夜行バスの朝
東京から岩手に向かう暗く静まり返った夜行バスの中で、窓の外からわずかに漏れる街灯の灯りを頼りに「銀河鉄道の夜」を読んだ。
貧しく孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道に乗って旅をする物語で、生涯を通して岩手に留まり創作を続けた宮沢賢治は、今もなお多くの岩手県人に愛されている。
物語もクライマックスに近づき、ページをめくる手が止まらない怒涛の展開に興奮していた時、隣で眠っていた50代くらいの中年のおじさんが、喉仏がひっくり返ってしまいそうなほど大きなイビキをかきだした。なぜよりによって今なのか、なぜよりによってこちら側にもたれかかってくるのか。
岩手に着く前に読み終えて万全の状態でイーハトーヴを観光したかったのに。
結局読書を中断せざるを得ず、かといって眠れるはずもなく、寝不足で消化不良のままバスは盛岡駅に到着した。
宮沢賢治なら、あのイビキの音をどんなオノマトペで表現したのだろうか。僕にはどう頑張っても「ボンバー」としか聞こえなかった。
「銀河鉄道の夜」を読み終えれなかった、そんな「夜行バスの朝」
あらすじ
貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って美しく哀しい夜空の旅をする、永遠に未完成の傑作
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