加熱講座20 圧力鍋の実像
圧力鍋は、その特性を正しく理解すれば、大変重宝なお鍋です。 ところが、最近では「手早く調理できる」という宣伝文句が先走ってしまい、 しばしば誤解を招いているように思います。 そこで、圧力鍋のしくみを整理してみます。 鍋内の気圧を上げて、沸点(沸騰する温度)を高くします。 通常の1気圧のもとでは、沸点は100度ですが、圧力鍋内だと120度以上の温度を実現できます。 この高温が早く調理することにはつながります。
かたや、100度以上の高温は、栄養価や旨みを損なう要素があります。 玄米や豆類などを除けば、食材が美味しくなる適温は70~90度であり100度以下です。 ですから、適温の低い野菜などは、沸騰したらすぐに火を止めて、余熱(蒸らし)で調理すると良いでしょう。 なお、火を止めてから約20分間は、鍋内は100度以上を保ち続けますので、 この長時間の余熱を有効に利用すれば、省エネにもつながります。 茹でる、蒸すも、ぐつぐつと沸騰を続ける必要はありません。
そして、カレーやシチューなどで、いろんな具が混じるものは注意が必要です。 基本的に、同じ火力と同じ時間で熱が通るように、同じ食材は均等に切り揃えておきます。 そして、火の通りにくい具を取り出して、圧力鍋で事前に火を通しておきます。 火の通りやすいものは、圧力をかける必要はありません。かえって、煮崩れてしまいます。 このように、火の通り具合を考えながら、火の通りにくいものにだけ、下ごしらえとして圧力鍋を役立てます。
適温を考慮して、圧力鍋を正しく理解すれば、圧力鍋の活躍の場が見えてきます。 特に玄米は、短時間で美味しく調理できておすすめです。 また、乾燥豆類なども短時間に熱が通ります。 そして、スネ肉のような硬いお肉、角煮などの厚いお肉、丸ごとの鶏肉などの熱が通りにくいものには 有効でしょう。加えて、いわしなどを骨まで軟らかくしてしまう調理に好まれています。 また、沸騰後に火を止めても、しばらく鍋内は100度以上を保つので、省エネ調理が実現します。