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「日本語でいうと『ちび』という感じだ」

それから小さな犬がいる。ミクロっていう名前なんだと子供が教えてくれた。日本語でいうと「ちび」という感じだ。
― 出典: 雨天炎天 村上春樹 [80ページ] より


我が家に「ちび」が来て、もうすぐ10ヶ月が経つ。


ちびは、野良猫だった。私が通勤途中に拾った猫だ。より正確には「捕まえた」猫だ。

毎日毎晩鳴いていて、まだ小さな子猫で、周囲の人も手を焼いている様子で、これから本格的な冬で、うちで飼っている猫はひとりで寂しそうで……といういろんな状況を総合して「この子を保護しよう」と判断した。

正直あまり後先を考えてはいなかった。命が心配で居ても立っても居られなかったというのが大きい。

病院に連れていくと、こいつは小さいのに成猫だった。ただの栄養失調だったのだ。

性別は雌。耳カット(避妊済みの印)に獣医を含めて誰もが騙されたが、その後の発情行動から耳はただの傷だと気づいて、避妊手術も無事終えた。

・・・

名前を「ちび」にした。

もちろん、小さいから。

それと、さび柄の模様が気に入ったから「さび」を反転して「ちび」というこじつけ。

そもそも私は「ちび」とか「ぽち」とか「たま」とかいった類の、ちょっとおバカな名前の付け方が好きだ。動物をバカにしていると思われると残念だけど、愛嬌があってまるっこい印象で、いいなと思う。


でも「ちび」は日本にしかない名前だ。

と思っていたら冒頭の引用のように、ギリシャでは「ミクロ」というらしい。

きっとアメリカでは「タイニー」で、

メキシコでは「ペケーニョ」とか「チコ」とか……言う、のかも?

あ、女の子だから「ペケーニャ」「チカ」か。「ペケーニャ」も猫っぽくてなかなかいい。

そうやって世界各国の「ちび」呼びがあると思うと、ある意味「ちび」って世界で通用する名前だ。


日本では「ちび」、ギリシャに行ったら「ミクロ」と名前を飼えて暮らせばいい。

音は違うけれど意味は一緒なのだ。

名前の新しい概念だね。

・・・

ちなみにちびには長いこと触れなかった。触ろうとすると猛スピードで逃げるので、半年以上、私たち夫婦は一切触れることなくこいつを養っていた(ただし先住猫には最初から心を開いていた)。

が、先月から私の在宅時間が長くなって、昼間の寝ているタイミングでそーっと撫でることができるようになった。眠くて意識が朦朧としているところから徐々に慣らしていこう。

ちびは、道端で鳴いていた野良猫のとき、2キロと少しだった。

8ヶ月経って、4キロ以上に文字通り倍増した。成猫なのに!


この住処を自分の家だと思ってくれていると嬉しい。


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