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夕立風 * チェンマイ俳句毎日
【チェンマイ俳句毎日】2024年6月8日
夕立風ドリアンにある千の棘
苦手な用事が無事に終わったので、ちょっとゆっくりしようと車の行き交う路面に面したオープンカフェでコーヒーを飲みながら、読みかけの本を出した。
カフェの隣りはベーカリーで、風にのって焼き立てのバターケーキの甘い香りが漂ってくる。食べないけど、読んでいるエッセイの朗らかな文章に似合う気がする。
コーヒーを半分ほど飲んだころ、バターケーキの香りが、やや発酵したような、ねっとりとした香りに変わってきた。これは?! と思って顔をあげたら、やはり! カフェの前の路上にはドリアンを山のように積んだトラックが停まっていて、目下、ドリアンの屋台が出店中である。
タイは今ドリアンの旬を迎えている。路上でドリアンを販売する屋台をあちこちで見かけるようになった。
ドリアンを積んだトラックの荷台にいる男性は、竹ひごのような道具でドリアンを一個づつペンペンと叩き、その音で熟れ具合を見極めながら店出しの準備をしているが、屋台に食べごろのドリアンが出揃う前から、早々とドリアンを買い求めるお客さんが集まってきた。すごい臭覚だ。
硬い棘に覆われたドリアンの皮はかなり厚いので、お願いすればお店の人が皮を外して実だけにしてくれる。ドリアンの実は、濃厚なカスタードクリームのような食感で、脳味噌が震えるような甘さがある。不思議にも食べている時には匂いはそれほど気にならない。個人的には、熟れすぎてびちゃびちゃしているのより、外はパリッと張りがあって中がクリーミーな熟れ具合が好みだ。
目の前でドリアンがどんどん売れていく。私も以前は、年に1度は食べておかないといけないような気がしていたが、ここ数年は食べていない。
今日は買うかどうか決められず、とりあえず本を閉じ、ドリアンの匂いの中で残りのコーヒーを飲み干した。
✍️おまけ
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