アメリカ帝国の過剰な支配は悪化しているのか?
アメリカの軍事的支配力が破綻をきたしそうだ、という記事です
要約
・世界は、数十年に及ぶアメリカ一極支配が破綻しつつあり、
多極化へ進もうとしている
・それを阻止するために取っているアメリカの行動は様々な問題を
引き起こし、逆に世界を不安定にするだろう
2023.1.19 SouthFront
by Drago Bosnic
ここ数十年、世界は劇的な変化を遂げてきた。二極的世界秩序が解体され、アメリカが「唯一の超大国」の地位に躍り出たのである。
最近になって、このプロセスはまた新たな展開を見せ、一極集中から多極化へと移行している。この再編成は完全ではないが、現在進行中のプロセスであることは確かであり、それを止めるには激しい戦いが起こるしかない。予想されることだが、一極集中の世界をあきらめず、「ルールに基づく世界秩序」と婉曲的に呼ばれるこのシステムの主要な担い手であるアメリカは、多極化の到来を阻止しようと懸命である。
しかし、この好戦的なタラソクラシー(thalassocracy:海洋帝国)は、過去の多くの帝国と同じ罠に陥っている、それは「帝国の過剰な拡大」である。
この言葉は、歴史学者ポール・ケネディの造語で、1987年の著書『大国の興亡』の中で初めて登場した。ケネディは、大国がその野心を維持できなくなったときに何が起こるかを説明するために、この言葉を使った。興味深いことに、当時レーガン政権下で頂点を極めたアメリカは、すでにこの現象の初期段階を経験していると主張した。
この考え方は、アメリカが世界的なパワーのピークに達しようとしていたこと、後にアフガニスタンとイラクへのほぼ並行した侵攻で頂点に達したことで、異議を唱えることができるが、ケネディの先進的な主張は現在の出来事によって補強されている。
ケネディは、大国が世界支配の野心を絶やさないことに警告を発し、それが資源の枯渇を必然的に招くと主張した。まさに今、アメリカ主導の西側諸国に起こっていることである。1990年代から2000年代にかけて、アメリカが大規模な武力行使を行ったにもかかわらず、この結果を正確に予測できたのは、ケネディの豊富な知識と洞察力の賜である。
アメリカが世界数十カ国の破壊に躍起になっている間に、世界経済は中国を中心としたアジアにゆっくりと軸足を移していた。アメリカによる無限にあると思われた資源の浪費は、10年余りの間に何度も世界を経済危機に陥れ、負債と財政赤字を増大させ、西側の経済力を低下させることになったのである。
この好戦的な権力(アメリカ)は、生産力のアウトソーシングを進め、通貨支配を通じて西側諸国に対してその生産力を確保することを望み、永続的な世界的優位性を確保するシステムを構築しようとした。
この仕組みは、数十年間は機能していたが、西側勢力がロシアへの侵略をエスカレートさせてから、破綻しはじめた。1990年代初頭以来、休眠状態にあった超大国モスクワは、(西側との)協力構想が拒否されるだけでなく、冷ややかに、あるいは公然と敵対されるようになり、ますます不満を募らせるようになった。このため、ユーラシアの巨人は自らのアプローチを見直すことを余儀なくされ、ついに2月24日の反攻に至ったのである。
それ以来、西側勢力はロシアに対抗するために資源を総動員するようになった。まさにこの時、アメリカは世界と地域の複数の敵に同時に対処しようとする、帝国的な過度な緊張状態にあることが露呈したのである。
今年1月17日付のニューヨーク・タイムズ紙は、「アメリカは現在、イスラエルにある秘密の備蓄品からキエフ政権に軍需品を移さざるを得ず、欧米以外の兵器にますます依存するようになっている」と報じた。
国防総省の予測では、ロシアは大規模な攻撃準備の後期にあり、ネオナチ政権は数十万発の砲弾や他の武器を必要とする。報告書によれば、これまで秘密にされていた隠し場所の備蓄品の多くはすでにヨーロッパに運ばれ、間もなくキエフ政権に譲渡されるという。アメリカが海外の武器備蓄を利用するのはイスラエルが初めてではない。韓国にある同様の備蓄品も利用されているからだ。
イスラエルも韓国も、ネオナチ政権へのいわゆる「死の援助」を公式には否定しており、ロシアがこれを敵対的行動と見なす可能性があるため、非常に論議を呼んでいる。イスラエルはシリアにおけるロシアの影響力に直面し、韓国は核武装した北の隣国との緊張を緩和するためにしばしばモスクワに依存しているため、これは中東とアジア太平洋の地政学的状況を複雑にする可能性がある。
ロシアが敵対視する国を助ける可能性は極めて低いため、両国が欧米の対露侵略に関与すれば、これらの地域で制御不能な状況の激化を招きかねない。その結果、両地域における米国の軍事的プレゼンスをさらに低下させることになるかもしれない。
アメリカは、その世界帝国を維持するための大きな問題に直面しており、最近、アジア太平洋におけるアメリカの敵対勢力に対抗するための日本の大規模な再軍備計画など、さまざまな地政学的舞台で、その属国に大きな役割を与えることになっている戦略改定を発表した。
中東など他の地域では、ワシントンDCとイスラエルがより広範な反イラン連合を形成しようとしている。しかし、欧米の圧力によりモスクワとテヘランが緊密な関係を築いているため、イスラエルがロシアとバランスを取ることは不可能ではないにしても、より難しくなっており、この地域におけるイスラエルの地位が危うくなっている。
アメリカの世界的な力が弱まるにつれ、(紛争解決を)地域の同盟国や衛星国に依存することは、ワシントンDCの命令に従う傾向が弱まるため、必然的に(新たな)問題を引き起こすことになる。
イスラエル、韓国などはモスクワや北京との関係を悪化させないようにするだろうし、EUではほとんどの重要な問題での合意形成に時間がかかりすぎる。ネオナチ政権のような過激派政権や非国家主体(NATOが支援する多数のテロ集団など)は、ますます統制が難しくなり、これまで以上に資源を必要とし、アメリカの帝国的な行き過ぎた支配を、さらに悪化させることになるであろう。(了)
考察
今回は、軍事情報サイト(southfront)に載った、パックスアメリカーナの崩壊が迫って来ている記事をもとに、西側の武器の枯渇に関する考察をしてみます。
参考になると思いますのでご紹介いたしますが、ウクライナの戦況を知るには、このサイトが一番情報量が豊富です。戦闘の様子、戦況の分析、兵器の解説、政治的な動きなど、日本のマスコミでは報道されない事実を中立の立場から伝えてくれています。
特に、2種のドローンのコンビネーションによるピンポイント攻撃の動画を見ると、ロシア軍による戦果の発表が、あながち嘘ではないと判断できます。(ただし、閲覧注意のものもあります)
こんな動画を見てしまうと、NATOがウクライナにM1エイブラムズやレオパルドⅡを送っても、対空防御の有効な手段とセットにしなければ、カミカゼドローンの餌食になるだけだということが、お判り頂けることでしょう。
兵力の逐次投入を続けたり、兵器の標準化を考えていなかったり、拠点防衛にこだわり過ぎたりと、ウクライナ軍(NATO軍)には、自軍の損害を考えるような、まともな軍事専門家がいないのでしょうか?
アフガニスタンやイラクからの撤退、そしてウクライナ戦争を見て判るように、アメリカ軍が全世界的に軍事的影響力を行使できる時代は終わりつつあるようです。
それは、NATO側の武器の枯渇が想像していたより深刻だからです。
戦争が始まってすぐに、ウクライナ軍の航空戦力は破壊されました。その後、地上戦の武器も前線での消費と、高精度ミサイルによる集積地攻撃によって在庫がなくなると、旧ワルシャワ条約機構国から、ソ連製の武器を輸入し始めました。それも枯渇したので、現在はNATO軍の武器(が扱える傭兵を入れて)戦っています。
特に大砲やミサイルの不足は甚だしく、砲撃戦でのロシア軍との損害の比率は9:1になるそうです。
アメリカからの援助だけではウクライナでの戦闘維持は困難になりつつあり、EU諸国の在庫でも足りずに、イスラエルや韓国からも持ち出そうとしているわけです。これは、冷戦終結後、既存の兵器(大砲や砲弾)の需要が減り、儲からなくなった製造工場を縮小して、単価の高いハイテク兵器の開発にシフトした結果です。
地上戦用の武器の枯渇は、中東やアフリカでしょっちゅう起きていたテロ集団の活動が、昨年から静かになったことからも想像できます。密売がなくなったとは思いませんが、隠し持っていた武器まで供出させたことで価格が高騰して、裏からの資金流入も減少したテロ集団は、新たな武器を手にすることが出来難くなっていると見ます。(武器もインフレ?)
今になってアメリカは日本に武器を買え買えと迫っていますが、売ろうとしているのは、ウクライナに持ってゆく必要のないものばかりで、ポンコツなのがバレた迎撃ミサイルであり、無駄に高い偵察ドローンであり、信頼性の低いステルス戦闘機であり、アメリカの許可無しには発射できない巡行ミサイルです。(しかも言い値で)
これらすべてが無駄だとは思っていませんが、日本の防衛力を高めようとするならば、武器を購入するよりも、サイバー攻撃に対する備えやスパイ活動に対する取締まりなど、インテリジェンス部門の強化の方がより効果的だと考えます。自衛隊の強化より、国民の平和ボケの刷新が喫緊の課題でしょう。
私の眼には、バイデン政権は、自国だけでなく同盟国も(裏で支援していた)テロ組織も含めて、大規模な地上戦ができなくなるように、わざと武器の無駄使いをやっている(やらせている)ように映ります。
それを、アメリカの一極支配が終了し、世界のパワーバランスが緩んだ時、各国が軍事行動を起こせなくするために供出させている、と言い換えることも可能です。
それとも、ウクライナでの旗色が悪くなったのにもかかわらず、今までの悪事がバラされることを恐れて、引くに引けなくなったネオコンが、手持ちの掛け金を全部ベットして最後のひと勝負をしているのでしょうか?
日本がそれにお付き合いする必要はないと思います。