ショートコント③
『分別』
A「いやー、引越しの手伝いするのはいいんだけどさ、お前ちょっと部屋汚すぎだろ?」
B「そうかな?」
A「ほら、もう足の踏み場もないし……まずはちゃんと片付けて、要るものと要らないものを整理しないと」
B「分かった」
A「じゃあまず、この大量にある漫画は?これどうする?」
B「(指差す)要る」
A「はいはい、これは持って行くのね(箱に詰める)
…じゃあ次、この散らばった書類とかチラシは?これどうする?」
B「(指差す)燃えるゴミ」
A「はいはい、捨てていいのね(捨てる)
…じゃあ次、この転がってる乾電池は?これどうする?」
B「(指差す)燃えないゴミ」
A「はいはい、これも捨てていいのね(捨てる)」
B「……」
A「えーっと、じゃあ次は…」
B「燃やしたいゴミ」
A「…え?」
B「燃やしたいゴミ」
A「ん?何が…?」
B「(指差す)燃やしたいゴミ」
A「あー、俺の悪口言ってたのね、燃やさないで」
『伝令』
A「…あー!またフォアボールだ!何やってるんだよ田中!」
B「これで満塁か…マズいな」
A「ここでホームランが出たら一気に逆転されちゃいますよ!監督!」
B「うーん……よし、橋本、お前に伝令を頼む」
A「はい!どんな指示を伝えましょう?」
B「いや、田中は今、県大会決勝というプレッシャーで押し潰されそうになっている。
今必要なのは戦術的な指示ではなく、精神的な余裕だ。
だから橋本、お前はマウンドまで行き、試合とは関係のない話をしろ。
そうすることで田中も緊張が解け、冷静になれるはずだ」
A「おお、なるほど!分かりました!」
B「いいか?他愛もない日常の話をするんだぞ?」
A「はい!了解です!(走っていく)」
B「……」
A「…おい田中!あのー、あれだな!結婚して、離婚して、接骨院開業して、結婚して、接骨院閉鎖して、離婚して、接骨院開業して、結婚して、離婚して、接骨院閉鎖して、みたいな、そんな感じだよな!な!」
B「……」
A「…(走って帰ってくる)」
B「なあ橋本」
A「はい!」
B「お前なんでビッグダディの日常の話したんだ?」
A「分かりません!」
B「おお…」
『カレー』
A「俺はね、カレーが物凄く嫌いなんだよ」
B「マジで?」
A「もう、食べ物の中で一番嫌ってると言ってもいい」
B「珍しいね、あんなに美味しいのに」
A「いやいや、味とかじゃないのよ。美味いとか不味いとか、もうそんな次元の話じゃないのよ。カレーっていうのはね、常に過大評価され続けてるんだよ。みんな好きで当然みたいな、嫌いな人なんていないみたいな、そういうカレー側の傲慢な態度と、それに流される大衆が気に食わないのよ。寿司はいいよ?伝統もあるし、日本人の心っていうか、象徴みたいなところもあるし。しかも『俺、生ものダメなんすよ』的な層にも寛大というか、拒絶されても相手を許せる器の大きさみたいな物も感じる。それに対してカレーはどうよ?常に自分が正義みたいな顔して、合わない人間は即奇人扱い。事実お前もさっき俺に対して『珍しい』とか言ってたからね。あとあれだ、カツカレーを褒められた時、あいつ全部自分の手柄として受け取ってない?こっちが50%ずつのつもりで褒めてても、あいつの脳内で勝手に100:0に変換されてる気がして悔しくない?悔しいよね?たぶんあいつ、そんなに仲良くない人の家でも入った瞬間ソファーのド真ん中に座るタイプだぞ。まったく、ふざけんじゃないよ!(走り出す)」
B「ん?おい、どうしたの?」
A「ちょっと近くのココイチ行ってくる!」
B「おお、語りすぎてカレーの口になってる」