見出し画像

タダシくん

「僕は、自分がタダシだと思ってる」
タダシくんはボソッと言った。

「いや、君は違うな。僕がタダシだよ」
別のタダシくんが通りすがりに言った。

「なにいってんだよ。タダシは僕に決まってるだろ」
また別のタダシくんが遠くから大声で言った。

「君たちがタダシだって言うなら証拠を出してよ」
またまた別のタダシくんが近づいてきて言った。

「お前らうるせえ。俺以外はタダシじゃねえ」
タダシくんたちはタダシくんに蹴散らされた。

「落ち着いてよ。誰もがみんなタダシなんじゃないかな」
僕はみんなに問いかけた。

「まあ、本当のタダシは僕だけなんだけど」
僕は心の中で思った。

いいなと思ったら応援しよう!