【先端技術】核融合発電
核融合発電(nuclear fusion power generation)は、太陽のエネルギー源である核融合反応を地球上で再現することで、大量のクリーンエネルギーを生み出す技術です。核融合発電は、化石燃料や温室効果ガスの排出を必要とせず、高レベル放射性廃棄物もほとんど出さないため、気候変動対策としても期待されています。また、原料となる重水素も海水に無尽蔵に存在するため枯渇の心配もありません。
核融合発電の実用化に向けては、世界中でさまざまな研究や実験が行われています。その中でも最大規模のプロジェクトが、フランスで建設中の国際核融合実験炉「ITER(イーター)」です。ITERは、世界7極35カ国が参加する国際協力プロジェクトで、2025年に稼働を目指しています。ITERでは、核融合反応に必要な高温・高圧状態を作り出すために、巨大なドーナツ型の装置「トカマク」を使用します。トカマク内部では、水素の同位体である重水素と三重水素を融合させてヘリウムを生成し、その際に放出されるエネルギーを利用します。
ITERの目標は、「点火」と呼ばれる状態を達成することです。点火とは、核融合反応によって生じたエネルギーが反応に必要なエネルギー以上になり、外部からの加熱なしに反応が自己維持されることです。点火が成功すれば、核融合発電の実現に大きく近づくことになります。
しかし、点火だけではまだ実用化には至りません。点火後には、「継続稼働」と呼ばれる段階があります。継続稼働とは、核融合反応を安定的に長時間行うことです。現在の技術では、核融合反応を数分間以上持続させることは困難です。 継続稼働を達成するためには、トカマクの制御や燃料供給などの技術的課題を解決する必要があります。
ITERでは、点火を2027年から2035年の間に達成し、その後2035年から2040年までに継続稼働を目指す予定です。 しかし、これらの目標はあくまでも予測であり、実際にはさまざまな困難や遅延が発生する可能性があります。
したがって、核融合発電の実用化はまだ先の話と言えます。一般的には2050年代以降と見られていますが、それも確実ではありません。 核融合発電は人類の夢であり挑戦でもあります。その夢を実現するためには、世界中の科学者や技術者が協力して研究や開発を進めることが必要です。