才能と努力
今日は、(いつもだけど、)ぼやぼやした話です。
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King Gnuというバンドを、大学時代の友人に教えてもらって聴くようになった。「音校出身でめっちゃ流行ってるらしいよ」と。
最初にYoutubeでMVを観た時は正直そこまでピンとこなくて「なんだかオシャレだね」という感想だったけど、それより何より私たちにとってインパクトが大きかったのは「これは音校の人種じゃない!」だった。
このバンドの2人のボーカルは、東京芸大の音楽学部出身(一人は中退)とのこと。
教えてくれた友人も私たち夫婦も芸大の美術学部出身で、道路を挟んだ向こう側といはいえめちゃくちゃ狭い学校なので雰囲気はよく知っているつもりだ。音校、つまり音楽学部には「こんな人はいない」というのが、OBOGのほとんどが抱く感想だと思う。
こういうヒゲ生やして古着みたいな服着ている人は、美校(美術学部)にしかいないと思っていた。作っている音楽も含め、その雰囲気が衝撃的だった。
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うるさくて暗い音楽が嫌いな自分にとって、King Gnuは最初イマイチしっくりこなかったのだが、聴いているうちに、オフショットの陽気なキャラも相まってだんだん好きになっていった。
これまで聴いたどのジャンルとも少し違う曲作り、いいなと思ったし、クラシックというバックグラウンドを持ちながら自分の幅を広げていくスタイルに感心もした。
何より、全楽曲の作詞作曲とMVプロデュースなどを手掛けている常田さん(年下だけどなんとなくさん付けになる)は凄い。
音楽業界のことに詳しくないけれど、これだけテンポよく良曲を生み出せるのって凄いのだろうし、世界観もおそらく彼がイメージして構築しているのだろう、そこかしこで見せる頭の良さ、歌、風貌、落ち着き。ホントに27歳かよ。
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天は二物も三物も与えるのか。
と言いたいところだけど、そうではないと思う。いや、そうなんだろうけど、それだけじゃないと思う。
私はこの大学で、大学にしては母数の極端に少ないこの大学でたくさんの芸術家の卵と出会って、たくさんの才能ある人を現在進行形で目撃し続けている。
きっとここに来なければ知り得なかった事実……それは、彼らの努力だ。
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同学年のデザイン科にシシちゃんという女の子がいた。たぶん喋ったことはないし向こうからは知られてないだろうけど、友達の友達でほぼ全員に行き着くような人数だったから、勝手に知ってた。
在学中から超有名企業の広告を手掛けるような売れっ子で、真っ直ぐにどんどん大きくなっていくのを遠くから見ていた。
そんな彼女は学生時代、毎日1枚異なるデザインのマスク(仮面)を作って自分のサイトにアップしていた。1日に1枚、毎日。学校の課題もこなしながら。それは並大抵のことではない。(ちなみに卒業制作はまた別の作品だった。)
私は、その努力の凄さにうすうす気づいていながら、センスのある彼女は「自分と土台が違う人だ」と言い聞かせ続けた。
……と書こうと思ってシシちゃんのサイトを久しぶりに検索したら、なんと2019年9月現在も1日に1枚のマスクを作成し、アップしていた。卒業してから何年だろう。5年?6年?一体通算何枚作ったんだ?
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いつも、打ちのめされる。
天才に才能があるというのは確かだ。でも彼らは、本当に万に一つの例外もなく、努力している。むしろそれ自体が才能の一つだ。
遠くにいる天才の努力は目に見えない。スポーツ選手とか、俳優とか、輝かしい部分だけを切り取って見ていると「すごいなぁ」としか思えない。
でも周りに、才能があってなおかつ努力し続けている人たちがわんさかいる。飽くることない反復と、折れない精神力と。時々まぶしすぎて両手で目を覆いたくなるぐらい、彼ら彼女らの努力は、強い。
それに比べて自分なんて、継続も数量もすぐに意味がない気がしてしまって、自分には向いてないとか苦手とか言い出して、尻切れトンボばかりだ。カッコ悪い。
比較して、嫌になって……。
でも、負けたくない。まだ諦めたくない。天才じゃなくてもいいから、何かを成し遂げたい。そこに戻る。
みんな素顔では面白くて優しくて温かい普通のいい人ばかり。負けん気と努力を心の芯に隠して、今日も何気ない顔でサラッと作品を発表する。
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だから私は、King Gnuをただ単に「すごいな、天才なんだな」と思って眺めていることができない。
努力の跡が見える。考えて、学んで、感じて、訓練しているということが。
天才なんて、いない。
……というようなことをとってもわかりやすく話しているユーチューバーさんがいたので、貼っておきます。(ちょっとクセが強いけど好き)
あ、肝心のKing Gnuも貼っておきますね。この曲が今は好きです。