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冬すみれ * チェンマイ俳句毎日

【チェンマイ俳句毎日】2024年12月30日

知りあいの先生のお葬式に出かけた。
先生はチェンマイの有名なマッサージ学校の校長先生で、タイ古式マッサージを中心に、タイハーブを使った治療など、北部タイの伝統医療を教えていた。

チェンマイには伝統医療科を設けた病院もあるくらい、マッサージやハーブを用いた伝統的な医療がまあまあ普及している気がする。それでも、それしかなかった頃に比べると、失われてしまった知識もあるようだ。

15年くらい前、北部タイに伝わる「ヌントーン」という珍しいマッサージについて取材をさせてもらったのを先日のことのように思い出す。素焼きのポットに、月桃に似た葉で包んだ塩を入れて熱し、布を当てた腹部にマッサージをするように押しつける。特に産後の女性には良いとのことだが、いつまでもお腹がぽかぽかして気持ち良かった。

「トークセン」という小槌でトントンと体を打つ北部タイの伝統的なマッサージの普及にも熱心だった。まだ今のように知られる前に、大切な伝統医療を失くしてはいけないと調査し、施術やトレーニングコースに取り入れていた。

ある時は、「パーカオマー」というタイの雑布を使ったストレッチ法を考えたり、いつも昔から伝わる良き知恵を探求し、惜しみなく広めていた。威圧感の全くない、優しい先生だった。誰よりもお元気そうだったので、今も信じられない。

ご遺体が安置された部屋の入り口はたくさんの花に覆われ、精力的に伝統医療に従事されていた生前の姿を紹介するパネルも置かれていた。大勢の方に慕われていることが伝わってくる。
お寺で最後のお別れができるのは今日までで、明日、大晦日にチェンマイ大学の医学部に献体されることが決まっている。

冬すみれ去りゆく師の背の広さかな

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古川節子
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