VCアソシエイト@ITVとしての1年間振り返り

平成元号でのギリギリ滑り込みでの初note投稿です。新元号まで残り24時間切るとさすがに焦りますね。人生初ですし…。

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV)というVCでアソシエイト(投資決定権は持たないが、とりあえず何でもやる職種)をしている古川といいます。今年で30歳になるギリ平成元年生まれのアラサーです。両親含め祖父の代まで遡っても家系全員直毛の中、自分一人が天パなので、30歳になる今年は家族から何か重大発表があるんじゃないかとソワソワしながらとりあえずVCアソシエイトとして1年経過したちょうど3/31の今日、振り返りの意味も込めてnote書いてみました。

1年前の2018年4月にこの業界に入ることになったのですが、この業界の人がどういう仕事をしているのか、どんな経歴の方がいる業界かなどを色々調べていた時に、そもそもウェブ上に(日本の)VC業界に関する情報がぜんぜんなく「どんな業界なんだ!?」と途方に暮れた記憶があるのですが、知り合いに相談したところ「ベンチャー投資の仕事している仲良い人がいる」ことが判明。その日の夜、知人を介してその方(当時Mistletoeにいらっしゃった亀井さん)をいきなり呼び出す暴挙にも快く応じて下さり、VC業界に関することを根堀り葉掘り聞き出し、貴重な助言まで頂くことができました。

そんなきっかけでVC業界に入ることになったのですが、1年の振返りということで雑記程度のnoteですが、今後、VC業界に何かしらの形で関わられる方にとって少しでも参考になれば幸いです。

目次は以下の通りです。

1.VCアソシエイトになった経緯

ITVへは、新卒で入った会社の社内異動により配属されました。
配属前は、ADNW(運用型広告)を用いた自社全メディアの収益力強化や、他社メディアとのアライアンス推進、新規メディア立上げ、女性向けアプリのディレクション、調査ツール全社導入など、メディア全般業務を幅広くやらせていただいていました。

入社2年目でITVの存在を知り、漠然としたベンチャーキャピタル業界への興味から”出向希望”を人事に出したことを覚えています。その結果かはわかりませんが、入社5年目の2018年4月よりITVへ出向することとなりました。

業界の方にとっては有名かもしれませんが、DCMというシリコンバレー・中国・東京の3拠点を構えるVCにいらっしゃる本田さんの『VCアソシエイトの役割とマインドセット』というMediumの記事などを筆頭に、業界に関する情報を死に物狂いで読み漁った記憶があります。ただこの業界の特徴でもあるのか、仕事の内容や、業界について書かれている記事はそこまで多くなかったように思います。  

幸い、ITVのGP(投資決定権を持つ職種。General Partnerの略)の一人である河野がメディアに露出しておりインタビュー記事がいくつかあったため、ITVの投資スタンスや仕事の進め方は事前にイメージできる部分もありました。
以下、参考ですがいくつか河野インタビュー記事を載せておきます。
 ●【投資家・起業家対談】「武闘派の経営陣なんです」ーー伊藤忠テクノロジーベンチャーズ河野氏×VASILY金山氏(前半)
 ●【投資家・起業家対談】「勝利のためならちっぽけなプライドなんてくれてやる」ーー伊藤忠テクノロジーベンチャーズ河野氏×VASILY金山氏(後半)
 ●ITV河野純一郎氏:ぶっとんだ大きな夢を、素直に語ってくれないか?【VCの赤本⑤】
 ●INTERVIEWS WITH INVESTORS≪投資家インタビュー 05 河野純一郎氏 前編≫
 ●INTERVIEWS WITH INVESTORS≪投資家インタビュー 05 河野純一郎氏 後編≫

と、だらだらと書きましたが、ベンチャー投資に関するバックグラウンドなどはまるで無い状態でVC業界に入ることとなりました。

2.ITVはどんなところか

ITVは現在、投資部門7名、管理部門3名の計10名体制です。投資対象のステージは、主にアーリーステージ*を中心とし、リード(資金調達のラウンド全体を仕切る条件などを纏める役割)型の投資も行います。リード投資するケースは、50%強で、非リードでの投資も50%近く行います。「伊藤忠」の名前が付いているので伊藤忠系列のCVC**と誤解されるケースもありますが、他者からの資金も運用している「独立系」に分類されるベンチャーキャピタルです。つまり、事業会社(この場合は伊藤忠商事本体)とのシナジーを考える前に、まず”ファイナンシャルリターン”を第一優先事項として投資決定するファンド運用方針です。

*ベンチャー企業のステージについては、以下画像参照

画像1

 出典『ベンチャー企業の資金調達とVC』の文中画像より

ベンチャーキャピタルの区分は、以下5種類にわけるとわかり易いです
 ●
金融機関系**
  例:SMBCベンチャーキャピタルニッセイ・キャピタル株式会社みずほキャピタル株式会社三菱UFJキャピタル、など
 ●政府・大学・研究機関系
  例:産業革新機構日本政策金融公庫東京大学エッジキャピタル、など
 ●独立系
  例:ANRIFemto Growthサムライインキュベート、など
 ●事業会社系(CVC)
  例:YJキャピタル(Yahoo!JAPAN)、31VENTURES(三井不動産)、NTTドコモ・ベンチャーズ(NTTドコモ)、など
 ●海外系
  例:500startupsKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)SequoiaCapitalEight Roads、など

3.ITV配属後にまずやったこと

ITV配属後には、まず以下の4つを行いました。
 ①VC業界の方に会う
 ②起業家・VCが集まる場に足を運ぶ
 
自社ポートフォリオの理解
 ④参考書籍を読む
  例:『起業の科学』 、『コーポレートベンチャーキャピタルの実務』『CVC コーポレートベンチャーキャピタル――グローバルビジネスを勝ち抜く新たな経営戦略』『起業のファイナンス増補改訂版』

それぞれ、結果的に以下のような意味があったと考えます。

VC業界の方に会う
同業の方にお会いするにあたり、(GPであったりアソシエイトの方であったり、場合により様々でしたが)その投資家の方の投資実績(ポートフォリオ)や、ファンド自体の投資実績、投資スタンスなどを調べた上でお会いするのですが、逆に『どういう領域に着目していますか?』だったり、『ITVとして注力していく領域はどこですか?』だったり、『投資する際のチケットサイズ(実際に出資する際の1回あたり投資金額のこと)はどの程度ですか?』など色々と根掘り葉掘り質問を受ける場合もあります。

どのVCにおいても、自社の運用する投資ファンドが主ターゲットとする投資ステージがあるのですが、もうすぐそのステージに入ろうとしている(例えば、シードからアーリーに進む場合の)スタートアップや、そろそろ次のステージに行くであろう(例えば、アーリーからミドルに進む場合の)スタートアップにアプローチするために、VC同士で連携してディールを進めるケースが良くあります(”クラブディール”と呼ぶそうです)。

そういった連携をきちんと取るためにも、VC同士はお互いの投資スタンスを知っておくことが非常に重要です。

起業家・VCが集まる場に足をぶ
これに関しても、上記①と同様で、とにかく同業VCの投資スタンスを知り、また自社の投資スタンスに対してニーズのあるスタートアップ等と接点を作るために、そういった企業が登壇するピッチイベントに足を運ぶことは重要です。自身が担当する投資先がある場合、事業拡大する際にどういったVCもしくは事業会社からのハンズオン・出資が効果的か把握しておくことは非常に重要です。

自社ポートフォリオの理解
ITVでは2000年以降、国内外を含めて様々なステージのベンチャー企業に対して投資を行ってきており、すべての投資履歴(投資金額、可決する際に社内で議論になったポイント、出資時の株主、などありとあらゆるデータ)が残っています。もちろんこれらだけでも宝の山のようなデータなのですが、150社以上あるすべての投資先についてはさすがに一気にインプットは出来ないので、直近40-50社については議事録や投資タイミング、バリュエーション、どういうサービスかなどについて、最初の1-2ヵ月は特に個別ケースからITVの投資スタンスを理解するようにしていました。

下記、参考までに(EXITした、もしくは現在投資実行中の)ITVのポートフォリオです。
■ITV 投資先一覧:https://www.techv.co.jp/portfolio/

参考書籍を読む
こちらは、ベンチャー投資に関するファイナンスの知識や、ベンチャーキャピタル業界全体の動向、スタートアップが資金調達する際にどういった考えをもって動いているかなどを網羅的に理解するためには、非常に役に立つと思います。

以下、当方のTwitterで4冊の本と4つのウェブ記事をピックアップしていますが、VC業界の業務や考え方全般を理解すること、一方でスタートアップ業界で話される共通言語を理解することや、スタートアップ経営者がどういう視点でビジネスを考えているかを理解することも、VC業務において非常に重要だと思います。

https://twitter.com/furukawa_itv/status/1083407033053863936

**【勉強におすすめの本4つ】 **
コーポレートベンチャーキャピタルの実務(倉林陽)
→海外VC動向を参照しながら、日本におけるVC動向をデータに纏めつつ分析、業務プロセスについても触れていて、VCの実務理解も進み、めちゃくちゃ読みやすい。

起業の科学 スタートアップサイエンス(田所雅之) →起業家/経営者がどういった観点でプロダクトを立ち上げているのか、共通言語をインプットしておくと、コミュニケーションも非常にスムーズなので是非一読をオススメします!

起業のファイナンス増補改訂版(磯崎哲也) →会社設立~資金調達に関する一連の流れ、その中で必要な資金を集めていくための考え方や注意点など、ファイナンスにまつわる基本的な枠組みを理解するのにめちゃくちゃ良いです。

ベンチャー企業の法務AtoZ→登記、投資契約、株主間契約、知財、労務、などベンチャー企業にまつわるテクニカルな論点について網羅的にまとまっていてとりあえず手元にあると、困った時に参照できてめちゃくちゃ便利です。

【VC像の理解にオススメの記事4つ】
VCアソシエイトの役割とマインドセット→新卒YahooからYJキャピタル、現在はDCMという海外系VCでアソシエイトをやられている本田さんのmedium記事です。

30歳はスタートアップ業界へ飛び込む良いタイミング、老舗VCグロービスの今野氏に聞く→長文ですが笑、VCという仕事についてかなり深く掘り下げられている良インタビュー記事です!

ベンチャー企業の資金調達とVC
ユーザベース社が運営するスタートアップ動向データベース「entrepedia」のシニアアナリストである森敦子氏による、ベンチャ-企業関連の基礎的事項まとめです。俯瞰的な内容で参考になります。

起業家向けベンチャーキャピタル入門 (1) VCの仕組み編
→Umada Takaakiさんという方のSlideShareです。Medium投稿記事も、ベンチャー業界でよく使われる指標等について解説されていて大変参考になります。

これらを通じて、VC業界で実績を残された方の考え方やスタンス、自分の中で理想とするようなVC像をイメージ出来たと思います。

4.まとめ

長々と書きましたが、ベンチャー投資も何も知らずにVC業界に入ってみたアラサー男の経験が、VC業界のみならずスタートアップ業界に関われる方、そうでない方など、少しでも参考になれば幸いです。

またTwitterアカウントもよろしければフォロー頂けると幸いです。
Facebookの申請も受け付けておりますので、何かあればいつでもご相談下さい!もちろんITVのホームページからも投資や採用のご相談を受け付けておりますので、そちらからもご連絡可能です。

■Kei Furukawa @ITV(古川個人のTwitterアカウント)
https://twitter.com/furukawa_vc
■Facebook(古川個人)
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■伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 問合せフォーム
https://www.techv.co.jp/contact/

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