今の時代に民俗学を学ぶ意義
民俗学という学問があります。
その内容は生活、文化の歴史ですが、歴史学は主に上流階級を中心に語られることが多いのに対して民俗学の対象は一般庶民です。歴史に名を残すことのない一般庶民の日常が語られるのが民俗学です。
それこそなぜ雨が降るのかすらわからなかった時代。
自然界の織りなす森羅万象は畏敬の対象でしかありませんでした。
そうした人智を超えたものが至る所に存在していた時代には、人は自ずと謙虚にならざるをえなかったのではないでしょうか。
自然との共生は昨今でも耳にすることの多い大切なテーマだと思いますが、昔は命のやりとりを前提とした自然との共生でした。山中で獣と格闘したり、人間の側も命を落とすリスクを引き受けて自然と共に生活していました。
そんな厳しい時代に心の支えとなったのが各地に伝わる信仰や風習でした。
土地の神様、ご先祖様を産土神や氏神としてお祀りし、日々の参拝や季節の祭りをとおして感謝の気持ちを表し、豊作を祈願してきました。
雑節を祝ったり、神社仏閣に参拝したりと今の社会に生きる私たちもこうした風習の片鱗に触れることがありますが、このような日々の生活できることに対する感謝や自然への畏敬の念といった文脈は忘れ去られているのではないでしょうか?
先の読めない不安定な時代だからこそ民俗学を紐解き、昔の人たちの生活に学び、その本質を今の生活にあったスタイルにデザインし直して、心の拠り所を作るのも良いのではないかな、と考えています。