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TOEFL iBTにみる日本人の英語力

自著の英語学習本から一部本文抜粋の上、加筆しました。


TOEFLとは

ETS(Educational Testing Service)は、アメリカのニュージャージー州に本拠を置く1947年設立の非営利機関である。

古くからアメリカ国内の大学・大学院の進学希望者向けにSAT・GREといった試験を主催しており、TOEFLは1964年時点で開始している。日本でおなじみとなったTOEICを実施しているのもここである。

以前は外国人向けにはTOEFLしか存在しなかったが、TOEFLは日本の学習者にとって難易度が高すぎた。そのため、レベルを落としたノンネイティブ向けの試験としてTOEICが生まれたのである。

つまりTOEICという試験は、英語が苦手でTOEFLを活用できるレベルになかった日本人に合わせて生まれたようなものなのである。

TOEIC® Program誕生秘話

北岡は挫けることなく、何度もETSを訪ねました。当初ETSは、「英語を母語としない人たちを対象とするテストは、既にTOEFL®テストがあるのだから、新たにテストを作る必要はない」という姿勢をとっていましたが、北岡の言葉に次第に耳を傾けるようになり、77年9月、ようやく正式に交渉がスタートしました。

TOEIC® Program誕生秘話より抜粋


日本のTOEFL iBTスコアの現在位置

一貫して日本の位置は低い。日本・タジキスタン・ラオスの3ヵ国についてはTOEFL平均スコアで80点を超えた年がなく、アジア地域での最下位グループが定位置となっている。

2013-2023にかけてのアジア諸国のTOEFL iBTスコア推移(※筆者作成)

近年ではアジア各国とも英語教育の拡充が進んだことにより平均スコアは上昇傾向にある。2013年時点と比べると平均スコアが80点を超える国々が多数となり、アジア地域内の英語学習者のレベルが急激に上昇していると言える。

ちなみに、2015年時点でのTOEFL iBTスコアの推移は以下の図のようになっていた。ここ10年余りで各国とも着実にレベルが上がっていることがよくわかる。

2005-2015にかけてのアジア諸国のTOEFL iBTスコア推移


TOEIC L&RとTOEFL iBTスコアの対応

TOEIC L&Rでスコアを取れるからと言ってTOEFL iBTでも納得の行くスコアが取れるとは限らない。むしろ、思い描いたようなスコアが取れないことのほうが圧倒的に多い。

TOEICとTOEFLの難易度の差は想像以上で、とくにTOEICを上がって初めてTOEFLの受験を経験した人はかなり大きな壁を感じることだろう。

TOEFL iBTは難易度が高いことに加えて、試験形式への「慣れ」によってスコアが上がるという側面があり、高いスコアを取る人達は出願前に何回も受験を重ねて目標とするスコアに到達することが多い。

アゴス・ジャパンという海外留学対策の予備校があるが、ここがまとめたデータにもそれがよく現れているので紹介しておこう。

TOEICスコアとTOEFL iBT初回受験スコアの対応(※アゴス・ジャパンのデータより筆者作成)
TOEICスコアとTOEFL iBT初回受験スコア(各セクション)の対応

TOEIC L&R 900に届かないようなレベルだと初回受験でスコア70にも届かないことがわかる。

TOEIC L&R 900-945の人でようやくTOEFL iBT平均スコアは73.0となるが、このレベルであっても世界の平均的な水準には届かない。2015年時点では世界全体の平均点は83点、2023年では全体の平均点は88点である。

いずれにせよ日本の英語レベルは世界の標準的なレベルから大きく遅れを取っているということは否定できない。また北米の有名大学・大学院の多くはTOEFL iBTスコアの合格基準点は90~100に設定されており、これを下回るようなスコアでは海外大学出願したとて合格はおぼつかないことだろう。


日本人の英語学習者の現在地と今後

開発途上国では、TOEFL iBTの高額な受験料を負担できる比較的裕福な家庭の子息が多いと考えられるため、一般的家庭に生まれた日本人の英語力との単純比較はできない。

しかし、英語が苦手という日本人のイメージはTOEFL平均スコアに現れてしまっており、留学志望者の中で日本人の平均的英語力は他国の受験者と比べて見劣りしている。

これらは日本にとって不都合な真実にも見えるが、同じ東アジア地域で非英語圏の中国・韓国・台湾といった国々の受験者であっても一定のスコアが取れている。

つまり個人レベルでは学習を通してスコア向上の余地があるとも解釈できる。実際、継続的な学習で世界平均を上回ることは十分に可能である。

今の日本人の英語学習者にとって必要なことは、まず今の日本人の英語力の現状を知り危機感を持つこと、そして個々人が慢心することなく日々の英語学習に取り組むことと言えるだろう。


TOEFL iBT向けの参考書

正直なところ、TOEIC L&Rほどに細かな試験対策法を教えてくれる参考書のようなものはない。地道に単語を覚え、リスニング教材をやりこみ、問題演習を重ねスコアを上げていく・・・といった王道に沿ってやるしかない。

次に筆者自身が使った経験のある参考書を挙げておく。
(※筆者注: Amazonアフィリエイトはありません)

もしも上記の教材ではレベルが高すぎる、あるいはTOEICでもスコアが十分に取れない、といった状況なら以下の本をやってみるのもよいだろう。


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