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組織の意思決定研究の歴史について読む。

 まちづくり組織がどうやって物事決めるのか、なぜ決まらないのか、組織の意思決定について調べてます。どちらかというと組織論に入り込んで経済や経営学の領域に立ち入ってますが、専攻分野じゃないのであれこれ論文読んでる、というのが現状です。体系的に理解したいなと考えていたら、よき論文に巡りあう。東洋学園大学赤尾充哉准教授が2022年3月に現代経営経済研究に掲載した「意思決定と組織行動の理論からみるダイナミック・ケイパビリティ論:サイモン、マーチおよびトヴェルスキーからティースへ」です。
 タイトル長い!内容もヒィーリスティスクなケイパビリティのパースペクティブ、的なカタカナの嵐。初老には、直観な能力の展望、と、脳内変換してました。正しいかどうか知らんけど。でも、流れはお陰様で把握できました。


ダイナミック・ケイパビリティ(DC)までに至る組織の意思決定論

1 概略の要約のざっくり把握

 何か決める場合、あらゆる全てを見通して全部の選択肢の中で最善の手段を選べよ、との考え方に、サイモンが「全部は無理だろ、直観大事だろ。」と指摘。さらにマーチが「そうだよ結構世の中曖昧なんだよ。それに気をつけないと過去に囚われて新しい発想なんてできんぞ。」と言う。そこにトヴェルスキーとカーネマンが直観大事だけど経験が邪魔するから気をつけろよ。」と言った。そしてティースは「そうなんだよ、お前ら最高。」って、言ったのがDC 論、という流れかと。
 だいぶティースの内容を省いちゃいましたが、それぞれの意見を細かく見ていきましょう。

2  サイモン

 サイモンは、人間は将来を予測して全ての選択肢の中から最善の手段を選ぶ、という経済学の考え方(完全合理性)に「人間全部予測するなんて無理じゃね?」と、異議を唱えた訳です。じゃあ、どうやって選択すんの?と、問われて「理論や知識で予想の精度を高めたり、経験に基づくルーティン化で思考のプロセスを省略すれば合理的にできるんじゃね?」と主張したのが限定合理性。要は「人は全部の選択肢じゃなくて、直観的にこれまでの知識や経験で絞り込みを掛けて選択してる。」と考えたようです。記憶というタグによってデータベースから素早く検索し、また、過去の経験から検討することで都度都度全てを比較検討する手間を省いてる(ルーティン化)と考えたようです。
 ちなみに、この時サイモンは人工知能の研究をしており演算速度の遅いコンピュータにどうやって処理させるかに応用したとか。

3 マーチ

 サイモンは結局、個人の意思決定を論じていたと言えます。そこで、マーチは異なる価値観や目的を持つ集団に着目。組織のメンバーは、全てのことを理解して目的や基準を作っていない結構曖昧な中でやってるよね、と。呉越同舟とか大同小異ってことかと。だけど組織は問題を解決するための選択(=意思決定)しないといけない。そこでゴミ箱モデルが登場。ゴミ箱モデルの詳細は以前書いたので省略します。

 その後マーチは曖昧さをポジティブに捉え、組織があまりに同じ考えに染まってしまうと、判断する時とかの合理性は高まるけれども、視野が狭くなって革新性は生まれにくいよね、と、考えたそうです。遊びの部分がないといかん、と言うことなんでしょう。

3 トヴェルスキーとカーネマン

 この2人は、認知科学と経済学を結びつけ、行動経済学の生みの親だとか。人は意図する、しないに関わらず自然な評価に基づいて推測する(=ヒューリスティクス)と考えたとか。サイモンが直観での選択肢の絞り込みが意思決定を効率的にすると評価したのに対して、彼らは直観が意思決定の際にバイアスを掛けちゃうんじゃない?と、課題を指摘したそうです。

4  ティース

 論文のタイトルにもある「ダイナミック・ケイパビリティ」を唱えた人だそうです。そもそもDCて何?てことですが、ある企業が革新的技術で大儲けしても、真似する企業が出て儲けが減る。これからも儲けたいならこれまでの経験の延長じゃなくて、再び飛躍的な発展(新たなイノベーション)を起こすしかない。でも、そのためには企業内の人員や予算の配分方法を変えたり、先々見据えて予測したりしないといけない。新たなイノベーションを起こすには、サイモンの限定合理性だとかマーチの曖昧さとかトヴェとカーネのバイアスを跳ね除けないといけない、ということを主張したらしいです。

直観て大事なのね

 DCがあまりにもいろんな理論を包含してわかりにくいため、サイモンからの流れを整理してみた、というのが論文の趣旨のようです。本稿を読んで思ったのが、直観とか曖昧さの大事さ。データだ数値だと詰められる組織では革新が生まれずに未来はない、と言うことにも繋がります。大きな組織ほど個人で責任取れないので、直観をできるだけ省いて確実に安全な選択肢を選びますからね。
 そりゃ仕事もつまらなくなる。若者が自由に仕事する裁量が減って辞めていくのを止められない。能力=良い直観を持っている若者から辞めてしまい、給料ある程度貰ってる高齢者は残る。結果、いつまでも年寄りが仕事して、考え方が古くなって革新がますます生まれにくくなり、結果、大組織が劣化していく。
 ちょっと論文の本筋とは違うことですが、しみじみ思ってしまいました。自分の直観大事にしたいなら自分で仕事を起こすのが一番。近年の起業ブームもさもありなん、と、思います。論文読んでてこんなこと思うとは思わなんだですけど。
 興味のある方はこちらから。


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