秋出水 * チェンマイ俳句毎日
【チェンマイ俳句毎日】2024年10月12日
我が家から南へ30キロほど下ったある村は、洪水の被害が酷かった。村に住む知人にはいつもお世話になっているので、焼け石に水にしかならないかもしれないが、炊きたてのもち米や北部料理、お菓子、飲水のセットを幾つか届けた。
泥をかき出す作業など何でも手伝うつもりで、運動服に長靴、ブラシを準備して出かけたが、泥が酷く溜まっているので専門の清掃業者を呼んだり、自分たちで少しづつ進めるから何もしなくていいと言う。来てくれただけで十分だよ、と。以前泊めてもらったことのある部屋を覗いたら、ベットが水に浸かって崩れていた。
この村は昨年も浸水した。知人はどういう段取りで掃除をするのがいいか心得ている。すぐに生活に必要のないスペースは、泥を完全に乾燥させてからパラパラと剥がすと掃除が楽らしい。しかもその土には養分があり、園芸に使える。来月半ばまで乾燥させるらしい。
敷地内には、知人が修理をしながら大切に受け継いでいる立派な古民家がある。この村特有の伝統的な高床式の木造家屋だが、今回、洪水の水嵩は2メートルの高さに至り、その高床の上がり間口まで達した。深夜、どんどん水位が上がる中、知人はこの高床式住居の軒下に住んでいた体の不自由な叔父さんを、なんとか2階に移動させた。
これまでの洪水もかなり酷かったが、水位は腰の高さくらいで、今回のように人の背丈を超すのは初めてのことらしい。家を建てたご先祖様もびっくりしていると思うが、高く作ってくれていたおかげで叔父さんは助かった。ちなみに向かいのお宅は一階建てで、水が屋根に届く勢いの中、舟で避難するしかなかったという。
結局、知人のお手伝いは何もできず、帰りの道中で役立たずだなあ…としょんぼり。もう少し時間が経てば、また何かできることが見つかるかもしれない。同じチェンマイの中でも洪水の被害を受けた場所と全くないところの差が大きくて、自然災害の不条理にため息が出た。
高床の床に迫れる秋出水
秋の大水引いて足跡奔放に
白壁の痕跡一筋秋出水
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