漫才「1万円」

A「どうもー、よろしくお願いしますー」

B「お願いしますー」

A「あのー、今日はちょっと、お前に言いたいことがあるんだけどさ」

B「ほう、何?」

A「1万返してよ」

B「ん?」

A「先週貸した1万円、早く返してよ」

B「え?俺お前から金なんて借りたっけ?」

A「絶対貸したよ、ほら、仕事終わりで飯行った時に…」

B「うーん、俺酒飲んでたからよく覚えてないなー」

A「いや絶対貸したって、いいから早く返してくれよ」

B「よし分かった、じゃんけんしよう」

A「え?」

B「じゃんけんしてお前が勝ったら、すぐに1万渡すわ」

A「いやいやおかしいだろ、無条件で返せよ」

B「じゃあ5万にしようか?」

A「5万?」

B「もしお前が勝ったら、1万じゃなくて5万渡すよ」

A「ほう、言ったな?」

B「うん、その代わり俺が勝ったら1万の話は無しね?」

A「ああいいよ、じゃんけん勝つだけで4万プラスになるならやる価値あるわ」

B「よし、じゃあ早速始めよう」

A「はいはい」

B「最初は~グ~!(グーを出す)」

A「(グーを出す)」

B「じゃ~んけん~する~なら~リンゴの木~!」

A「…え?」

B「揺らして~落として~一齧り~!」

A「何…?」

B「甘くて~酸っぱい~じゃ~んけ~んポン!」

A「いやちょっと待ってくれよ」

B「ん?」

A「何なんだよその変な掛け声、聞いたことないわ」

B「あー、ごめんごめん、出ちゃってた?」

A「え?」

B「実は俺青森出身でさ、ちょうど昨日中学時代の友達と電話してたからついつい地元の掛け声が出ちゃったわ」

A「いやじゃんけんに出身とか関係ある?」

B「あるよ、地元ではみんなこうやってじゃんけんするんだから」

A「本当に?金払いたくなくて適当に言ってるだけじゃないの?」

B「違う違う、次はちゃんとやるから仕切り直してもう1回やろう」

A「まあそれならいいけど…」

B「よし、じゃあ行くよ?」

A「はいはい」

B「最初は~グ~!(グーを出す)」

A「(グーを出す)」

B「じゃ~んけん~する~なら~エビ~フライ~!」

A「…え?」

B「一本~丸飲み~じゃ~んけん~ポン!」

A「いやだからちょっと待てって」

B「ん?」

A「また訳分からないこと言ってたな、今度は何なんだ?」

B「あー、ごめんごめん、また出ちゃってた?」

A「え?」

B「実は俺、この前旅行で香川県に行ってきたばかりだからさ、ついつい香川の掛け声が出ちゃったわ」

A「いや適当な嘘つくなよ、そもそも香川の要素全然入ってなかっただろ」

B「入ってたよ、香川県はエビの漁獲量が全国8位だからね」

A「いや中途半端だな、その程度の名産をじゃんけんに組み込むなよ」

B「まあとにかく、仕切り直してもう1回やろう」

A「いい加減ちゃんとやってくれよ?」

B「はいはい、じゃあ行くよ?…最初は~グ~!(グーを出す)」

A「(グーを出す)」

B「じゃ~んけん~する~なら~つゆだくに~!」

A「…え?」

B「ねぎ玉~大盛り~じゃ~んけ~んポン!」

A「おいふざけんなよもう、真面目にやれって」

B「あー、ごめんごめん、また出ちゃってた?」

A「今度は何だよ?」

B「実は俺、昔吉野家でバイトしてたからさ、ついつい吉野家の掛け声が出ちゃうんだよね」

A「いやそんなもんあるわけないだろ、何だ吉野家の掛け声って」

B「今回はねぎ玉大盛りつゆだくバージョンだったね」

A「メニューはどうでもいいわ、あとなんでさっきからじゃんけんの直前に絶対何か食い始めるんだよ」

B「これはもう次で最後にしよう、今度こそ普通にやるから」

A「ちゃんとできるの?」

B「大丈夫、じゃあ行くよ?…最初は~グ~!(グーを出す)」

A「(グーを出す)」

B「パン~ペン~プル~パラ~ピラパッパ~」

A「おい…」

B「プラ~ピラ~パラ~ピパ~パン~ペン~…」

A「いやいい加減にしろよ!」

B「ん?」

A「さすがにふざけ過ぎだろ!もうやってられないわ!」

B「あー、ごめんごめん、実は俺宇宙人に連れ去られたことあるから…」

A「デタラメ言うな、もうじゃんけんも5万もどうでもいいから貸した1万だけ早く返してくれよ」

B「うーん…申し訳ないけどそれはできないわ」

A「え?なんでだよ?」

B「俺青森出身だからさ、借りた金は1円も返さない主義なんだよね」

A「いや青森にそんなクソ文化ないだろ、いいから早く返せ」



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