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【書評;】 美村里江 第一歌集 『たん・たんか・たん』
こんにちは、匤成です。立て続けに読んだ歌集、第二弾は俳優の美村里江さん(元ミムラ)です。1984年生まれ。
2016年から作歌を始め、約3年半で700首もの歌を詠んだとのこと。その内の236首が掲載されている。後述するが演者のほかにも文章を書くお仕事もしているらしい。作歌した頃のエッセイを10本はさんだ構成。
度を越して懐いた猫のすりよりか晴れた窓辺のペン先と影
ミムラ → 美村里江
2003年、10月クールの月9ドラマで【ビギナー】が放送された。オーディションによって選ばれたミムラの俳優デビュー作品で、“当時の司法試験”を合格したあとの司法修習生の葛藤を描いたドラマだ。とても笑顔が自然な、汚れのないイメージが印象に残っている。
オダギリジョーや松雪泰子など、今思えば豪華な顔ぶれ。どんなストーリーだったかはよく覚えていないが毎週観ていた。唯一覚えているのは最終回で、「アホヤンズ」と呼ばれていたクラスの、トレンドマークが壁に貼ってあったと思うが、それに向かって【検察官になるか、弁護士になるかを宣言する】場面。一人ひとり足台に乗ったりして、カメラに顔アップで「私は、おれは何なにになる」とメッセージを残す演出があった。その時の笑顔。
でも、こちらの都合で映像作品には縁がなくなってしまった。後にも先にもミムラの作品はこれしか見ていないが、歳が近いこともあってよく覚えている。休養期間に入っていたことは知っていたし、また戻ってきたのも知っていた。
僕は、雑誌や俳優さんのブログなど見て回らないほうだから知らなかったのだが、どうやらお休みされている間も書評やコラムを書く仕事はこなしていたご様子。読書が趣味であるとあり、小説の主人公を詠んだ歌もある。
2018年3月、ミムラは美村里江に改名した。その理由について美村のWebサイトにはこう書かれていた。
改名の主な理由は以下の三点。
(一)本家ムーミン“ミムラ姉さん”の知名度がぐんと上がったため
(二)大河ドラマ台本の役名・出演者一覧を見て本来の日本名の大切さ
(三)公私の自分がニアリーイコールになった
俳優だから、誰かを演じるためにオンとオフを切り替えているわけだ。その間は別の人物になりきっている。初めはがむしゃらだったのだろう。そしてキャラクターを入れ替えているうちに「わたしって何だ?」と感じたらしい。
休養期間でゆっくりして、本を読んだりして自分を養っていたそうだけど、短歌を始めてから均衡が取れるようになってきたというか、本人(本名)としての自分に目を向けるようになった。
三十一文字に言葉を削ぎ落とす作業は脳のストレッチのようであり、自分の《真意》がわかっていないとできません。嘘のことというか、虚像でもいいのかもしれませんが、私が普段依頼されて書くエッセイは「正直」な「等身大」であることが重要で、小説のような創作は最も近い作業に思えたのです。
たんたん
短歌を詠みたい病、面白いことを探してしまうくせを怪物に喩え「たんたん」と呼んでいる。書籍で読んでいるので、Kindle版ではどのように表示されるか分からないが、ご本人が描いたのか鉛筆画のたんたんが可愛い。
美村さんは1度、医師であるご主人も覚悟するほどの大病を経験されたそうだ。そのタイミングなのか「たんたん」が姿をくらませた。病気と戦うために面白いことに目を向ける余裕は無かったに違いない。仕事に復帰しているので病気には対処できているのだろうが、僕にもそのたんたんがいなくなった喪失感は解る。僕も思いつく言葉そのものが七五調だったりしたからだ。
闘病記は短歌に起こしやすい。だけど、深刻な状況下では忘れてしまう。あとで振り返って詠んだものかもしれない。
好きな歌はいくつもあるのだが多くは書かない。何故なら、作歌から数年で、さらに自分の創作スタイルを確立しそうな豊かな伸び代があるからだ。
ご主人の優しさと、彼の趣味に付き合ううちにハマってしまった川釣りのエッセイも良い。
向田 邦子
観てないから詳しくは言えないが、美村さんは向田邦子を2度演じている。美村さん自身、向田邦子の大ファンだそうで、縁・思い入れもひとかたならぬ強さを感じる。エッセイや書評を寄せている手前、筆記スタイルが独特な向田邦子の魅力を1人のファン以上に感じているようなのだ。
もし、美村さんが演じた向田邦子を知っている方はコメントください。どんな感じだったか知りたいです。
匤成でした。
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