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末路の話。

最近よく聴く歌、と言いますか、BGMがあります。

こちらです。
https://open.spotify.com/track/1FAzfvTuQgjGqx7nyHogZH?si=f0686dcd11704717

このBGMはフリーの音源らしいのですが、そもそもこれを知ったきっかけが、この YouTube チャンネルでした。

https://www.youtube.com/@tokyoubers/featured

このチャンネルの動画では、いずれも、上記で紹介した曲が使用されています。最近、暇さえあればこのアカウントの動画を観ているので、このBGMも脳内でずっと流れているんですよね。何回聴いても飽きないです。

ちなみに、この頃は、1時間耐久のこちらを聴きながら仕事したりしています。

https://www.youtube.com/watch?v=0W7s1trfUio

妙に落ち着くと言いますか。1時間でも余裕で聞いていられます。思考や手元作業の邪魔にならないのがすごく有難い。

巷ではよく「作業用BGM」という言葉を耳にしますが、私は集中力がそれほど長く続かないタイプだからでしょうか、気が付くとBGMのほうに耳を傾けてしまっていたりするんですよね。

歌詞のあるものなんかだと、高確率で言葉の意味や文脈を考え出してしまいます。「ああ、分かる。今のフレーズは染みたなぁ」とか「えっ、今の言葉ってどんな意味なんだろう。もしかして、こういうことかな・・」みたいな。歌詞が無いものでも「良いメロディだなぁ」と思ってしまったり。

学生時代に勉強をする際にも、最初は好きな音楽を聴きながら勉強をしていましたが、どうにも集中できなくて、最終的には「次はどの曲を聴こうかなぁ」となっていました。

これは個人的な話ですが、集中して何かを覚えたり、何か情報を読み取ったうえで整理して答えるタイプの問題を解いたりする際には、音楽を聴きながらではないほうが良いなと思います。

私はそれに気付くのが受験に失敗してからでしたので、もっと早くに気付いていればなぁと後悔することもありました。実際、音楽を聴かないようにして勉強したら、もう暗記量がものすごく増えましたし、読解スピードもその正答率も格段に上がりました。あんなに苦労していたのに、たったこれだけのことが原因だったのかと。

もちろん、音楽聴きながらでも勉強できる人も居ると思いますし、結局はその人の鍛錬と特性、元々の能力なんかに依るものではあるのでしょうけれど。

何の話でしたっけ。
あ、そうそう、作業用BGMです。

個人的には主にインプットする際には向かないですけど、逆にアウトプット作業の際には、詩の入っていないインストルメンタルの音楽は、ちょこちょこ聴きます。仕事で何かプログラムを書いたりするときや、それこそこの note の記事を書いたりする時には、良い感じに集中できるので。

モノを覚える時と頭の中にあるものを出力する時とで、脳の使い方が違うからなのかもしれないですね。分かりませんが。

そういうわけで、上に紹介したこの「Escort」もそうですけど、他にも、昔やったゲームのサントラとか、アニメやドラマ、映画のサントラとかも好きでよく聴きます。

さて、話は戻りますけれど、この YouTube のショート動画の中で、このようなものがありました。

https://www.youtube.com/shorts/SxUYHasiLPs

若干ネタバレになって恐縮ですが、このショート動画の中では、ブラック企業に勤める主人公が子供の誕生をきっかけに育児休暇を取得しようとするんだけど会社に認められず、それでも何とか取得したけれど、復職したら残酷な仕打ちが待っていた、という何とも哀しいストーリーなわけです。

このショート動画を観ていて、実は私自身、二人目の子供が生まれるときに、これと似たような経験をしたのを思い出しました。


当時、私はシステム開発会社に勤務していましたが、下請けの下請けの下請け・・表現は分かりにくいですが、要するに、幾社もの下請けされた開発作業をおこなうような会社で働いていました。

業界外の方には理解しがたいかもしれませんが、システム開発の仕事は、その規模が大きくなると、何社もの関係者が出てくるケースがあります。

どういうことかと言いますと、たとえば、Aというメーカーが、とある新しいシステムを作りましょう、となった場合に、現在は色々選択肢があります。

ざっくり分けると、パッケージと言って、他の企業でも汎用的に使えるような、あらかじめ色々機能が備わっているシステムを買ってくるというケースもありますし、独自の機能を備えたいのであれば、一から自分たち専用のシステムを作り上げるというケースもあります。

このうち、後者の「自分たちで作る」というのは「スクラッチ開発」とも呼びますが、こういうケースでは、大抵、企業規模の大きなシステム開発会社(B、とします)にそのシステムの開発作業を発注をします。

最近では、もっと上流(システムを開発する以前の段階で、システムの企画とか、業務そのものを見直す専門とか、経営目線からメスを入れるような専門家)に依頼することもありますが、ここでは話をシンプルにするために、いったん、A→Bへの商流とさせてもらいます。

で、じゃあいざ、Aから仕事を請け負ったBが、自社内で最初から最後まで全部の作業を行ってシステム開発ができるかというと、実際はそうではないケースも多いです。そこには様々な大人の事情もありますが、大抵は、B社は、「システムで何がしたいの?そしたら、これとこれと、こういう機能が必要だよね」というところまで決めたら、その後の「製造作業」は別の会社に任せます。

そこで、下請け会社が出てきます。ここでは仮に、C社とします。C社は、「うちなら安く作れますよ」と言って、B社から「製造作業」や、その作ったモノの「テスト作業」を請け負います。

つまり、そういう実際に手を動かす「モノづくり」作業は、今の日本国内の状況では「単価が低い人たちにやらせるもの」という認識であることが珍しくないわけです。

さらに、C社だけではなく、作業内容を細かく分けてまた更に下の会社に振ったり、中にはマージンだけを得て作業丸ごと別の会社に振ったりします。たとえば、C社からまたD社、さらにE社、F社といったように、1次請け→2次請け→3次請け・・といったように、下へ下へと仕事が投げられていくことが多いのです。もちろん、開発規模にも依りますが、大きければ大きいほど、関係者が増えていく傾向にあります。

つまり、より安い単価で請けてくれる会社に、どんどんと仕事を回していくわけです。はっきり言って、業界外の人たちからすると、異常なカタチの商売に見えなくもないですが、残念ながらそのような実情があります。

話を戻すと、私は、ここに出てくる E とか F といったような「下請け業者」の末端としてのシステム会社に勤めていた経験があります。(ここに勤めることになった経緯は色々あるのですが、語りだすと長くなるので割愛します。)

で、私は当時、その下請け会社で働いている時に、どうやら子供が生まれそうだぞ、ということになりました。その時、ちょうど、プロジェクトの切れ目で、少しだけ暇な期間がありました。

「プロジェクトの切れ目って何?」という話も分かりにくいので、少し説明します。

こういう「下請け」を専業にしている会社は、実態は、開発作業の派遣要員なのです。

そのため、AというメーカーがB社に発注したシステム開発プロジェクトに参画(派遣)して、契約内容によって、そのプロジェクトの最後まで居る場合もあれば、途中で、別のプロジェクトに行かされることもあるのです。

あんまり深く言うつもりはないですが、プロジェクトとプロジェクトの間で関連がまるで無いものもあります。

つまりは、会社内の営業担当が契約をしてきて、その内容通りに、「次はこっちの会社」「その次はあっちの会社」と勝手に決められるのです。プロジェクトごとに、勤め先も変わるわけです。名刺とか名乗る会社名とか、そういうのも、場面によって様々だったりするんですよね。お客様相手とか、一次請け相手とか、開発ベンダー相手とか。「いったい自分は何者なんだ・・」と思ったりもします。

ある意味、この業界の、闇、かもしれないですね。

閑話休題。

そういうわけで、当時参画していたプロジェクトの契約期間の満了が見えてきて、次のプロジェクトはどうするかと決まっていない状態で、私は会社に対してとある申し出をしました。

それが、

「育児休暇を取らせてください」


ということでした。上の子供のこともありましたし、何より、産後すぐの妻の負担を少しでも軽減できないかと考えた末の結論でした。

しかし、会社からの答えは、「No.」でした。

私は「育児休暇の期間中は、給料は要りません。休ませてもらないでしょうか」と引き下がりませんでしたが、それでも会社は「No.」とのことでした。その理由を尋ねると、「それを許してしまうと、他の従業員に示しがつかないから・・」とのこと。

うーん・・意味が分かりませんでした。

しかし、会社としての言い分は想像できます。

この会社は、上でも書いたように、言わば派遣業なのです。そのため、プロジェクトに要員を送り込んで、1か月あたり幾ら、とか、月〇〇時間勤務して幾ら、といったような形で契約をとり、事業を成り立たせています。そのため、要員が稼働しない期間は、単純に、売り上げがゼロなわけです。

会社としては、そのような事態は防ぎたい、と。きっとそのような意図だろうと想像しました。

こちらとしては、二か月も三か月も休暇を取るつもりはありませんでした(まあ可能なら半年とか一年とか取りたかったですけど)が、会社が認めないなら仕方がありません。

そこで私は折れて、次のアクションをとろうとしました。それは、子供が生まれてすぐは、妻も家のことをすることが難しいので、できればしばらくは忙しくないプロジェクトに参画させてほしい、と。

実は、当時参画していたプロジェクトが炎上(=開発作業上で大きな問題が起こっており、深夜残業や休日出勤、徹夜などが続いていたりする大変な状況のこと)しており、さすがに同じような状況だと困る。産後すぐの家庭を優先したいため、次のプロジェクトでは、ここよりも忙しくないところが良いな、と思っていました。

もともと、私がこの会社に入社するときに、「技術者の意見は尊重して、営業担当者が仕事をとってきてくれる」という話を聞いていました。実際に、先輩や、経営層からもそのように言われ、「だから働きやすいよ」とのことでした。

それなら、ちょっとワガママで申し訳ないけれど、私の意見も伝えさせてもらおうと。そう思って、会社に申し出たのでした。

すると、回答としては、「分かった。最大限努力します」と。

子どもが生まれるときには妻に大変な思いをさせて迷惑をかけてしまうけれど、生まれた後は、定時で帰って私が家のことをしっかりやろう、と胸に誓い、期待をしていました。

しかし、いざ次のプロジェクトが決まり、フタを開けてみると、

このプロジェクトも大炎上



していたのでした。

どういうこと?
すぐに営業担当に確認すると、「申し訳ないけれど、しばらくは耐えてほしい。忙しくない案件をとってくるから」と。

納得は行きませんでしたが、嫌だからと言って仕事を投げるわけにはいきません。

そこで、「せめて、通勤時間が短くなるところも検討してもらえないでしょうか」と申し入れました。少しでも家から近い場所の勤務先なら、多少忙しくても、家で家族と居られる時間が少しでも確保できるのでは、と思ったのです。それも「分かった」と。

ところが、一か月、二か月経ってもその状況は改善せず、あろうことか、そのプロジェクトでは他のベンダーが次々と離脱し、下請け業者の中では、私の勤め先の会社が古株になっていたのでした。あまりの酷いプロジェクト状況に、他の開発会社は匙を投げた形になっていました。

そして、ある時、営業担当と話し合いをする機会がありました。その中で、話は急展開していくことになります。

営業担当者からまず言われたことは、


で、いつ頃に辞める?


とのことでした。

は?
辞めるとは・・?

どうやら、営業担当者の頭の中では、「参画しているプロジェクトに納得がいかない」⇒「会社の方針を受け入れられない」⇒「退職するしかない」というような図式になっていたようでした。

別に彼は怒っていたわけではないですし、私自身も辞める選択肢はその時点ではありませんでしたが、そこからは何を話しても無駄でした。

私も、育児休暇の一件もあり(他にも様々ありましたが、内容は省略します)、会社への不信感が募っていましたので、すんなりと辞める検討を始めました。

何となく営業担当とか会社自体に対して、「あっ、エンジニアのことをナメてるな」と感じてしまったのです。そんな状況で、自分が良い仕事が出来るとは思えませんでした。傲慢かもしれませんけれど。

幸い、転職先は割とスムーズに見つかりました。

そして、本社のお偉いさんたちに対して、退職前の最後の挨拶に向かいました。「辞める」と言った手前、顔を合わせるのは気まずいなぁ、怒られるのかな、それでも社会人としてちゃんと挨拶しなくちゃなぁと。

すると、社長も専務も、入社した時と変わらず温かい雰囲気で迎えてくれました。

「いやぁ、君が去っていくのは何とも残念だ」
「いずれ会社を背負ってくれる人材と思っていたんだが」
「でも、君が決めたことなら仕方ない」
「専業主夫をやるんだって?大変だろうが応援するよ」
「いつでもまた遊びに来てくれて構わないから」


え?ちょっと待って、専業主夫
そんなこと言ってねえぞ・・

どうやら話を聞いていると、私が営業担当に伝えた情報は、その営業担当者のほうで、めちゃくちゃ歪曲して上層部に伝えてくださったらしく。上層部としては、育児休暇とかプロジェクトの変更依頼とか、そういう話は一切聞いていないとのことでした。

何でも、

「子供が生まれる」⇒「専業主夫になる」⇒「退職したい」

といったような話を、営業担当から上層部に伝えられただけとのこと。

いやぁビックリしました。勝手に退職理由が「専業主夫になるため」になっていたものですから。一体、営業担当の彼がどのような意図でそうしたのか、彼の読解力が著しく低かったのか、はたまた私の話の仕方が悪かったのか、定かではありませんが。

と同時に、私も、そういった重要な話を、この一営業担当者にしか伝えていなかったことを反省しました。と言うのも、「こんな話は偉い人に直接言うべきではないかもな。営業の人から伝えてもらったほうが効率が良いのかもな」なんて思ってしまっていたんですよね。

情報の伝達は、人任せにしてはいけないことがあると、その時に痛感したものです。

また、めちゃくちゃ邪推をするならば、営業担当者が上層部に具に伝えたとしても、上層部のほうで握りつぶすと言いますか、「もういいだろう、こんなヤツは」と考えていた可能性もあります。

いずれにせよ、もしかしたら面倒くさかったのかもしれませんね。私みたいなのが会社内に居るのが。

今となっては真相は分かりませんけれど。

そういったわけで、私は晴れて別の会社に転職しました。


この件で思うのは、「会社の都合」はもちろんあるでしょうが、そこで働く「従業員の都合」もありますし、もっと言うと「私個人の都合」もあるわけです。

どうしても、被雇用者という立場を思うと、雇用者側の言いなりになってしまうこともあります。今回の私のケースは、たまたま転職先が見つかったから良いようなものの、あのまま、その下請け企業で馬車馬のごとく働かされ続けるような未来もあったでしょう。

どうするかは、自分次第なのでしょうが、自分の人生にとっては何が大事なのかな、と考えた時に、行動してもいいのだろうなと思ったりもします。

上で紹介した、東京ウーバーズさんの動画を見ていると、「人生の岐路」みたいなものを感じます。どの動画も本当によく作ってありますし、分かりやすい。どれも面白いし、演じている方お二人もすごく魅力があります。

「末路」というタイトルがよくつけられていますが、こうして細かく研究されて演じられている人生模様を見ると、ああ、自分も自分の人生を送っている一人物なんだな、という思いがします。

そんな、上記のショート動画の話ほど悲惨ではないにせよ、なんとなく当時のことを思い出してしまいました、そういうお話でした。

ある意味、末路かもしれないですね。

受験勉強の時に音楽聴きながら勉強した男の末路・・
下請けIT企業で育児休暇を取得しようとした男の末路・・

「末路」って言いきっちゃうと、ある種の法則性みたいなものが見えてきて、客観的には面白いですね。もちろん、その通りではないのでしょうし、人生の数だけトライ&エラーも、正解すらも異なるのでしょうけれど。おしまい。

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