Bestill

74歳、Note 再度挑戦、

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74歳、Note 再度挑戦、

マガジン

  • 日々五詠

    自作短歌をChatGPTで評価し、さらに短歌創作、さらに英語の短歌創作活動を模索します。

  • Alchimist 妄想

    Alchimistというタイトルの本の迷走翻訳をするうちに毎度毎度自分なりの思いや連想が出てくることに気づいた。そこで、その都度それを記事にすることにした。

最近の記事

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たけのこが教えてくれる

筍と幼虫 春の足音が聞こえる二月のある日、犬迫の小さな集落では山裾の畑に白い霜が薄く残っていた。朝の冷たい空気の中、孫の涼太は祖父と一緒に裏山へと向かっていた。 「今日は早堀りの筍を探すぞ。土の中で眠っているから、よく注意して探さなきゃならん。」 祖父は昔からこの季節になると裏山に通い、筍を掘り出しては家族や近所に配るのを楽しみにしていた。涼太にとっても、この作業は春を迎える特別な行事だった。 祖父は小さな鍬を片手に、もう片方の手を背中に回し、ゆっくりと土の感触を確かめるように歩き始めた。彼の足はまるで地面と会話をしているようだった。涼太はその様子をじっと観察していたが、ふと何かに気がついた。 「じいちゃん、この土の中にクワガタの幼虫がいるよ!」 突然の声に、祖父は驚き、顔を上げた。涼太は少し離れた場所を指差している。興奮した表情の涼太は、すでに手で土を掘り始めていた。 「クワガタの幼虫だって?どうしてそんなことが分かるんだ?」 「だって、土の色と手触りが違うんだ。それに、ここに木の根っこがあるでしょ?幼虫が好きな場所なんだよ。」 涼太は普段からクワガタを飼育していて、その知識と感覚が自然に働いていた。彼は慎重に土を掘り進め、小さな白い幼虫をそっと手に取った。 「ほら、やっぱりいた!」 祖父は思わず感嘆の声を上げた。「こいつはすごいな。涼太、お前、よく気がついたなぁ。」 彼の顔には驚きと誇らしげな笑みが浮かんでいた。涼太はその笑顔を見て少し照れくさそうにしながらも、嬉しそうに幼虫を観察していた。 その後も二人は筍を探しながら、土の感触や匂い、微かな変化を感じ取ろうとじっくり時間をかけた。涼太は祖父のように足裏で土を確かめる真似をしながら、「ここかな?」「この辺りかな?」と声を出しては掘り進めた。そしてついに、ふっくらとした筍が土の中から顔を出した。 「ほら、見つけたぞ!」と祖父が言うと、涼太は満面の笑みでその筍を掘り出すのを手伝った。 自然と心の対話 家に戻る途中、涼太は自分が見つけた幼虫のことを話し続けた。「じいちゃん、クワガタの幼虫はね、春になるともっと土の中で動き始めるんだよ。それに、筍を探すときも土の匂いを感じ取れるようになりたいな。」 祖父は涼太の言葉を聞きながら、自分の幼い頃を思い出していた。昔はこうして父親と一緒に筍を掘り、自然と触れ合う時間を楽しんでいたのだ。そうした経験が、彼にとって人生の中で最も豊かな学びの場だった。 「涼太、土を感じるってのは、ただ見たり触ったりするだけじゃないんだ。心で感じるんだよ。自然の中にはたくさんのことが隠れている。それに気づける人間になれよ。」 涼太はその言葉をじっと聞き、頷いた。彼の目にはこれまで以上に自然への興味と尊敬が宿っているようだった。 春の教育 その日、家に戻った涼太は、祖父と一緒に掘り出した筍を家族に見せ、クワガタの幼虫の話を得意げに語った。その姿を見た祖父は静かに笑った。 涼太が体験したこの日一日の出来事は、ただ筍を掘るという行為以上の意味を持っていた。それは自然と触れ合い、自分の感覚を働かせ、学びを得るという貴重な時間だった。そして、彼の心に刻まれたこの春の日の記憶は、いつか彼自身の人生を豊かに彩る財産となるだろう。 春の訪れは、涼太の小さな冒険とともに、犬迫の里山を静かに包み込んでいった。

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      夜明けのからす

      短編 夜明けのカラスの主題歌 短編本文 男の名はタケル。彼は都会の片隅で、夜勤の警備員としてひっそりと生きている。夜の闇に包まれた高層ビルの中を歩きながら、彼は誰にも言えぬ心の重みを抱えていた。それはまるで冷たい闇が彼の内面に広がり、どこか無限に続く深い孤独の海が広がっているようだった。 ビルの屋上がタケルの唯一の安息の場だった。彼は毎朝、夜が明ける直前にここに立ち、空がほんのりと色づき始める瞬間を見届けるのが習慣だった。都会のビル群が黒く沈み、東の空がわずかに紅く染まる様子は、タケルにとって生きる希望の一端を示しているように思えた。だが、その希望もまた、すぐに消えてしまうかのような儚さがあった。 ある日、巡回中にタケルは廃棄された段ボール箱の中で震えている小さな子猫を見つける。子猫の体は冷たく、ひどく衰弱していた。彼はふと、かつて自分もこうして見捨てられ、何もかも失った瞬間を思い出した。かつての友人たちとの裏切りの記憶、自らの無力さへの嘆きが蘇り、心の中に強い葛藤が生じる。 「こんな自分に、助けられるだろうか?」と、タケルは自問する。だが、震える子猫の姿を前にして、放っておくこともできなかった。小さな命を救いたいという衝動が、彼の中でわずかながら芽生えていた。思わず手を伸ばし、子猫を胸に抱き寄せると、その小さな温もりが彼の心に少しの癒しをもたらした。 その日からタケルと子猫は共に夜を過ごすようになった。子猫が彼の肩に乗り、夜明けの空を見つめるたび、タケルの内面に変化が訪れるのを感じた。あの孤独な風景に、小さな灯火が灯るように、彼は少しずつ人と繋がる勇気を取り戻しつつあった。しかし、それでも完全には自分を許せない気持ちが残っていた。 ある朝、いつものように屋上で夜明けを迎えると、子猫が彼の肩から飛び降り、タケルの目の前で小さく鳴いた。東の空が紅く染まり始め、静寂の中でその声が響く。タケルはそれがまるで「自分を許せ」という言葉のように感じられた。 ふと涙が溢れ出す。孤独を抱え、過去の痛みを誰にも見せずに生きてきたタケルは、その瞬間、初めて自分の弱さと向き合うことができたのだった。 彼は子猫を見つめ、「ありがとうな」とつぶやく。夜明けの空に向かって新しい決意を抱くと、かつての自分を許し、新しい一日を歩き出す力が湧いてきた。 こうしてタケルは、一人ではなく、共に夜を越える相棒と共に、夜明けを迎える男として新たな一歩を踏み出したのだった。

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        はじまりの森

        夜が明ける前の静けさの中、森の木々は一つ一つ、まるで大きな生き物が寝息を立てるように揺れていました。小鳥の父親は枝の上で目を閉じ、すぐ近くで寄り添う家族の温もりを感じながらも、心に広がる不安に飲み込まれそうになっていました。「ここはずっと変わらないと思っていた。でも、この森も私たちの居場所ではなくなっていくのかもしれない」と、どこか遠くから迫り来る運命の足音を感じ取るように思いました。 日が昇ると、森のあちこちで重機の音が響き渡りました。まるで空の裂け目から不穏な風が吹き込むかのように、心がざわめき、安寧が引き裂かれていくようでした。森を見渡すと、彼方に見える森の入口近くの木々が次々と倒されていきます。父親鳥はその光景に胸を締め付けられるような思いに襲われました。「どうして、どうしてこうなってしまったのか……」と、心の中に湧き上がる葛藤を押し殺し、何とか家族を守るために何をすべきかを考えようとしました。 母親鳥もまた、巣の中で子どもたちを守りながら不安に苛まれていました。子どもたちはまだ何も知らず、枝の隙間から光が差し込む様子に無邪気に興味を示していましたが、母親鳥はそれがかえって切なく、無力感を感じずにはいられませんでした。「この子たちに、安全な居場所を残してあげられるのだろうか……」と、自問自答しながら、その小さな体に必死に覆いかぶさって守り続けました。 父親鳥は意を決して新たな住処を探すために森の奥深くへと飛び立ちました。空を見上げると、いつもは頼りにしていた青空も、どこか冷たく、無情に感じられました。どこへ行っても伐採の影は迫り、いつまたここも危険にさらされるか分からないという不安が心を支配します。奥へと進むたび、父親鳥の心象風景は、失われつつある森の姿と共鳴するかのように、暗く、重くなっていきました。 そんな中、森の奥で一本の古びた大木を見つけました。かつては壮麗だったであろうその木も、枝の多くが枯れていましたが、今の彼らにはそこが唯一の避難場所でした。荒々しい風がその木を揺らし、小さな巣の隙間から冷たい風が入り込んできましたが、父親鳥は家族を守るため、この場所を「新しい家」として受け入れるしかありませんでした。 日々の暮らしの中で、母親鳥は子どもたちに静かに語りかけました。「いつかこの森もまた、新しい命で満ちる日が来るのかもしれないわ。私たちもその時まで精一杯生き抜いて、歌を届け続けよう」。彼女の声には、苦しい現実と、それでも消えない小さな希望が交錯していました。森が再生する日を信じようとするその姿は、無情な運命に抵抗する小さな決意の現れでもありました。 やがて、日が重なるごとに、森のあちこちで小さな苗木が成長を始め、彼らの巣の周りにも新たな命の息吹が感じられるようになりました。その光景に、父親鳥もまた少しずつ希望を見出すことができました。かつての青空は戻らなくても、ここにはまた新しい未来が待っているのかもしれない。そして、自分たちがその森の再生の一端を担っているという思いが、彼の心に安らぎと誇りをもたらしました。 風が吹くたび、彼らの歌は森の奥深くまで響き渡り、森の苗木たちがその声に応えるようにそっと揺れ動いていました。

        • 日本の家族百景  小鳥たちの家

           夜が明ける前の静けさの中、森の木々は一つ一つ、まるで大きな生き物が寝息を立てるように揺れていました。小鳥の父親は枝の上で目を閉じ、すぐ近くで寄り添う家族の温もりを感じながらも、心に広がる不安に飲み込まれそうになっていました。「ここはずっと変わらないと思っていた。でも、この森も私たちの居場所ではなくなっていくのかもしれない」と、どこか遠くから迫り来る運命の足音を感じ取るように思いました。 日が昇ると、森のあちこちで重機の音が響き渡りました。まるで空の裂け目から不穏な風が吹き

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        • 日々五詠
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        • Alchimist 妄想
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              夜明けのからす

          主題歌  夜明けのからす 1   本文 男の名はタケル。彼は都会の片隅で、夜勤の警備員としてひっそりと生きている。夜の闇に包まれた高層ビルの中を歩きながら、彼は誰にも言えぬ心の重みを抱えていた。それはまるで冷たい闇が彼の内面に広がり、どこか無限に続く深い孤独の海が広がっているようだった。 ビルの屋上がタケルの唯一の安息の場だった。彼は毎朝、夜が明ける直前にここに立ち、空がほんのりと色づき始める瞬間を見届けるのが習慣だった。都会のビル群が黒く沈み、東の空がわずかに紅く染ま

              夜明けのからす

            根と翼ー昭和33年のころ

          第1部:別れと想い 春の風が畑を吹き抜け、いつもなら青々としたお茶の葉が揺れているはずだった。しかし、今年は一面が荒れたままで、何も植えられていない。夫が旅立ったあの日から、村の景色がまるで違う色を帯びて見える。三郎の出発を見送り、村の小道を歩くトミ子の胸には、漠然とした不安が広がっていた。彼がこの村から遠く離れた新しい土地で夢を追い始めた今、村に残る自分の役割は何なのか――そんな問いが彼女を苛むのだった。 第2部:変化と誇り 届いた写真には、広大な大地に立つ夫が短髪に

            根と翼ー昭和33年のころ

          日本の家族百景  梅の帰り道

          秋の澄んだ空気が山間の田舎に広がり、すすきが風に揺れる音が聞こえる。その中を歩く少年、健太は、帰り道を辿りながら、少しずつ近づいてくる祖父母の家を思い浮かべていた。両親を幼くして亡くし、祖父母に育てられた彼は、感謝の気持ちを胸に抱えつつも、成長するに連れて家を離れていく運命を受け入れていた。高校を卒業した彼は、祖父母に恩返しをしたい一心でアメリカで働くことを決めた。 異国での生活は厳しく、毎日早朝から夜遅くまで働く日々が続いた。健太は懸命にお金を稼ぎ、少しでも祖父母の生活を

          日本の家族百景  梅の帰り道

          日本の家族百景 『忘れたくない風景』

          もう一度会えたなら──そんな想いが浮かぶたび、彼の胸に鈍い痛みが走る。若い頃、彼は仕事にかまけて家に寄りつかず、家庭を顧みることをしなかった。彼女の寂しげな横顔や、母にしがみついていた小さな子どもたちの姿も、当時の彼にはただの風景の一部に過ぎなかった。しかし、離婚を告げられたその瞬間、ようやく気づいたのだ。失ったものの大きさに。けれどその時には、全てがすでに手の届かぬ過去となっていた。 彼はその後再婚し、今度こそ穏やかな家庭を築けると信じた。前妻や子どもたちのことは心の奥底

          日本の家族百景 『忘れたくない風景』

          幾春別ー川の流れと記憶

          はじめに 石狩低地を流れる川の一つに幾春別川という川がある。その水源は北海道を縦断する日高山系の夕張山地だ。「幾春別」という名前には、どこか詩的な響きがある。 行く春の別れ惜しくも夏は来る、流し流され幾春別川 と詠みたくなる気持ちも湧く。しかし、実際には全く関係がない話だ。この川の名の起源は、もともとアイヌ語で「イク・スン・ペッ」、つまり「彼方にある川」という意味を持っていた。幌向に住むアイヌの人々にとって、この川は遠くに流れる「向こうの川」として知られていた。幾春別川は

          幾春別ー川の流れと記憶

             幾春別川の記憶 

          はじめに 石狩低地を流れる川の一つに幾春別川という川がある。その水源は北海道を縦断する日高山系の夕張山地だ。「幾春別」という名前には、どこか詩的な響きがある。 行く春の別れ惜しくも夏は来る、流し流され幾春別川 と詠みたくなる気持ちも湧く。しかし、実際には全く関係がない話だ。この川の名の起源は、もともとアイヌ語で「イク・スン・ペッ」、つまり「彼方にある川」という意味を持っていた。幌向に住むアイヌの人々にとって、この川は遠くに流れる「向こうの川」として知られていた。幾春別川は

             幾春別川の記憶 

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          AIで紡ぐ文章

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               紅葉のささやき

          秋の深まりが静かに感じられる森の小道を、佳乃は一人歩いていた。紅葉の季節は彼女にとって特別だった。秋の訪れが少しずつ色彩を変え、鮮やかな赤や黄色に染まる木々の姿が、まるで彼女の内面の移ろいを映しているかのようだった。 佳乃はふと立ち止まり、そっと手を伸ばして落ち葉に触れた。その葉はすでに役目を終え、風に舞い散り、土へと還る準備をしているようだった。彼女の心にふと、若い頃の記憶が蘇った。何かを追い求め、けれどもそれが何なのか分からず、ただ焦りに駆られた日々。自分が何を求めてい

               紅葉のささやき

             日本の家族百景                   「小さな手のぬくもり」

          冷たい冬の夜、健太は、窓の外に広がる白く凍てついた景色を見つめていた。街灯の光が雪に反射して、かすかな青白い輝きが部屋の中まで差し込んでいる。まるで凍った自分の心がその光に照らし出されているように感じた。隣のベッドでは、まだ幼い息子の佑樹が静かに眠っている。彼の小さな胸が規則正しく上下するのを見つめながら、健太は自分の心に沸き起こる複雑な感情を抑えきれなかった。 佑樹が生まれたとき、医師からの告知は非情だった。「この子は一生、普通には歩けないでしょう」その言葉が健太の耳に残

             日本の家族百景                   「小さな手のぬくもり」

          日本の家族百景 「優しい忘却」

          雪がちらつく寒い朝、田舎の一軒家に住む妹夫婦、京子と修一は、義姉である智子を迎え入れる準備をしていた。智子は認知症を患い、一人での生活が困難になり、妹の京子が面倒を見ることになったのだ。家の周りは冬の静寂に包まれ、まるで智子の記憶が静かに雪の中に埋もれていくようだった。 智子はかつて明るく、村の皆から慕われる存在だった。学校の先生をしていた頃の姿が、雪の中でぼんやりと浮かび上がる。笑顔で生徒を見つめる智子の姿は、過ぎ去った季節と共に薄れつつあるが、その面影が京子の心に深く刻

          日本の家族百景 「優しい忘却」

          日本の家族百景 峠

          霧が山の谷間に漂い、峠道の石畳が冷たく湿っている。ふいに風が吹き、古びた木々の葉がかすかにささやく音が聞こえる。その静寂の中、一人の老人がゆっくりと峠道を登っていた。背は少し丸まり、肩には白いタオルを掛け、手には小さな風呂敷包みを大切そうに握りしめている。その風呂敷は色あせ、何年も何度も持ち主が変わったかのように見えるが、老人の手に渡ってからはそのまま彼の大切なものとなったようだ。 峠の頂上付近には小さな祠がある。老人は道の脇で立ち止まり、息を整えながらゆっくりと祠へ向かっ

          日本の家族百景 峠

          日本の家族百景 沈黙の花

          沈黙の花 庭の紫陽花が静かに咲き乱れている。初夏の柔らかな陽射しが葉の先を淡く照らし、青紫の花びらが風にそっと揺れている。私は窓越しにその花を眺めながら、ふと胸の奥に重い感覚が忍び寄るのを感じていた。毎年この時期になると、紫陽花の花が目に入るたびに思い出されるのは、家の中に漂うあの特有の空気だった。 「家族ってのは、しっかり支えなきゃいけないもんだ」 母の声が、低く、けれど力強く響いている。リビングのテーブルに向かい合って座る父は、いつものようにうつむき加減で、口を開こ

          日本の家族百景 沈黙の花