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草刈り * チェンマイ俳句毎日
【チェンマイ俳句毎日】2024年7月19日
早朝、運動に出かける途中、火葬場の曲がり角を少し行った田んぼの脇の道端でおじいさんに呼び止められた。
以前、ここで野焼きをしている様子を撮らせてもらったことがある、顔見知りのおじいさんだ。
ただし、おじいさん本人は私があの時の日本人だとは分かっている訳ではなさそうで、とにかく通りかかった人に助けを求めているようだった。
膝が悪くてバイクのエンジンがかからないんだよ、と困ったような怒ったような顔で訴える。
バイクには大きなリヤカーが括り付けられ、本格的な農作業仕様になっている。そんな年季の入ったバイク&おじいさんのペアでもだめなのに、私なんかで役にたつのか? 全く自信がない。もう少し先の商店の人に助けて貰うようお願いしてみる、と提案してみたが、だめだよとくしゃくしゃの顔で睨まれるとどうしようもない。
とりあえず、自分のバイクを脇に停めて、おじいさんのバイクに乗ってみた。もしかしたらスイッチがオンになっていないだけかもと鍵を回して確認してみたが、問題はなさそうだ。
仕方ない。腹を決めてえいっとキックしたら、一発で、拍子抜けするほど簡単にエンジンがかかった。私のバイクよりもずっと調子良さそうな軽快なエンジン音。止まってしまわないよう右手でアクセルをふかしつつ、おじいさんに席を譲った。
おじいさんは喜んでまた顔がくしゃくしゃになっている。その体つきはまるで枯れ木のように細いことに気がついた。農作業をしているのだから丈夫だろうと思っていたのは私の勝手な想像で、おじいさんはバイクのエンジンがかけられないぐらい脚力がなかったのだ。たまたまだったが、手伝うことができて良かった。
草匂ふ小径を古老のオートバイ
草刈りの翁も単車も草びれて
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草臥れる (くたびれる)
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