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低所得家庭の大学進学と夜間大学を考えてみる



修学支援新制度を活用する

低所得家庭が大学進学するにはどうすればいいだろうか?となったとき、まず真っ先に利用を考えるべきなのは最近できたこの制度だろう。

高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)

給付型奨学金の支給額(学費とは別個の支給)
授業料・入学金の支給額

※高等教育の修学支援新制度について(高校生向けリーフレット)より引用
https://www.mext.go.jp/content/20240422-mxt_gakushi01-100001062-01koukou.pdf

本来であれば経済的に大学進学が難しい家庭、とくに住民税免除の家庭であるような場合は大部分の学費を出してもらえる。

国立大学であれば入学金・授業料分はほぼ全額カバーされるし、さらに自宅外通学の場合は家賃相当額の奨学金も出るので金銭的な心配はかなり小さくなる。ただし、生活費を稼ぐためのバイトは必要であることに注意が必要だ。

とはいえ、誰でもこの支援を受けられるというわけではもちろんない。少なくとも学校の平均評定の基準を満たさなければならないからだ。具体的には、5段階評価で3.5以上が必要である。

修学支援新制度の申込基準


学力問題を埋める夜間大学の存在

問題となるのは、こうした家庭の出身者では学費の安い国公立大学に進学できる学力を持った生徒は極めてまれだという点だ。塾・予備校通いをしていないことも多く、どうしても受験対策で後れを取ってしまうからだ。

国公立大学に入れないのであれば必然的に私大を選択することになるわけだが、上の修学支援制度を使っても年々高騰する私大の学費を支払うにはどうしても数十万単位の不足額が生じる。

しかし、それでも修学支援制度を活かして大学に行く方法はある。それは『大学の夜間学部に通う』という選択肢だ。

夜間であれば入試のハードルは下がるし、私立大学であっても学費が割安に設定されているため、国立大学並みかそれよりも安い学費の支払いで済む。

私立大学夜間の授業料ランキング(下記リンクより抜粋)


国公立・私立ともにどのような大学があるかも見てみよう。

国公立大学の一般選抜比率(※大学ジャーナル記事より引用)
私立大学の一般選抜比率(※大学ジャーナル記事より引用)


普通と比べれば入学難易度は低くなるし、先ほどの「修学支援制度」を使えば、支払いは最小限に抑えられるはずだ。昼間の時間が空くことでアルバイト・仕事の選択の幅も増やせる。

学力面で多少遅れをとっていたとしても、本気で大学に進学したい層にとって夜間大学への進学はメリットの大きい選択肢なのだ。

今では通信制大学という選択肢も一般化してきているが、やはり通学制の大学ほど学べる分野の選択肢は広くないし、就職を意識するとなかなか厳しい面もあるのでまだまだ夜間が必要な局面というのは残るだろう。

勤労学生と夜間学部の減少

とは言え、この少子化のあおりを受けて夜間大学も軒並み縮小・廃止に向かっている。

2010年以前では、以下の夜間課程が廃止されている。

『夜間(二部)の過去の物語』の記載より

さらに、最近の2020年度以降だけでも以下が廃止になっている。

廃止された夜間部について(※大学ジャーナル記事より引用)

かつて大学進学率が低かった昭和の時代は、有名私大でも二部(夜間学部)を設置しているところが多かった。早稲田はもちろんMARCHでも二部が存在していたが、現在はそれらのほとんどが廃止されてしまった。

もともとは勤労学生に対して学ぶ場を与えるためのものだったのが、勤労学生自体が少なくなったうえ、大学名欲しさに入学する学生が主体になっていたので無理からぬことではあったのだが。

それでも、夜間大学の選択肢はまだまだ十分に残されていると言える。

筆者が注目する夜間大学課程

東京理科大学・理学部二部(私立)

言わずと知れた夜間の有名どころ。夜間の工学部はいくつかあるが、理学部は国内でここにしか存在しない。

公式HP
https://dept.tus.ac.jp/sc2/

理科大第二部公式HPトップ


理学部二部から一部への転部を狙うこともできるが、理学部だけあって講義のレベルが高く、転部狙いで入った人たちのほとんどは転部に成功しないというのがお約束のようだ。

さらに講義のレベルに比して入学基準が比較的低いために、脱落者が多く結果として中退率も高いことがよく知られている。ギリギリ一般入試で合格くらいのレベル感の人が、『東京理科大学』の大学名欲しさだけで入学するのは危険かもしれない。

とは言え、キャンパスは飯田橋にあるため立地は良好。都心部にある大学でありながら学費も廉価に抑えられている。高校生・浪人生に限らず、物理や数学を本格的に学びたい社会人や教員狙いの人も入学してきている印象だ。

二部に入って一部に転部出来なかったとしても、4年間をやり通せればかなりの力になるのではないだろうか。この間に着実に力をつけて大学院受験でもっと上のレベルの大学(大学院)を目指すことも可能だろう。

福岡大学・商学部第二部 (私立)

筆者が九州(熊本)在住だから、というわけではないが福岡大学の存在をここで挙げておきたい。

学費が低廉で国立大学よりも安いことに加えて、「会計専門職プログラム」を設定している。このプログラムでは公認会計士や税理士といった難関資格への合格を目指すプログラムである。二部とは言え、非常に野心的な目標を設置していることに非常に感心した。

https://www.fukuoka-u.ac.jp/education/undergraduate/commerce/accounts/


大学入試のときにはさほどではないレベルだったとしても、大学に入ってから本気で勉強をやる気があるような人にとっては十分な成長が期待できる場所ではないだろうか。

まとめ

中堅の私大では、まだまだ夜間学部が残っている大学も多い。入学難易度的にもこのあたりがねらい目だろう。ただし大学のネームバリュー目当てにはならないと思われる。

国公立に関しては、地方を中心に細々と夜間が残っているような状態であるため、東京や大阪といった便利な都市圏の夜間課程は非常に数が少ない。入試難易度も比較的高いので学力も要求される。

早稲田大学や明治大学の夜間が廃止された今となっては、さすがに夜間でも一流大学に入学!というようなことはできなくなったが、本当に勉強したい人にとっての道はまだまだ残されているのでいろいろな人に検討してもらいたい選択肢である。

参考リンク

https://korekarashinro.jp/special/consult/night_ac/

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