のされ方をしているけれども、じゃあ企業人でも市民の方でも、自分にどう関係あるのかは、よく分かっていないという印象があります。
自分たちが出来ることに想像力を働かせて、自分たちのことに置き換えて、どうビジネスするかを考えなければいけないと思います。企業間の契約一つとってもそうですし、どのような規制をクリアすれば良いのかなど、分解し、解像度を上げる必要があります。自分たちの側に引きつけて考えられる力が必要です。そのためには情報やノウハウが必要ですし、そこをサポートができるのが我々です。

佐々木
いま北海道や札幌から、大きなうねりが生まれて行きそうな感じが確かにあります。
また、大きな動きを感じるけれども、理解できない領域、高度な情報がないと、太刀打ちできないことが多いとも感じます。例えば良い製品が出来たが、海外に持っていくと法律が違うから売れませんという話を聞きます。北海道に千載一遇のチャンス、数十兆円という規模の投資がなされるような時に、そこで中心プレイヤーになるためには、どう基準をクリアしていくべきかがわかっていないという感じです。人材育成の仕方とか、何をしたら製品やサービスが行政や大手資本に採用されるのか、そしてその採用基準が何なのかを知らないままのような気がします。北海道や札幌の経営者自体が勉強しなきゃいけないと思います。自分たちは一生懸命やれる。真面目だし、素朴だし、いい人材も沢山いると言うけれど、それだけだとスピード感を持って進んで行かないと感じています。

安田
そうして北海道や札幌のことが見えてきた頃に当社からの就任要請があったわけですが、率直にどうお感じになられましたか。

立石
非常に嬉しかったです。札証アンビシャス市場で今後どんどん成長していこうとする元気な企業さんから、そういった光栄なお話をいただいたことが嬉しかったのです。また、当社の「伴走型でマーケティング支援をする」ところに共感していました。伴走型という点は、我々の仕事に通ずるところがあり、クライアントのために何が提供できるか日々頭を悩ませながら提供していく点で同じです。非常に共感し嬉しく思いました。

安田
ありがとうございます。こうして数ヵ月関与していただいてお感じになられたと思いますが、新興市場に上場しているもトップライン14億円台の当社には、成長スピード然り、運営手法然り、まだまだ課題が山積です。

佐々木
札幌や北海道には上場企業が数十社しかないですよね。全国に4,000社以上の上場企業がある中で、5%経済だとすれば200社位あってもおかしくないはずです。。しかし実際には札証には年に1社か2社上がるかどうかという状況が続いています。成長とガバナンスを意識した経営者が増えていくことが、もっと必要だと思います。そこでガバナンス意識について、北海道の会社はどうですか。

立石
かなり感度高く、危機意識を持っている経営者が増えている一方で、理解はしているけれども、じゃあ自社に置き換えて、すぐに何かやる必要もないよねという感覚をお持ちの方も一定数いる感じです。先ほどからの話と繋がりますが、喫緊の課題が無くても、今から備えられることが沢山あり、一歩前に出るために、他社よりリードするためにガバナンス強化がきっかけになることが大いにあるのです。端的に申し上げるともったいないと思う場面が多数あります。

佐々木
我々はまだこの規模ですが、マーケティング企業だからこそESG経営に注力していかなきゃいけないし、北海道の企業の中で最先端を走っていく、もしくは東京でやっていることが当たり前に出来ている状態を目指していかなければ投資家からもクライアント企業からも選ばれていかないのだと思います。自分たちのビジネスモデルを俯瞰したとき、意識付けをまだ小さなうちに植え付けて定着させ、それが当たり前の状態で大きくなっていかなければと思います。
私が入社した時は数名で、ガバナンスという言葉を聞いたことがない状態でした。それこそベンチャー企業の卵のときからスタートし、機会があってIPOしたわけですから。100名近くの規模になり、例えば資本提携させていただくとか、アライアンスを組んで事業をすることが増えてきました。外部の人材も取り込みながら、できることを増やしている過程でやはり内部統制とかガバナンスとかリスクヘッジの意識を上げなければと感じますね。

立石
その通りです。先ほどからお聞きする「北海道のコミュニティ感」の中で、フュージョンが動き出して発信することによって、周りの企業たちが刺激を受けると思います。近いところであんなに進んだ取り組みをしているのかと感じることで連鎖していく可能性が強いと思います。顔がお互い見えているがゆえに、ダイレクトに伝わるはずです。

安田
当社のビジネスそのものや取締役会の運営状況について印象を教えてください。

立石
当初数回、経営会議もオブザーブしてビジネスの理解を進めました。経営会議に出ているメンバーと取締役会に出ているメンバーが相当程度重なっているので、きちんとした連続性があると評価しています。経営会議で現場の話を拾い上げて、それをボードのメンバーも認識し、議論がなされています。
よく、取締役会の形骸化という議論がありますが、当社の場合は経営会議で議論された課題が正確に、社外役員にも伝わります。議論の経緯を踏まえてフィードバックされています。その意味では、この規模感で適切にギュッと密な意思決定がされています。

佐々木
ありがとうございます。それは初めて言われました。逆にこの規模でそれが断絶したら最悪ですね。
それでは、もう少しこうしたらいいのにという改善点は何ですか。

立石
前回佐々木さんが指摘して、次の会議で改善されていましたが、過去実績の報告で時間を使い過ぎてはいけないと思います。議論すべき部分や課題として抱えている部分に時間を割くべきと思います。部長陣が若いですから尚更です。各部門で抱えている課題で、ボードに相談したい、意見を聞いてみたいと思うことを中心に議論していくことが大事だと思います。
「課題が何なのか。そして自分はどう考えているのか。皆にどう相談したいのか。」を突きつけられると、深く考え抜いて会議に参加する必要があります。

佐々木
おっしゃる通りですね。やはり部長、経営会議に参加するメンバーの課題設定能力を上げなければいけないと私も思っています。私が課題を提示してそれを「考えてください」ではなく、自分たちから課題を生み出して、解決に向けて活動していく集団にしたいです。

立石
実はもっとワンマンな感じかと思っていましたが、全く違いましたね。取締役間の議論の仕方を見ていても、フラットで活発に発言し合っている。これを言うと面倒になるから控えようだとか、止めておこうというシーンが一切ないと感じます。

安田
俯瞰的な視点で、経営陣や社員への提言をいただけますか。

立石
ガバナンス=コンプラという時代は既に終わっていて、積極的に前に進んでいる攻めのガバナンスが必要だと言われており、これは難しい言葉だと思っています。ガバナンスは、もちろん法令遵守もですが、企業価値向上のために必要だという言われ方なのです。しかしその言い回しには飛躍があります。なぜガバナンスをやると企業価値が向上するのかをブレークダウンして議論しなければならないです。
全てのステークホルダーと信頼関係を築くこと。信頼してもらえることなのです。そこがガバナンスのポイントです。そのためには会社として積極的に情報を発信していくことが必要です。
「ああ、そういうこときちんとやっているのね。」という信頼が生まれていきます。信頼を得るための情報発信は、近年の攻めのガバナンスのキーワードだと思います。

佐々木
単発の何かのニュースというよりは、大きなポリシーの中で、いま当社にどういう発信ができるか。中長期的にそこを強化していくことが最終的にはガバナンス強化に寄与するわけですね。

立石
コーポレートサイト内で沢山の良い取り組みを見ています。ピンクリボンの自動販売機、DMの数に連動した寄付など。あれらをどう見せ、発信していくか。単発のニュースで終わらせずに、「フュージョンってああいうイメージあるよね。」というところにつなげていけるか。
トータルパッケージでの打ち出し方、取り組み方が必要です。むろん社員の方々の意識も含めてだとは思います。「フュージョンといえば」というあるべき姿から逆算していく情報発信が必要です。

佐々木
つながって表現できないと、点で終わってしまいますよね。そこは私も感じていて、会社がどういう存在で、どういう未来を描きたい会社なのかを、なるべく多くの人に伝えるよう意識しています。それは投資家だけじゃなく、採用も含めてです。

立石
そうですね。きちんと情報を発信するということは、「目配り、気配り」の表明です。社内だけじゃなくて外にもきちっと向けることで「どの関係者に対してもすごく丁寧な会社だね」となります。その状態が、ガバナンスの効いた会社と言えます。

安田
私たちに不足している部分がはっきりと分かりました。この対談を通じていただいたご助言、ご指摘を企業運営に反映して、札幌発の総合マーケティング支援企業としてファーストコールされる存在になれるよう、役職員一同成長していきたいと思います。

本日はありがとうございました。