夏の魔物

今日も蝉が鳴いている。君の住む街は快晴、その青空を見上げて、遠い国の知らない人を思う。見たことない空を心に描く。いつだって思うことは簡単で、息を吸うのだって無意識で、ぼくたちは生きている。心臓が勝手に動く、ぼくの意識とは真逆に、時を刻むこの血の塊。名も知らぬ通りすがりの人に、生きろ!と言われたようで苦しかった。身体はいつだって自由で不自由。限界は自分が勝手に決めたものだと、説教垂れる自分信者。分かりたくないのに分かってしまうことと、分かりたいのに分からない君のことば。どちらが大切なのと問われて、言葉にできるほど簡単な思いじゃないんです。言葉にできる思いがいつだって正しいのだと信じるこの街で、ぼくはぼくを殺すしかない。

誰も理解なんてしなくていい。ぼくの感情はぼくだけのもので、きみにわかるよと共感される度ぼくは心がどんどん冷え切っていく。ひとり、遠い国の異国の地へ行こう。ぼくを誰も知らない所へ、ぼくを連れて行ってくれないか。
夏が始まる、ぼくを殺す夏の魔物。

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