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【大学受験】日東駒専レベルと一般入試の壁 ― 教育ボランティア経験者の視点(2)



筆者について

国立理系大学院修了(情報科学)。東京在住であった際、高校生相手の大学受験指導の教育ボランティアとして活動した経験をもつ。

ボランティア活動において英語・数学・物理等の科目の指導および定期テスト対策の指導等を担当した。


教育ボランティアになろうとする人達へ

教育ボランティアとして活動を始めたての人たちは、どうしても指導する生徒に対して大きな期待を抱いてしまいがちである。

特に教育ボランティアとして活動しようとする人は多くが学力に自信を持っている人たちのはずで、それなりに高学歴の人たちが多いものと推察される。

自分が指導を頑張れば、あるいは子どもたちに努力してもらいさえすれば、きっと「日東駒専」くらいのレベルの大学なら入れるのではないか ― 

こうした幻想を抱くボランティア志望者が多いし、自分自身もそのような考えを持っていた。しかし、残念ながらそれほど大学受験指導は甘くない。


高い日東駒専レベルの壁

自分の高校生相手の教育ボランティア活動の経験にはなるが、日東駒専相当かそれ以上のレベルの大学に入れたのは体感でたったの2割ほどである

MARCHに落ち、日東駒専や大東亜帝国にも落ち、立正大・大正大・目白大・東京未来大学といったなんとも言えない微妙な大学群になんとか引っかかるという事例があまりにも多かった。

無料塾にやってくる生徒たちは基本的に低所得家庭が中心だから、自分が指導した生徒たちの学力水準で言えば真ん中かもしくは中の下といったレベルの子たちが多かったという事情はあるかもしれない。

偏差値50前後の中堅レベルの高校では日東駒専レベルの指定校推薦枠が少なく、MARCHレベルに至っては枠すらないことがある。

そのわずかな有名大の枠さえも成績最上位層がかっさらっていくという事情もあり、よほど成績が良い子どもでもなければ日東駒専レベルに入るには一般入試の受験が必要になる。


一般入試の壁

まずボランティアで指導をしていて思うのは、大学受験の一般入試に耐えうるだけの知的能力や忍耐力をもった生徒の数は思った以上に少ないということである。

特に、英語が仕上がっていない事例が多く、中学レベルの文法知識や英単語が十分に身に付いていないために大きく不利になっているのである。特に高3になってからでは、本人が自覚をもって相当頑張らないと遅れを取り戻せない。

早期段階での英語学習が重要であるということは以下の記事にも書いているところである。


だが、無料塾にやってくる生徒たちはかなりのんびりしており、日々の学習習慣が欠けていることが多い。大抵は高校の数学や理科についていけず、必然的に文系選択になっていることがほとんどだ。

全体的に自分のキャリアに対する危機感が薄く、大学受験前の高3の夏休みに近づいてやっとエンジンがかかるといった具合である。下手をすると、夏休みが始まってもまったく受験に向けて動いていないケースもある。

大学受験に挑む生徒たち自身にあまり危機感がないのに、むしろ指導するボランティア側の方が危機感をもって動いているという何とも皮肉な状況をよく目にした。

根気強く学習スケジュールを提案して受験対策をするように指導しても、あまり真面目に取り組まない(努力が続かない)生徒が相当数おり、最終的に受験すると第1~3志望くらいまで全落ちというのも珍しくなかった。

数学や理科ができないのはもちろん、英語も中途半端で、他の文系2科目も大して仕上げきれないまま受験に挑んでいるのだから不合格になるのは必然である。

難関大を目指す進学校の生徒たちであれば、大学受験を意識して高3のはじめか早ければ高2の後半ぐらいから動き始めるものだが、そんな「デキる」子たちとは比べるべくもない。

また生徒自身が通っている高校のレベルと合格可能な大学のレベルにはかなり強い相関があり、中堅~下位高から難関大への合格という大逆転はまず起きない。

日東駒専レベルの大学の一般入試を受けて合格ラインまで持っていける生徒というのは本当に少ないということを痛感させられる。


指定校推薦が取れなければFラン行きの危機

これまで述べたように、残念ながら無料塾に来る生徒たちの多くは、長丁場の大学受験勉強に耐えるだけの素養がないと言わざるを得ない。

このような現状では、教育支援にやってくる中堅~下位高に通う生徒たちがそれなりの大学に入る確度の高い方法はもはや指定校推薦しかない。

どう考えても一般入試では厳しい生徒でも、不思議と学校の成績だけはいいケースがあり、大東亜帝国レベルの大学であれば指定校推薦を取れることがある。こうした事例は定期テスト前(だけ)は真面目に勉強する女子に多い。

しかし、定期テスト対策すらちゃんとやっておらず学校の成績が確保出来ていないような生徒では大東亜帝国レベルも難しく、Fラン大学行きもありうる。

指定校推薦が取れるほどでない場合は、総合型入試(AO)というあまりテストを受けなくて済む受験形態に逃げるという手もある。しかし、有名校では倍率が高いのでうまくいく事例は少ない。

いま総合型入試(AO)が全盛となっているのは、大学受験のための地道な勉強はイヤだけど、大学生というモラトリアム期間を享受したい子どもたちが世の中に山ほどいるという現実を反映していると言えよう。

結局のところ、多くの生徒にとっては下手に大学受験の勉強をさせるよりも、無理に上のレベルを目指さず、指定校推薦のために学校の定期テストで成績を稼がせるほうがまだマシな大学に行ける可能性が高まるという、なんとも救いのない状況になっているのである。


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