神様の無駄遣い
鐘の音と共に、一斉に手に持っていた風船が放たれる。
絵に描いたような青空の中に、赤と白の風船が徐々に吸い込まれていく。
今日は結婚式。
夫の友人であったジョージさんと、リサさんが夫婦としての歩みを始める日。
私と有生はリーフを走らせ、途中で充電も挟みながら、3時間ほどかけて東京の表参道にある結婚式場『Le Ciel Blanc』に到着した。
既に数十人の参列者が、式の開始を待っている。
ジョージさんとリサさんとは、夫を介して一度お会いしたことがあった。
二人は、結婚したばかりだった私たち夫婦の元を、すぐに訪ねて来てくださった。
穏やかで優しい雰囲気を持ちながら、一度イエス・キリストについて語り始めると
とたんに熱を帯びて、その胸の奥にある情熱がほとばしるようだったジョージさん。
そして、きれいで真っ直ぐな瞳を持ち、決して何ものにも物怖じしないリサさん。
人を惹きつける魅力を持ったお二人を、私もまたすぐに大好きになった。
そして、この結婚式には二人の新しい歩みを祝福したいと願っていた。
そんな二人の結婚式。
結婚式場の正面には、一面のガラス窓越しに冴え渡った青空が見えた。
式が終わると外のテラスに出て、新郎新婦は鐘の下に立つ。
恵まれた天候の下、参列者の祝福の視線の一身に集めた二人は、とても輝いて見えた。
人生の中で明確な目的を持ち、情熱を持ち、そして物事を成し遂げるだけの能力を持った二人。私はそんな風に二人を見ていた。
「来てくださった方々が、イエス・キリストの愛を体験してくださるように」
新郎新婦のぶれることのない情熱によって、披露宴はあたかもイエス・キリストの伝道集会のようになっていた。アーサー・ホーランド氏をはじめ、名だたるクリスチャンの方々も参加しイエス・キリストを伝えている。
豪華な食事、ケーキカット、参列者からの祝辞、
行き届いたプログラムに並行して、福音のメッセージが常に織りなされてる。
この披露宴には、クリスチャンの方もそうじゃない方も参加されているはずだが
二人の熱意に圧倒されながらも、会場からの視線は常に温かかった。
そして、プログラムの最後、
会場の前後にあるスクリーンに映像が映し出された。
ゴスペルソング『The Blessing』を、各国の歌い手が映像を繋げている。
そして合間に映し出される、ジョージさんとリサさんの笑顔。
The Lord bless you
And keep you
Make His face shine upon you
And be gracious to you
The Lord turn His
Face toward you
And give you peace
ジョージさんとリサさんは、帰宅する参列者に挨拶をするため、扉の横に立つ。
二人の顔には、この式の為に大変な準備をしたことを思わせる疲労と、
涙と、そして一人一人を包み込む温かい笑顔があった。
私は、二人を祝福するためにこの場所に来たつもりだった。
でも、ここでようやく分かった。
祝福されていたのは私たちの方だった。
スポットライトを当てられ、歓迎され、愛を注がれていたのは、私たちの方だった。
どれだけの時間と、お金と、情熱と、労力と、人々の協力がこの結婚式に注ぎ込まれていたのだろう。
まるで、無駄遣いとさえ言われかねないほどの結婚式。
もっと沢山ご祝儀を送れば良かったと、
そんなつまらないことを考えてしまう自分が恥ずかしくなる。
お返しをしようとしても、返すことができない。
二人が注ぎ込んだもの
それは、神様と同じ。
決してお返しをすることはできないのに、
惜しみなく与えてくれたもの。
He is for you, He is for you
He is for you, He is for you
He is for you, He is for you
He is for you, He is for you
キリストが来たのは、あなたのため
キリストが来たのは、わたしのため
神様の無駄遣い。
決して返すことのできない愛を、わたしたちに与えてくれた。