見出し画像

9.「掻いちゃダメ」神話を覆す、魔法の言葉

これから書く方法は脱ステロイドを行っている人にとっては「なるほど!」と思える内容だが、行っていない人にとっては途中までしか参考にならない情報かもしれません。

アトピーの常識をまたも覆す内容ですが、一部の人には参考にならないことの断りをあらかじめ入れさせていただきます。

アトピーの神話には『かいてはいけない』『かゆみを我慢しろ』『叩け・つねれ』というものがあります。僕も子供の頃から散々親や友人学校の先輩にこう言われてきました。

「かくから痒くなるんだよ」
「かいたら悪化するよ?我慢しなさい」
「どうしても痒くなったのなら、叩きなさい」

もう言霊のように会う人会う人に言われ続けてきたので、何度これらの言葉を聞かされ続けたかわかりません。それらはあたかも真実のように伝えられてきたのです。

実際のところどうなのだろう?と思い調べてみたことがありますが、割と多くの情報に触れてもこのように書いてあることが多かったです。

掻くことで刺激され、さらなる痒みを誘発する。だから掻かないように。
それはわかる。実際にその通りだと思います。

この耐えられないほどの痒みをどう我慢すればいいのでしょう。
アトピーではない人や湿疹がわずかしか出ていないという人なら我慢できるというのもわからなくはないです。

ですが、僕のように全身重度のアトピーはそれとは比べ物にならないくらい痒いのです。

一度痒くなったら発作的に2時間全身をくまなく掻き続ける苦しみを知っていますか?
あまりに痒すぎて全力で皮膚を掻く痛みと苦しみはわかりますか?
常人では絶対にこのような行為は痛すぎてできません。それを超える痒さだとわかっていますか?

と小一時間問い詰めたくなります。
…話を戻しましょう。

そこでどうしようもなくなったときの最終手段。
『かゆい場所を叩く・つねる』が登場するわけですね。

実をいうと僕の愛すべき息子は現在4歳(2020年執筆時現在)になるのですが、アトピー性皮膚炎を患っています。僕と同じように脱ステロイドを行い、脱保湿で日々自己治癒力を高めている最中です。

開始した時期は2019年12月末からなので、まだ4か月と期間は浅いにもかかわらず、さすが子供。新陳代謝が良いのですね。

僕よりも早く完治するのではないかと思わせるほどの回復力を見せてくれています。素晴らしい。

ですが、手足の関節はただれてしまうこともあるほどにかき崩してしまうことも少なくありません。そんな息子を不憫に思った人がどこからか仕入れてきた情報をもとにこう言ったのだと思います。

「かゆくなったら、叩くのよ」

息子は僕や妻が教えたわけでもないのに、かゆくなった患部をぺちぺちと叩くようになっていました。

息子に何をやってるの?と聞くと、「たたくといいんだよ」という息子。

その言葉を聞いて僕はすぐさま「叩かなくいいんだよ」とその行為をやめさせました。

「でも、かゆいんだよ」と息子は訴えかけてきます。

そこで僕はこう言いました。
「いいかい?かゆいときはね…」

かゆいときに叩くという誤った真実

僕の経験則から言わせてもらうとかゆいときに叩くというのはまったくもって論外だと強く言いたいです。叩いて痛みを与えれば、かゆみが和らぐということなのだと思います。

ですが、非常にナンセンス!
叩いた瞬間はいいかもしれません。

しかし、叩いたことによる刺激でさらなるかゆみを誘発してしまうのです。
さらに顔を強く叩いてしまうと白内障や網膜剥離、失明といった被害を及ぼしかねないリスクも伴います。つまり、叩いていいことなど全くないのです。

しかし、「掻くから痒くなる」、「掻くと悪化する」という神話が解決したわけではありません。残念ながら、これらは事実です。

しかし、絶対的に間違っていることがひとつあります。

「わかっていたって我慢できるもんじゃねえんだバカ野郎」

です。

大体かくな我慢しろと言ってくるのは、アトピーになったことのない人が言うセリフ。アトピーのかゆさがどの程度のものなのかも知らずに語るんじゃないと声を大にして言いたい。

はっきり言ってできるのなら、とっくのとうにやっている。
それが出来ていれば、何一つ苦労などしていないのだよ!

以上!という話なのです(本日2回目です)。

掻いちゃダメという話は合っています。
ですが、それは机上の空論に過ぎません。
理屈では合っていますが、実際には何の役にも立たないアドバイスです。

つまり、我慢しなさいという神話。これは全く役に立ちません。
では、具体的にどのように対策をしていけばよいのでしょうか。

アトピー患者がかゆい時に行う対処法をこれから3つご紹介します。

かゆいときに行う本当の対処法

まず一つ目、呼吸を意識する。

我々が夢中になって掻いているとき、実は呼吸が浅くなってしまっていることにお気づきでしょうか。これにより自律神経に乱れが生じ、交感神経が活発となってしまうということがわかっています。

するとイライラし始め、それに伴いかゆみも激しさを増してくるのです。
そして、痒いから掻き、イライラし、また掻き…という負のスパイラルに直面してしまい痒さが爆発します。

呼吸が浅くなっていると感じたら、すぐさま目を閉じ、ゆっくりと深呼吸することを意識してみてください。それでもかゆみは続きますが、副交感神経が優位になることでいくらかのかゆみを軽減させることが出来るようになります。

目を閉じてゆっくりと呼吸を行う。かゆいなと感じたら、より強くゆっくりと呼吸することに意識を集中させる。うまく実践することもできないときもありますが、意識するだけでだいぶ変わります。

では、二つ目、患部を冷やす。

かゆみというのは炎症反応から引き起こされると言われています。
つまり、原理は単純でかゆみを誘発している箇所を冷やしてあげることで、炎症を抑えることが出来るというわけです。

確かにこの方法を行えばかゆみが収まってくることが実感できると思います。しかし、この方法は一時的であることが多いのが残念なところ。

というのも、患部にアイスノンなどを当てている間は収まるのですが、取るとまたかゆみが襲ってくるからです。

それでも、強烈にかゆい時には効果的なので緊急的な処置として試してみてください。何度もあてがうことでその場をじっと耐えしのぐことが出来ます。

この時も患部を冷やしながら、呼吸を意識してあげるとより効果を上げることが出来るので、合わせて行ってみてください。

ただ、一点だけ注意しなくてはならないことがあります。
それはけっこう寒いということ。

体調を崩さない程度に冷やしてくださいね。

そして、三つ目。これが実に衝撃的な方法というか考え方です。

正直一つ目と二つ目の対策を行っても、痒さに耐えられないことがほとんどかと思います。それ程強い痒みですから対処的に処置を行っても役に立たないこともしばしば。

わが子にも真っ先に言うのがこの方法で、今回伝えたかった内容でもあります。

ですがこれは脱ステロイドを行って、自己治癒力を高めている場合にのみ有効な手段かもしれません。

僕は子供がかゆくて叩こうとするとこう言うようにしています。

「いいかい?かゆいときはね…掻いていいんだよ」

三つ目の方法、それは我慢せずに掻くです。
掻くな、我慢せよという神話と真っ向から対立する方法に驚きましたよね。

ですが、あの地獄のようなかゆみを我慢できたことがありますか。

僕個人のことで言えば、記憶する限りではほぼありません。
脱ステロイドを行ってからリバウンド症状による強烈なかゆみに耐えられたことなどそれこそ一度もありません。

当然掻くと悪化することや不快感を伴うことは承知しています。
ですので、僕も痒くても我慢するようにしていました。

ですが、朝我慢できたとしても結局夕方に掻いたり、寝ながら掻いたり、翌日掻いたり。とどこかで必ず掻いてしまうのです。

そして、我慢すればしただけ掻いてしまった後の自己嫌悪はとても大きくのしかかってきます。結局そこにたどり着いてしまうのだから、初っ端から掻いてストレスを溜めないようにしましょう。

掻かないでいると痒みは永遠に発生しています。
ですが、掻いた後は痒みから解放されているのです。

もちろん掻き壊して痛いこともしょっちゅうあります。
やっちゃったーーーと泣きそうになることもしゅっちゅうあります。

でも、いいのです。
痒み自体はなくなりますから。我慢してても絶対そこにたどり着きますから。だから、思う存分掻いてスッキリしましょう。

そんなことをしたら、悪化するのでは?!
僕もそう思っていました。

しかし脱ステロイドを行って、自己治癒力が高まってくると掻いた以上に皮膚は回復していき、さらに強い肌となってくることが実感できるようになるかと思います。

非常に残念ですが、脱ステロイドのアトピー治療では常に破壊し続けながら、回復へと向かうのです。

実際に脱ステを行ってから計210日以上が経過しましたが、僕は今でも2時間以上掻いている日もあります(2020年執筆時現在)。

掻き壊した回数など数えきれないほどだし、未だにひどい患部はかきすぎて皮がめくれ、あたり一面かさぶたが出来る状況です。

落屑も山のように積もることも少なくありませんでした。
ですが、そんな状態になっていても日々肌は再生し続け、回復に向かっているのです。

皮膚を観察すると少し前よりもかさぶたになる範囲が狭くなっていたり、赤みが引いていたりと破壊よりも回復していることを実感することが出来ます。

我慢することなどできないかゆみでストレスをためるのではなく、思う存分掻いて治しましょう。むしろストレスをため込んでしまう方が、体にとってもアトピーにとっても良くありません。

とはいえ、ここで問題は起きます。

それは掻き壊してしまった惨状を見つめ、やはり「せっかく治ってきてたのに、またやり直しだ」と落ち込みたくなってしまうこと。

この気持ちは非常によくわかります。痒いだけならまだしも自己嫌悪まで誘発するのですからアトピーほど憎たらしいものはありませんね。

しかし、尋常ではない痒みが襲ってきたら、残念ながらどうすることもできないのです。掻いてしまったことは仕方がないと割り切り、それよりも明日にはまた肌が回復してくれている。と、どんな状況でも頑張って再生してくれている肌に感謝して心を保っていきましょう。

きっとご自身が掻き壊したら自己嫌悪でいっぱいになると思いますが、もし中の良い友人や家族が掻き壊したら優しく包み込むようにこう言うのではないでしょうか。

「掻いちゃうのは仕方ないよ。痒いもの。でも大丈夫。明日には少しは肌が回復してる。破壊しても日々回復していくから気にしないでいいのよ」

他の人にやさしく声をかけるように自分にも言ってあげましょう。

子供が苦しんでいたら暖かく包み込んであげる

もしあなたの子供が僕の子のようにアトピーに苦しみ、脱ステを行っているのなら、

「掻きたくなったら掻いていいのよ」

と優しく声をかけてあげてくださいね。

子供は大人と違って自制することが出来ず、思いきり掻いてしまうものです。

ボリボリと音が聞こえ、

「もう掻かないで!!」

と言いたくなるほど、それは気持ちよくかきまくるものです。

その様子を見ていると辛くなるし、血だらけになって「痛いよ~」と泣いて訴えてくる姿を見るのも苦しいものです。本人もその様子が嫌なようで「かいちゃったあ」と涙目でボロボロになった患部を見せてくることもあります。

それらの様子を見ると胸が締め付けられ、「掻いちゃだめなのよ!」と言って、掻く手を掴んで無理やり止めようしたくなってしまいます。ですが、子どもも大人と同様にストレスを感じイライラを募らせてしまうのです。

子供には掻いちゃダメ!と怒るのではなく、思い切り掻かせてあげて、温かい言葉で包み込んであげてください。

もちろん、傷がつきにくくなるように爪は短く切り、やすってあげるなどの日々の生活を助けてあげることも忘れずに。

そして、こう声をかけてあげるのです。

「かいてもいいのよ。
かいても、肌は強くなるから。
かいた分よりも明日はもっと回復しているから大丈夫」

いいなと思ったら応援しよう!