
美味しい焼きそばの作り方の話。
ここだけの話。
最高に美味しい焼きそばの作り方をお教えしよう。
用意するのは、市販の袋麺でいい。焼きそば専用のやつだ。何も生地から麺を作るなんてことはしなくていい。作るのは焼きそばだ。高級料理なんかじゃない。庶民の腹を満たすためだけに生まれたもののはずだ。だから具材もありきたりだ。キャベツともやしと豚バラ肉。最近じゃ、スーパーで「焼きそば用カット野菜」なんてものがある。これでもいい。
大事なのは調味料。ウスターソースは必須。あっ、袋麺に入っている粉ソースも使うから捨てないで。あとはラードとごま油。ラードは最悪無くてもいい。でもごま油は無いと困る。それからショウガやニンニク。これはチューブでいい。すりおろしてこだわり気持ちも分かるが、何度も言うように庶民の食べ物なのだ。時間や手間はかけるべきじゃない。
料理工程。まず野菜を炒めよう。ラードを使う。大事なポイントとしては、決して味付けはしてはいけない。油だけで炒める。しんなりしてきたら、別皿に出しておく。
それから肉。その前にショウガやニンニクを軽く炒めて油に香りづけをする。それから肉を炒めよう。焼き色がついてきたら、ここで粉ソースを少し使う。それでしっかり火を通す。この時、少し味を濃いめにするのがポイントだ。塩コショウで整えてもいい。こんがりしないうちにこれもフライパンから取り出す。
いよいよ麺を炒める。市販の袋麺なら、電子レンジで1分ほどチンしておこう。そうすることでほぐれやすくなる。麺はできればごま油で炒めよう。麺が柔らかくなってきたら、粉ソースの残りをまぶしてさらに炒める。そして最後の味付け、ウスターソース。ただしこれはかけすぎると味が濃くなってしまうので、味を見ながら加えていく。ウスターソースは火にかけると、すぐにジュッと蒸発するので時間との勝負だ。炒めすぎると麺が固くなりすぎるので注意。
全体的に味が整ったら、別皿に盛っておいた野菜と肉をフライパンに投入しよう。そこからはあまり炒めることはしなくていい。敢えて混ぜ合わせる程度でいい。これで完成。
どうだろう。そこまで複雑ではないはずだ。あなたがいつも食べている焼きそばに満足していないのなら、是非お試しいただきたい。
さて、焼きそばに似て非なるもので「カップ焼きそば」なるものがある。
これは、なんと、焼いていないのに「焼きそば」なのだ。料理工程も、具材を火にかける順番とか気にする必要もない。単に、カップにお湯を入れる。規定の時間、待つ。そして、なんと、お湯を捨てるのだ。ここが「カップラーメン」と異なる点だ。お湯は、単に麺を柔らかくするための引き立て役に過ぎない。言わば、出がらしのようなものだ。
だが、世の中には、その出がらしですら、スープにしてしまう商品がある。カップ焼きそばに中華スープの素が付属しているものがあるのだ。本来捨てるべきはずだったお湯をこのスープの素と合わせることで、なんと、もう一品、簡単に出来上がってしまう。これは画期的だ。ただ、この記事は焼きそばの作り方に関するものなので、商品名を紹介することは割愛する。
閑話休題。そうしてお湯を捨てたカップ焼きそばに、付属のソースを入れる。混ぜ合わせる。かやくもその時に入れる。そうして出来上がる。
これで、焼いていないのに「焼きそば」なのだ。
一つ断っておきたいのは、私はこの事実に異を唱えるつもりは全くない。むしろ、袋めんの焼きそばも、カップ焼きそばも、同じように庶民の腹を満たす最高に手軽で最高に美味しい料理だと思っている。
そして、私は、カップ焼きそばを食べると、いつも、死んだ親父の言葉が聞こえてくる。
「焼いていないのに、本当に焼いてる味がするよな。
カップ焼きそばって」
そう言って親父は、美味しそうにカップ焼きそばをほお張っていた。
親父。あなたが死んでもう10年以上経ったけど、相変わらずカップ焼きそばは焼いていないものが主流だし、それで美味しいよ。焼いていないのに。
なぜ、美味しいのか。
フライパンで作る焼きそばは、それを「この焼きそばは美味しい!」と言って食べてくれる家族が居るから、旨い。一人だって構わない。「あっ、いつもより美味しい」と思えば、過去の自分と対話している。
ストーリーがあるのだ。だから旨い。
カップ焼きそばも同じだ。このカップ焼きそばも、「焼いていないのに焼きそば」という事実が、なんとも滑稽であり、素晴らしいのだ。私は食べながら、当時の親父と会話をしている。だからこそ、親父の言葉が今でも私の中で生きている。
以上、これが私の焼きそばの美味しい作り方。でした。
あとがき。
実はこれ、フォローさせていただいている秋峰さんのこちらの記事にインスピレーションを受けて、書かせていただきました。
https://note.com/8739sshuho/n/nc94a8d723af0?magazine_key=m543c6aae8b12
マガジンもあって、他の方が書かれた記事も、どれも個性的で面白いです。
https://note.com/8739sshuho/m/m543c6aae8b12
秋峰さん、勝手に乗っかってすみません。
面白い企画ありがとうございました!