「朝食」にまつわる生活スタイルの違いから
早朝、まだ布団の中でまどろんでいる夫を尻目に、台所に立ち、鍋で湯を沸かし味噌汁を作る。
そんな風景が日常のように展開されるのだと、結婚前にはほんの少し思っていた。
「朝ごはんはパンとごはん、どっちにする?」
そんな会話を付き合っている時にしたような気がする。
私は「どっちでもいいよ」と言い、彼は「どっちかというとごはんかな」と言っていたので、きっと結婚後は毎朝和食なのだと思っていたのだ。
しかし実際には、夫は習慣的に朝ごはんを食べなかった。
私は私で、幼い頃からずっと朝食にはパンだった。そしてその習慣を変える必要もなかったので、結婚後も当然のようにパンを食べていた。
ささやかではあるけれど、結婚してみて初めて「それぞれがどうしたいのか」が異なることに気づいた瞬間だった。
結婚生活では、二人の中にあるそんな些細な違いが沢山ある。
例えば、私は飲み物は冷蔵庫でちゃんと冷えているものがよくて、夫は常温が好きだとか。私はお米は一日分まとめて炊くけれど、夫はその都度炊くとか。
一方が「どちらでもいい」と思っている事柄に関しては、より想いの強い方のやり方が採用された。だから米は毎食その都度炊いている。そして飲み物は基本的に冷蔵庫で冷やしている。
では双方が、「こうしたい」という思いが強い時には、どうしたらいいのか。
「結婚したって、それぞれ違った人間なんだから別のやり方でやりましょうよ」と考える人もいれば、
「結婚したのだから、何とか一致して同じやり方をしましょう」と考える人もいる。
私たち夫婦はおそらく二人とも前者の考え方だった。だからあっけなく朝食はそれぞれの好きにというスタイルに落ち着いたのだけれど、結婚当初二人で一緒に朝ごはんを食べていた時の何となく居心地の悪い感じは覚えている。夫は私のために少し無理をして朝ごはんを食べている。そして私は、夫を喜ばせたくて準備した朝食に反応が悪くて不満を抱いている。だから、そんな状態が続かなくて良かったのだ。そう私は思っている。夫が「僕は朝ごはんは食べなくてもいい」ということを教えてくれて良かった。
それぞれ無理をして、互いのやり方を合わせていくよりも
別々のやり方だけれど、お互いにご機嫌で過ごせるのなら、そちらを選びたい。
でももしも、どちらかを選ばなければならない時には、不満を飲み込むのではなくて相手と向き合いたい。ほんの少し面倒だったとしても。
「朝食」というささやかなトピックであったとしても、私たちが居心地の良いそれぞれのスタイルに落ち着くまでに少しばかりの遠回りをした。「自分はこうしたい」という思いと、「相手はこうしたい」という思いがそれぞれ尊重されるまで。
ところで今は、二人で朝ごはんを食べている。それも「ごはん」を。でもそれはまた別な話。