蔵の陶器市 宮城県村田町

空の青さがなんとなく変わった。
秋なんだなと思う。
今年こそはと、昨年断念した村田町の陶器市に参戦してきた。
前日にサーバー落ちてた時は震えた。

私が陶器に狂い始めたのはいつだったか。
年数は分からないけれど、きっかけは青いマグカップだ。
青地に麦のような絵が描かれている。
母の友人の夫が作家だったという縁で母と陶器市に出向いた際に母が買ってくれた。
手にすると、重くもなく、軽くもないマグカップ。
何を飲むんだろうと考えて、ああ、この大きさ、本当ならば珈琲だろうが、この青ではきっと夏の麦茶が似合うのだろうなと思った。
その時から、自分の感性で器を選び、作家自身の狙いなどさておいて、器の声を心で聞いてみることにした。
あの瞬間から、私は頭がおかしい。

今回購入させて頂いた方は皆さんSNSのアカウントをお持ちで、時代を感じる。
私は某通販を深く信仰しているのだが、器だけは絶対に現地で買う。
目とPC画面なら、自分の目を信じる。
というか、結局自分の目を通じてしかそれを見ることができない。
今の私が陶器を選ぶ際に大切だと思うのは、肌触りだったり重みだったりとあるのだが…と、書き始めると止まらないのでこの記事では今回出会った素敵な作家さんたちをまとめるだけにする。がまん。

不毅窯 bukiyou

当日、平日だというのに人出の多さに戸惑いつつ、大まかに見てからじっくり回ろうと思った私の足を即座に引き留めたのがこちら。
三重県の作家・藪さんのbukiyou。
陶器に狂う人って色んな人種がいると思うのですが、私はこういう狂い方が好きです。
藪さんはご自身で「日常使いをメインとした」と紹介しているけど、日常でこの色や形を使うのは、まあ、なんというか、それなりに面倒くさい、食や器にこだわりのある人だろうなあと思います。
※心から褒めている

陶器市の現地ではオンラインショップに並んでいるものよりもっと飛んでいる皿、器がいくつもあり、どの器も良すぎて座り込んであれこれ手に取って悩んでおりましたところ、同じ形だが装飾の違うものを出して下さいました。
こういうのも現地の好きなところ。

購入したのは、どんぶり。
具沢山のラーメンは食べれないなあ、くらいの。
決め手は、帰って芋煮を作って食べようと思ったことです。
三重県で作られた器で東北の郷土料理を食べる、めちゃくちゃ良すぎる…。
所謂、エモ。
ということで、すかさず芋煮を食べました。
最高。

ルリアメ工房

次のタイミングで吸い寄せられたのはこちら。
なんだこの空気…というくらい、他のお店と違う空間でした。
息を吞む、美しさ。
この作家さんの作品ほど、オンラインで選んじゃダメな作品無いかも、と思うくらい、現物の質感がよいです。
恐ろしいくらい空気を震わせている。
陶器市故に、日の光に照らされたものと、日陰のものがあったのだけど、どちらにもパワーがあった。
日の光の下でも土の力を見せていたし、日陰では釉薬の美しさが言葉を失わせた。

オンラインで見るとおしゃれな人が使う、おしゃれな陶器に見えるんですけど、現物はどっしりとした質量というか、うん、そういう何かがある。
※決して重いというわけではない
佇まいというやつか、とにかく美しかった。
こういう記事なのでオンラインショップ貼ってしまうけど、器が好きな人はどうかどうか現地へ行ってくれ。
あの器たちに囲まれて呼吸してみてくれ。

購入したのはカップ。
帰宅して量ってみたところ、液量は150mlくらい。
今も隣に置いてる。へへっ
こちらのブース内でもしゃがみ込んであれこれ見ていたら酒井薫さんご本人にお声がけ頂きました。
瑠璃と飴とオリーブと茶と深茶があって、少しずつ色が違うんですよ~と。
…生意気なのですが。
「(その違いは)分かっています…」と心の中で答えておりました…。
分かっていて、そのどれもが最高に美しすぎて頭を抱えていますNOW!って感じでした。
前述したとおり、私は家にさわやかな青のマグがあるので、ここで青(瑠璃)は…と思いつつ、じゃあその隣のマグだと液量が少ないので普段使いしにくくなるのでは…と考え、いや、普段は珈琲の基準量多く感じているし小さくてもいいのでは…あ、いやこちらのカップだとオリーブの模様が一部薄くて茶にも見える…?ということは茶の気分の時とオリーブの気分の時に使える…一器二役…という考えを巡らせていました。
これが芸術(陶器)でダイス振ってSAN値減らして発狂した人の末路です。
ちな、今はこのカップで知覧茶飲んでます。
はい、優勝。

火音陶房

ここでこれまでに買ったことのない雰囲気の陶器を買いました。
可愛い。
とにかく、可愛い。
器を家に招くのではなく、器の中に招かれるような感覚。
ここはここで空気が違う。
陶器の中にストーリーがある。
ストーリーの中に陶器がある、のか?
普段なら、わッ!まぶしいッ!と逃げ帰りそうなものだが、その日の私は一味違ったのです。

ひな人形、シンデレラ、かぐや姫などをモチーフにして柔らかに描かれた皿が一段と目を引く。
その他、豆皿、鉢、箸置きなど、柔らかなタッチと鮮やかな色彩が並んでいた。
ファンシーな動物が描かれているものや、曖昧で解釈に余白のあるものも。

今回の陶器市、豆皿はどこかで買いたいと思っていたのでせっかくならばこんなに柔らかな雰囲気の、日々明るく寄り添ってくれそうな器だといいなと選び出したらキリがなくなって豆皿、小鉢、切立鉢とお迎えしました。
そして今、松下さんの作った小鉢にブランデー漬けの栗をのせております。
ころころとして本当にかわいらしい。
こちらの陶器も絶対、Instagramより現物の方がよさが伝わる。
Instagramの写真の美しさよりももっと皿の重みを感じてみてほしい。

ということで本日のおやつ。

知覧 ゆたかみどり

ブランデーマロン

現地に行くと、作家さんと直接お話ができるのが本当に心地良い。
以前、カレー皿を買ったときに、「これはカレー以外にも使っていいんだよ」と言われたことがあります。
もちろん、カレー皿だからカレーの時にしか活躍しない!なんてことは考えていなかったのですが、改めて、陶器だけでなく、あらゆる常識や固定観念に向き合う時、中身のないものは叩き割って自分らしく価値を求めたいなと思ったのでした。
例えば、自分はかわいい皿は使わない(使えない)ということじゃなくて、心が動いたものにまっすぐに素敵だと言える自分でいたいなあというやつです。
まとめが、まじめ。