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チ。‐地球の運動について‐

■内容
15世紀、C教が重んじられるヨーロッパ。「神に作られた地球こそ宇宙の中心であり、すべての天体は地球の周りを回っている」とする天動説が信じられ、異端研究は拷問や処刑の対象となる世界。
世渡り上手で、合理的をモットーとする12歳のラファウ。これからもそうやって上手に生きていくはずだった。異端者のフベルトに出会い、地動説の可能性に触れるまでは…

知りたいという気持ちは、誰にも止められない。火種を消したって、違う場所でまた誰かが立ち上がる。その情熱や偉業だけでなく、時に知性は暴走し、結果として生み出すものが世界を変える程の大量死を招くかもしれない、そういった恐ろしさまでをも全部含めた、地と知と血の物語。

■感想
第1集を読み終えた時、表紙の青年ラファウが命懸けで地動説を証明していく物語だとばかり思っていた私は「この物語の主人公は一体誰?」という混乱に陥った。
最終集まで読み終えた時、この物語の主人公は全員であり、またある意味では主人公は異端審問官ノヴァクなのだと感じた。(個人的に脳内再生されたノヴァクの声は藤原啓治さんだ。)

動く星を見て、動いているのはこっち(地球)じゃないかと疑った人は、当たり前だけど本当に凄いな。

なぜ夜空には星が現れるのか?なぜ毎日朝が来るのか?なぜ季節は巡るのか?
小さい頃、親を質問攻めにしたこういう気持ちを懐かしく思った、
大人になって、そういうものでしょと思考停止して受け流すことが多くなってしまったけど、当たり前を疑う気持ちを忘れず、感じた小さな違和感を見逃さないでいたいと感じた。

この本を読んで、色んなものを点じゃなく長い歴史の線で見るようになった。

最終話の最後のコマは、これまで読んだどの漫画にもないもので、一番好きなラストだ。あと、一番好きな登場人物はバデーニ。

■印象に残った言葉
・矛盾で理性の息継ぎをする

・「そういう世界を変える為に、何が必要だと思いますか?」「知、です。」

・「世界を今のままに保持する為に必要なのはなんだと思う?」「血、だ。」

・ところで君らは聖書の解釈違いで何人殺した?自分らの正しさを盲信して

・文字を学べ。本を読め。「物知り」になる為じゃないぞ。「考える為」だ

・信念を忘れたら、人は迷う。迷って、きっと迷いの中に倫理がある。

・「僕は同じ思想に生まれるよりも、同じ時代に生まれることの方がよっぽど近いと思う。今、たまたまここに生きた全員は、たとえ殺し合う程憎んでも、同じ時代を作った仲間な気がする」

#チ 。#地球の運動について
#魚豊
#小学館
#ビッグコミックス
カバーデザイン #久持正士

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