日常

きみは草原、海原を駆ける、風のように。遠くで鳥が鳴いている、きみはぼくのそばにいて、ぼくの目をみつめている。ぼくはきみの目を見つめられなくて、部屋の光の反射を見つめていた。きみがぼくをよぶ、きみの声がまぶたの裏側で光って消えてゆく、たったひとつの光、幻のような、永遠のような。
きみがぼくに手を差し伸べて、ぼくはその手をとった。きみが愛しくてたまらないのに、なにひとつ言葉になんてできなくて、きみは夕暮れ。
どうかそばにいて、ここにいて、微笑みなんていらないから、生きていてほしい、ぼくとともに。きみの笑顔を抱きしめたあの日から、悲しみなんてなくなった、消えない傷さえも喜びに変わってく。ここからはじめよう。

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古澤有沙
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