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加熱講座21 適温調理

早稲田大学理工学部教授であった小林寛(ひろし)さんが開発した 円筒形のスカートをはかせた「はかせ鍋」は、適温調理を推奨しています。 お料理は、その食材の適温(最適な温度)で調理することで美味しくなる。 そこで、小林さんは、実験に実験を繰り返して、食材ごとの適温と加熱時間をつきとめます。 その時に、記録をとることの重要性も語っています。 ただ、このお鍋は製造終了となっていますが、今日も料理の科学を学ぶことができます。

今や幻のはかせ鍋は、沸騰後に火を止めて、スカートをはかせることにより、 1時間後でも80度弱を維持できる設計となっています。

はかせ鍋の説明書では「多くの料理は、85~90度で20分以上おけば完全に火が通ります。 ただし、豆や米などの穀類は98度以上でかなりの時間煮る必要があります。」 すなわち、穀類を除くほとんどの料理は、100度未満。 なお、油を使う焼く、炒める、揚げる調理では、表面のみは180度でカリッと焼き固めますが、 その内部は同じく75度前後の温度が適温となります。 ステーキなども、内部は固めず、肉汁が滴るジューシーな仕上がりが理想です。

さて、食材ごとに適温と調理時間は違いますので、食材が混在している場合は、 最終的に同じ時間に仕上がるように工夫します。 また、同じ食材は、同じサイズに切り揃えます。 小林さんによると、寸法が2倍になれば、熱の通りに要する時間は、その2乗で4倍かかる。 熱を通りやすくするためには、小さく薄く切ることです。 魚一匹丸ごとに熱を加わえる場合、中央部は肉厚があり時間がかかりますが、 頭や尾は肉厚がないので、比較的すぐに火が通ります。

また、焼き物と同じように、大きなものや厚みのあるものは、表面温度と内部温度を分けて考えます。 表面は早く火が通り、内部は火が通りにくくなります。 内部まで火を通すためには、弱火でゆっくりと温める。この時、「はかせ鍋」なら火を止めて調理します。 また、厚手鍋の理も分かります。かたや、強火で沸騰させ続けると、芯まで熱が通った時には、 表面は加熱が過ぎて、煮崩れのような状態となります。 このように、料理とは、適温を主眼に加熱することです。