家に帰るその前に
この間の帰宅中。
あと少しで家に着きそうだなというタイミングで、カバンの中から家の鍵が入っている小さなポーチを取り出した時のこと。
そのポーチは10センチ×15センチくらいの大きさ。
素材は綿。基本の色は青色で、色とりどりのカラフルなリポンの模様が散りばめられている。
チャックの部分は金色。ポーチの側面にはポケットティッシュが入れられるようになっているけど、私はポケットティッシュは入れずに、ポーチとしてだけ使っている。
このポーチは、18歳年下の妹から、随分前に、お誕生日プレゼントとしてもらったものだ。
帰宅時に抱いている気持ちはいつも違う。
外で出会ったいくつもの出来事によって、幸せを感じていたり、悲しくなっていたり、怒っていたり、陽気な歌を歌ってしまうくらい楽しい気持ちになっていたりする。
家に帰ってやりたいことがたくさんあればわくわくした気持ちで小走りに帰るし、疲れて疲れて仕方がない時はゆっくりゆっくりな歩みで、とにかくおうちに到着することだけを考えて帰る。
どんな気持ちの日も、家が近づいて来たら、家の鍵を開けるために、鍵の入った青色のポーチを鞄から取り出す。
そして必然的にポーチを眺める。
「○○ちゃんからもらったポーチ」
瞬間的にそう思って、妹の顔が浮かぶ。
ぶぁーっと色んな年代の妹の姿が浮かんで、妹になってくれてありがとうって思う。
「ポーチを取り出す、眺める、妹を思い出す」の一連の流れは、一瞬で過ぎて行き、そのうちに家に着き、鍵を開けて、無事帰宅となる。
この間の帰宅中、このポーチを取り出した時に、たまたまポーチをじっくり眺めてみて、そう言えばいつも「ポーチを取り出す、眺める、妹を思い出す」って流れをやってるなって気がついた。
このポーチをもらったのはおそらく10年くらい前で、その時から鍵を入れるために使っている。だから10年近く、なんとなくずっと同じ流れをやって来たことになる。
どんな日も、家に帰る直前に、ふわっと妹が登場して、一瞬ほっとあったかくなって、そのまま家の鍵を開けさせてくれてたんだ。
急にそんなことに気が付いて、やっぱりありがとうって思った。
あと数日したら、妹のお誕生日が来る。
ありがとうの日に、何をプレゼントしようか、むふふと考えている。
篠原 友紀