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社内で企業文化を浸透させるのは、長期投資として大正解

企業文化というと、なんだか曖昧で目に見えないもののように思えますよね。ですが、実際に企業文化が浸透した組織とそうでない組織の違いは明白です。私はこれまでいくつかのブランディングプロジェクトに携わってきましたが、「企業文化を根付かせることこそが最大の成功要因だ」と確信しています。
ここでは、私が経験したとある企業での取り組みをもとに、「企業文化の浸透がいかに長期的な価値を生むか」奮闘記としてお伝えします。


スタートアップの1日は、めまぐるしいほどに速い

「ついさきほど、5000万円の資金調達が決まりました…」

2022年9月のこと。当時のNFT(非代替性トークン)市場は、急成長を迎えたばかりで、ブロックチェーン技術を社会にどう取り入れていくのか、まだみんなが手探りしている時期でした。そんな最中、知人からの紹介で、私はNFTを活用したスタートアップのブランディングプロジェクトに関わることになりました。

その会社は、デジタルアートを中心としたNFTマーケットプレイスをつくろうとしていました。テクノロジーとクリエイティビティを掛け合わせて、地方を元気にしたり、新しいビジネスを生み出したりすることを目指していました。そして、発起人と支援者がつながるコミュニティをつくるという、NFTとクラウドファンディングを組み合わせた独自のサービスをリリースしようと準備を進めていたのです。(現在は無事にローンチされています。)

あたらしい市場にあたらしいサービス。
この挑戦は、望遠鏡で無人島を発見するようなワクワク感を私にも与えてくれました。

しかし現実には望遠鏡ではなく、万華鏡。
あたらしいサービスを実装させるには、経営者の相当な想いと、圧倒的なスピード感が必要とされました。経営者をとりまく状況は日々めまぐるしく変化していきました。

投資家を探しにも何十件とアポをこなし、サービス構築を進めながら資金確保にも奔走する経営者。そのおかげもあり、毎週のヒアリング内でのアイスブレイクで話すたびに、組織も調達額も増えていきました。まだリリース前のサービスに先行投資しながらついていくメンバーの様子を聞くたび、私は圧倒され、まさに革命前夜の真っ只中にいるような感覚になりました。

「これは早めに企業の軸を作らなければ」
経営者と私の考えは、自然と同じところにたどり着いていました。

問いから始まる文化づくり

経営者と私は「自分たちの価値観を明確にする必要がありますね」と話しました。企業の価値観を明確にしなければ、社員や顧客、投資家が物事を判断するときの基準ができません。スタートアップだからこそ、はっきりした軸があることが大きな財産になるのです。また、サービスが市場に出たあと、どれだけ受け入れられるかも、その軸がどれだけ共感を得られるかにかかっています。

多くのスタートアップがデビューし、身の丈にあわずにステージから去っていく姿もあります。持続可能な経営、という視点はめまぐるしく環境が変化するスタートアップこそ尊重していかなければいけないことです。

私たちがまず取り組んだのは、「この会社を通じてどんな社会を実現したいのか」を経営者自身に問い続けることでした。ただのマーケットプレイスを作るのではなく、どんな価値を生み出し、誰に届けるのか。そして、その価値を提供する企業として、自分たちはどう在るべきなのか。それを一緒に探ることが、最初の一歩でした。

生まれたコーポレートアイデンティティ


「このサービスを通じて実現したい未来はどんなものですか?」「この会社は社会においてどんな役割を果たすべきですか?」こうした問いを何度も重ねていく中であるとき、経営者はしばらく沈黙した後、こう答えました。

「世界で眠る才能やアイデアを、世界に届けたいんです」

その言葉には、彼自身の原体験が深く関わっていました。経営者になるまですべて自分の力で学び、稼ぎ、投資し、さらに技術を身につけてきた人生。だからこそ、お金にとらわれず自分の創造性を解放してほしい。それが、今のプロジェクトに向かう情熱の源だったのです。

私はここに、この会社にとっての「意味」を感じました。

とても矛盾することに聞こえるかもしれませんが、経営者のぶれない人生観がありつつ、経営者がいなくなっても残る想い、これこそが企業にとって大事なアイデンティティになっていきます。

こうして、個人の人生の「意味」を踏まえた上で、次に法人の「価値観」へと軸を移しつつ、想いを昇華させていきます。

コーポレートアイデンティティの誕生

個人の想いから法人の価値観へと軸を移す中で、あるキーワードが浮かび上がりました。

それは「熱狂社会」でした。

テクノロジーとクリエイティビティを融合し、世界を変える原動力を生む。この会社が目指す世界は、ただの流行では終わらずに、人々が情熱を持って創造し、それを支え合う社会でした。

そして、その核となる言葉として、
「熱狂で世界を変えよう」という言葉が生まれました。

ブロックチェーンという機械的な手段の中に人と人とのつながり、感情が生まれて、熱狂的な社会を育むことで、創造性のある世界に変化していこう。

この言葉は社員にとっても、今後迎えるであろう仲間たちにとっても、明確な指針となるものでした。

実際の企業サイト
CIとともに掲げるステートメント 

文化の浸透と、嬉しい反響

こうして「熱狂で世界を変えよう」というコーポレートアイデンティティは完成となり、ステートメント共に経営者からメンバーや関係者へとオンラインミーティングで発表されました。(当時はコロナもありオンラインでの発表が主体でした)

その後、驚きの出来事が起きました。発表から数日後、関係者であるアーティストの方が、このステートメントをもとにした歌を作ってくれたのです。その歌は役員はじめメンバーの間でも展開され、あっという間に共感の輪が広がっていきました。ステートメントが単なる言葉としてではなく、感情や行動を動かすエネルギーになった瞬間でした。

これには私も感動しました。「文化とは、共有されて初めて生きるものだ」とまさにこの会社のサービスと重なって、強く実感した出来事でした。

文化浸透がもたらす長期的な価値

この取り組みを通じて、組織全体に明確な変化が現れました。意思決定がさらにスムーズになり、リモートで国内外に在籍している社員同士の信頼感も深まり、取引の企業からも「一貫性がある」と高く評価されるようになりました。

そして現在では多事業展開となり、ノーコードアプリ開発ツールもリリース。今や通信グループや証券会社など大手企業からも愛されるサービスも提供しています。(能登半島地震の時にはSNSから情報を収集し、わずか数日のうちにトイレマップ公開したりと迅速な対応も際立ちました)

結論 : 企業文化の力で未来を作る

企業文化は目に見えないものですが、確実に組織を支える基盤です。それは社員の行動や意識を変え、顧客や投資家に信頼される存在へと導きます。「熱狂で世界を変えよう」というコーポレートアイデンティティを中心に、このスタートアップが成長していく姿を目の当たりにして、私は改めて確信しました。

企業文化を浸透させること。それは、どんな企業にとっても最も重要な投資の一つなのです。


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