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2024年ベイスターズ短歌振り返り

 短歌を書くようになったのが2023年の年末だけど、2024年になってベイスターズの短歌を書こうと思い立った。結局2024年中に171首書いた。そのなかからいくつか振り返ってみようと思う。

上茶谷大河という名の神がいて何かお布施をしたくなる春
(4月6日 G4-6DB)

 これが一首目。どうしてこれを書こうと思ったのか覚えていないが、多分上句が降ってきたのだと思う。
 ホエールズ/ベイスターズを応援して40年以上になるが、その間ずっと同じ熱量で応援していたわけではなく、遠ざかったり火が付いたりを繰り返していた。今は熱量の高い時期だけど、これは2018年シーズンから続いている。そういうわけで2018年のドラフトで入団した選手達にはちょっとした思い入れがあって、当然ドラ1だった上茶谷には注目し続けている。彼はものまねが得意などの明るい側面が注目されるけれど、マウンドの上でももっと活躍できるはず。


ツイてない夜が続いていようとも中川颯は浮かび上がるさ
(4月10日 DB1-6D)

 中川颯(今シーズンから登録名が「颯」になるみたいだけど)ほど注目する理由に事欠かない選手も珍しい。横浜生まれ。オリックスに入団するも3年間で一軍登板は一度だけ。自由契約となりDeNAに入団。アンダースローでバッティングも期待できる選手。ルックスだって良い。それでもこの頃はまだそれほど話題になっていなかったような気もする。このときは半信半疑だったような記憶もあるけれど、本当に浮かび上がった。

荒らされたマウンドにある孤独から逃げることなく徳山壮磨
(4月24日 DB3-5T)

 この歌に関しては、Blueskyに書いた散文があるのでそれを転載する。

 ぼくは徳山壮磨を許さない。2024年春、ぼくはいろいろなことに行き詰まってしまい、モチベーションは風前の灯だった。長く続けた仕事を辞めようとも考えていた。そんな時、荒れたマウンドで腕を振る徳山壮磨を見てしまった。試合展開がどうであれ黙々と投げ続ける姿。それは色を失いかけたぼくのこころを動かすのに十分過ぎるメッセージだった。
 今シーズンもまた、彼の右腕から放たれるメッセージはたくさんのひとを奮い立たせるに違いない。きっとぼくは今年も老体に鞭を打つことになるだろう。だからぼくは徳山壮磨を許さない。

 まだ届いていないけど、背番号15のユニフォーム買いました。


泣くのなら嬉しいときと決めていてその夜がきた度会隆輝
(4月26日 DB7-2G)

 感情を隠そうともしないそのスタイルに否定的な声が聞こえるときもあるけれど、彼のはパフォーマンスなどではなくリアルな喜怒哀楽だろう。だから共感してしまう。おそらくこれからも様々な感情を伝えてくれることと思う。それを楽しみにしている。


あの日みた夢、横浜の空高くまた追いかける覚悟ならある
(5月6日 DB6-5S)

 2024年シーズン伝説の試合と言っていい筒香復帰戦。8回、宮﨑のフォアボールから筒香の逆転3ランまで。陳腐な表現だけど、映画のようだった。今考えると、あの場面で打つ予感はしていた。俺の知ってる筒香ならここで打つはずだと。そう思ったベイスターズファンは案外多かったのではないだろうか。


風強い土曜の午後に七点差ひっくり返す汽笛は響く
(5月11日 DB11-9T)

 時々、汽笛ということばを使う。ハマスタでホームランが出たときに聞こえる音だ。3回終了時7点ビハインドだったものを8回に蝦名、筒香、牧のホームランで逆転する。流れとは本当に恐ろしい。


極限に向かい続ける伊勢大夢今夜のことはどうか忘れて
(5月24日 DB2-5C)

 基本的にネガティブなことについては書かないようにしているが、心動かされるシーンを見たときはその限りではない。信頼しているセットアッパーが打たれることももちろんあるし、その日はそういう日だったと普段なら思うところだけど、この日の伊勢を見てとてつもない悲壮感を感じてしまった。この歌は願いのようなものだった。


諦めが悪いぼくらは森敬斗の勝負強さを信じてたんだ
(5月31日 F3-4DB)

現地(エスコンフォールド)で観戦していた。延長に入りランナー2塁、バッター森敬斗という場面で応援団は応援歌に「勝利の輝き」→「Fight Oh! YOKOHAMA」を選択。屋内球場に声が響いて、ある種幻想的な雰囲気だと感じていた。そして森敬斗のタイムリー。鳥肌はなかなか治まらなかった。


新しい希望となるかジョフレック・ディアスの旅は今日始まった
(6月8日 DB3-5H)

 ディアスが支配下登録され一軍初登板となった日。ユニフォームが間に合わず三桁の背番号のままだった。荒削りということばも浮かんだけれど、溢れ出てくる気迫には好感しかなかった。負けたけれど、希望が感じられる試合だった。


出口なき鬱憤の濃さ少しだけ薄めてくれるAyaka,Shizuku,Aki(6月8日)
でこぼこな道を歩んだ先にある勝又温史が花開く夏(6月22日)
横須賀で小園健太が吠えていた次はハマスタで躍動してくれ(9月15日)

 書きたくなるようなシーンが見つからないときは、なんとかネタを見つけようとしていたように記憶している。苦肉の策でハマスタバトルをネタにしたり、好調だった二軍の試合に題材を求めていた。負けが続いているときに見るAkiちゃんの快走には精神安定剤のような効果があったように思う。


憧れの地に立つ石田裕太郎雲を切り裂く祝砲二発
(6月9日 DB8-5H)

 石田裕太郎の初登板・初勝利の試合。前年のファンフェスティバルでは牧秀悟のものまねを披露していたが、この試合では牧が初回に満塁ホームラン。筒香もホームラン。ソフトバンクに2連敗した後の勝利をもたらしてくれた。


結末は風のおかげと嘯いて歓喜産み出す宮﨑敏郎
(6月27日 DB5×-4G)

 延長10回、宮﨑のホームランでサヨナラ勝ち。ヒーローインタビューで「風のおかげ」と言っていたのが印象的だった。


引退後三十余年経てもなお田代富雄は横浜の顔
(7月9日 DB6-5D)

 この日は田代コーチの70回目の誕生日。試合はオースティンのサヨナラ打で勝利したが、ヒーローインタビューで山本祐大が田代コーチの誕生日に触れていたのが印象的だった。


ほろ苦い汗を肥料に変えながら吉野光樹が刻む足跡
(7月13日 G6-1DB)
二ヶ月前苦いデビューをした場所で吉野光樹が果たすリベンジ
(9月8日 G0-8DB)

 入団2年目で初の一軍登板は東京ドームでの先発。負け投手にはなったが、5回2失点で次につながる投球だったように思う。巨人の主催試合ではあったけれど、中継を見ていると実況からは吉野を応援するような雰囲気も感じられた。
 8月23日にプロ初勝利、その後二度目の東京ドームで2勝目をあげた。
 ぼくがホエールズファンになったきっかけが遠藤一彦だったこともあって、背番号24に対する期待はどうしても高くなってしまう。


どのようなかたちてあっても勝てばいい四時間超えの試合でもいい
(9月5日 DB4×-3C)

 現地(ハマスタ)で観戦した試合。延長11回表に1点を取られ、そのウラ2点を取ってサヨナラ勝ち。最後は伊藤光のフォアボールで決着したが、さすがに疲れた。

9月5日横浜スタジアム


夏が来た。ほかに理由が必要か?加速しだした桑原将志
(6月27日 DB5×-4G)
いつまでも続く残暑の真ん中で踊り続けろ桑原将志
(10月1日 DB3-1C)
ガッツとか気迫を擬人化したならばきっと桑原将志になる
(10月29日 H1-4DB)
一年中夏でいいからいつまでも熱い漢で桑原将志
(10月30日 H0-5DB)

 桑原は「夏男」と呼ばれる。9月には本人が「残暑男」と言っていた。だけど2024年シーズンの「夏」が10月末にやってくるとは思いも寄らなかった。


初めての打席できっちりタイムリー東妻純平ただものでない
(9月20日 T0-2DB)

 いつからか、自分の年齢と同じ背番号の選手に期待するようになっていた。2024年シーズンは東妻純平。だけど入団後ずっと一軍出場はなかった。この日5年目にしてはじめての一軍の試合に出場。プロ初打席で初安打。振り返ればこの日だけだったけど、この日があって良かった。


ウッディに似ていることも武器にする庄司陽斗の強い心臓
優勝へ流れ呼び込む一発は石上泰輝のソロホームラン
シーズンの結晶となるこの試合松尾汐恩が戻ってきたよ
先発の全員安打に圧巻の完封リレーだ横須賀優勝
輝かしいハマの未来を匂わせる横須賀の地に大輪の花
(9月28日 DB8-0M・二軍)

 イースタンリーグ優勝を決めた試合。優勝ということばに飢えていたから、前年の交流戦優勝に引き続き優勝ということばを手に出来た喜びは大きかった。もちろん、この時点でも日本一など考えもしていなかった。


ファールだと判定されたらもう一度打ち直せばいい宮﨑敏郎
(9月30日 T0-2DB)

 レフトポール際に打ち込んだ打球がファール判定(実際ファールだったけれど)。リクエストでも覆らなかったけれど、その後同じようなコースに打球を飛ばし、今度はホームラン。このときは「ここでホームラン打ち直したらすごいよな」と思っていた。本当にすごかった。


これからも活躍し続けて欲しい大田泰示に感謝しかない
歌声のインパクトだけじゃないことはみんな知ってる西浦直亨
星つなぐストーリーきっとこれからも続くのだろう楠本泰史
その脚をまだ見ぬ人に見せつけろ村川凪が華ひらくまで
ランナーが出てもホームに還さない庄司陽斗が吠えるマウンド
まだ誰も気づいてないのかも知れぬマイク・フォードの真の実力
来年はもっと大きな日本一関根大気が掴めその手で
(10月5日 H2-6DB)

 ファーム日本選手権優勝。この時点で退団が決まっていた選手もいて、喜びの反面しんみりしたところもあって、上手く言えないけれど「秋の一日」という感じに思えた。


蒼彗天。黄色に染まる戦場に星を記した道標立てよ
(10月12日 T1-3DB)

 CS初戦。7回にオースティンのタイムリーツーベースでリードを拡げ勝利。オースティンの当て字である蒼彗天。考えた人は天才だと思う。


全身で雄叫び上げる牧秀悟待ち望んでた一発が来た
(10月31日 H0-7DB)

 日本シリーズ第5戦。待ち望んでいた一発。シーズン後半、躍動する牧を何度も見た。その姿を見て身震いしていた。


ホームラン打てば負けることはないそんな存在筒香嘉智
シリーズの流れは君が呼び込んだ戦う顔の桑原将志
反撃の隙を見せないピッチング闘う顔の濱口遥大
今シーズン苦しい時期もあったけど最後に咲いた坂本裕哉
君の手で今シーズンを締めてくれハマの守護神森原康平
(11月3日 DB11-2H)

 日本シリーズ第6戦。忘れられないシーンはたくさんあるけれど、ベンチに戻るときの濱口の表情が忘れられない。そして、2024年11月3日は一生忘れることのない一日となった。


佐野恵太。その選択の先にあるShiny Road、そして優勝(11月12日)

FA権行使せずに残留することが決まったときのもの。本当によかった。


勝利とはこんな嬉しい美酒だから石井琢朗おつかれ生です(11月21日)

 アサヒビールのCM出演が決まったときに書いたもの。日本シリーズを終えて、石井コーチの存在感の大きさを再確認したように思う。


神奈川の牧は日本の牧となりいつか世界の牧となります(11月22日)

 プレミア12でのベネズエラ戦。牧の満塁ホームランは鮮烈だった。


八回に聳えるJBウェンデルケンその安心感が忘れられない(11月30日)
鮮烈な印象だけが残されてマイク・フォードは旅立ってゆく(11月30日)
上茶谷大河のいない横浜はサンタの来ない聖夜のようで(12月9日)
横須賀のあきは去りゆくハマスタに右腕の真価刻まないまま(12月20日)
スタンドを煽る姿を焼き付けて濱口遥大福岡へ行く(12月23日)

 2024年シーズンでチームを去った選手達。「横須賀のあき」は育成の渡辺明貴投手。仕方ないこととはいえ、やはりさみしい。


 2025年はどのような歌が書けるのか。どうかポジティブな歌がたくさん書けますように。


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