【死にたがりの男の子と生きるのが下手くそな男の子の話】
昔描こうと思って作った一次創作のプロットを思い出した。プロットを作って満足して、結局漫画にも小説にもならなかった物語です。そういうのが割といっぱいある。一次創作と言ってもなんか二次創作の焼き直しみたいなのが多くて、リアリティさもオリジナリティさもない。ただ自分の嗜好にはひどく忠実で、『読みたい』と思うものが多い。だからなのか、ふとした瞬間に思い出す。今回もそんな感じで唐突に思い出したので、記録しておこうかなと思い筆をとってみた。
プロット自体多分何処かに眠っているんだろうけど手元にはないので、うろ覚えの概要だけ。
物語の冒頭は、屋上から始まる。 高校の入学式を終えた一人の少年(Aとする)が屋上へ通じる扉を開けると、フェンス越しに空を見上げる少年(Bとする)と遭遇する。Bはフェンスをよじ登り、屋上から飛び降りようとする。Aは慌ててそれを止めようとフェンスにしがみ付くBをフェンスから引き剥がす。そんな二人の出会いから物語は始まる。
Aは養護施設出身で身寄りがなく、里親の元から高校に通っている。唯一の肉親であった姉はAが小学生の頃自殺している。Aは姉の自殺の理由が知りたくて、姉を知っている人の話が聞きたくて、姉の母校であった高校に入学した。 姉の自殺をきっかけに極端に感情の表出が乏しくなったAは誰にも迷惑をかけないようにと、優等生を演じるようになる。次第に孤独を募らせるが、それを表に出すことはなく、誰にも気付かれることはなかった。里親(老夫婦)はとても良い人間であり、高校を卒業したら養子縁組を組まないかと申し出るほどであった。しかしAは二人に上手く心を開けず、ぎこちない関係が続いている。
姉は生前、小学生のAに『一番怖いのは何か?』と質問することがあった。幼かったAはその問いに上手く答えることが出来ずに、姉はただ笑うだけだった。
その姉の怖いことは『忘れられてしまうこと』だった。
誰の記憶にも残らずに死ぬのが怖い、とAの姉は言っていた。にも関わらずAの姉は高校の卒業式の日に、屋上から一人で飛び降りた。しかもAの目の前で。後にAの姉は妊娠していたことが分かる。姉の死は妊娠を苦にしての自殺として処理された。お腹の子供の父親は誰かは結局分からず仕舞いだ。 Aは姉の言葉を反芻し、一番怖いことは何なのかを考え続ける。しかし答えは出ないまま、月日は流れて高校入学となった。
対するBは人懐っこい外見と振る舞いでクラスメイトとは、それなりに良好な関係を築いていた。しかし何処か孤独を好む雰囲気があり、一人で行動することも多く、猫のように気まぐれな性格の為クラスメイトはそんなBと程よく距離を取りながら関係を作っていた。誰とでも仲良く接することが出来るが、誰とも深い関係は結ばないB。クラスメイトも教師も家族でさえもBが死にたがっていることなんて知らる由はなかった。
Bはいわゆる私生児で腹違いの妹がいた。高校入学時に、母親が精神を患い長期入院となってからは父親の援助で生活している。父親や父親の家庭、妹との接点は殆どなくずっと一人で生活していた。(近所に身元引き受け人である遠縁がいる程度) 母親との閉ざされた暮らしの影響で、とても厭世的な傾向があり、誰にも心を許していないし許すつもりもない。そのせいか常に笑顔を浮かべ一見人懐っこく見えるが、誰も内側に立ち入らせることはなかった。さっさっと終わりに出来たらいいのに、といつも心の中では思っているそんな少年だった。
AとBはお互いが持っている『隙間』を何となく理解しており、奇妙な居心地の良さを感じて一定の距離を測りながらも距離を縮めていく。(ここがとにかく、一番書きたかったところ。ノートに二人の会話がびっしりと書いてあったように思う。二人はいつも屋上で、秘密の会話をしていたのだ)
二人の関係性とAの姉の死の謎を絡めた構成の物語を考えていた。 (その当時、ミステリ小説にハマっていたので、ミステリっぽい展開や構成を考えていたけどその時の力量では、結局プロットを完成させることが出来なかった)
漫画にしようと思っていたのか、キャラクターのビジュアルまで設定していたような気がする。でも書きたい台詞(二人の会話)は割と詳細に書いていたので小説向きかなとも思っていた。ただ当時は小説を書くスキルはなく頓挫したのだけれど。
もう少ししっかりとプロットを練れば、今なら書けるのかな? いつか最後まで書いてみたいです。
取り留めのない備忘録として。
(了)