コント「夏祭り」
A「(入ってくる)おおー、なかなか盛り上がってるな。
ケンタ、こんな人混みで迷子になったら大変だから、お父さんから離れちゃダメだぞ?
よし、じゃあ好きな食べ物でも買ってゆっくり花火見ようか」
B「(屋台の前で手を叩く)金魚すくいー!金魚すくいー!金魚すくいやってますよー!」
A「…ん?どうしたケンタ?金魚すくいやりたいのか?」
B「おっ、ボク、挑戦してみるかい?(手招きする)」
A「ああ…呼ばれちゃった、じゃあやってみるか?(屋台に向かう)」
B「お客さんちょうどいい所に来たね」
A「え?」
B「実は今日、まだ1匹も持って行かれてないんだよ。
だからほら、大物がたくさん残ってるよ(水槽を指差す)」
A「おお、確かに凄いですね。
こんな大きい金魚が水槽いっぱいに。
でもこれだけ人が多いのにまだ1匹も捕まえられてないのか」
B「1回300円だけど、どう?やってみる?」
A「よし、じゃあケンタ、やってみようか(お金を払う)」
B「ボク、頑張ってね」
A「(しゃがむ)ケンタ、ポイが破れないように慎重にすくうんだぞ」
B「優しく、そーっとねー…」
A「上手にすくえたらお家で飼おうな」
B「うん、お家でねー、飼ってあげてねー…」
A「頑張れー」
B「水槽に入れてねー、水草とかと一緒にねー…」
A「さあ集中して」
B「エサとかあげて、掃除とかして、可愛がってねー…」
A「頑張ってー」
B「そしたらある日、急に動かなくなってねー…」
A「…え?」
B「水槽をコツコツ叩いてみても反応しなくてねー…」
A「いや、ちょっと」
B「昨日あげたエサも食べてなくてねー…」
A「おい…」
B「それで心配してしばらく様子見たりするんだけど、時間が経つと水面まで浮いてくるんだよねー…」
A「いや死をイメージさせてすくわれるの防ぐなよ!」
B「かわいそうだねー…」
A「最低だなあんた!」
B「死んだ後に浮かんでるやつと沈んでるやつがいるけど、あれは体内に残ったエサの量などで身体が腐敗するスピードに個体差が出るからそうなるんだねー…」
A「おい腐敗とか言うなよ!夏祭りで!」
B「腐敗が進むと体内にガスが溜まって浮力が生まれるんだねー…」
A「そんな想像したくないのよ!笑ってわたがしとか食べたいのよ!」
B「金魚の寿命ってねー、実は本来10年から15年ほどなんだねー…」
A「寿命の話もいいから!」
B「でもその割に金魚が死ぬ話ってよく聞くよねー?あれは環境の問題や金魚のストレスによって飼育下では本来の寿命より早く死んでしまうからなんだねー…」
A「罪悪感持たせようとするな!」
B「かわいそうだねー…」
A「やめろってそれ!この作戦のせいで今日1匹もすくわれてないんだな?」
B「それが今日だけじゃないんだよねー…」
A「え?」
B「屋台を始めてから7年、まだ誰にもすくわれてないんだよねー…」
A「7年!?」
B「うちはずっとオリジナルメンバーでやってるんだよねー…」
A「いや金魚のオリジナルメンバーって何だ、聞いたことないわ」
B「もう飼育下での平均寿命はとっくに超えてるんだよねー…」
A「だからこんなにデカいのがたくさん居たのか」
B「その辺のアイドルとかより全然絆固いからねー…」
A「魚類とアイドルを比べてやるなよ」
B「ほらボク、早くそこのセンターの子の命を紙切れですくい上げて…」
A「いやもういいもういい!」
B「え?」
A「そんな話されたらトラウマになるわ!ケンタ、もう金魚はいいから花火見に行こう!」
B「あー、金魚もいずれはあの消えかかった火花のように…」
A「だからやめろって!子供が泣いたらどうするんだよ!
ほらケンタ、(手を引こうとする)もう行こ………え?」
B「あー!」
A「…ちょっとケンタ、なんで笑いながら次々とすくい続けてるんだ…?」
B「わー!」
A「今の話怖くなかったのか…?」
B「うわー!」
A「おいケンタ…」
B「ぎゃー!オリジナルメンバーの卒業ラッシュだー!」
A「ああ…たくましいけど将来が心配だな…」