〈端境期のアパレル〉店頭だからつくれる顧客と売上

 昨年の長かった夏を踏まえて、例年よりも軽めの秋もので24FWを立ち上げるお店が増えています。かつては9月といえば実売期で、ウールのニットや秋用コートなど季節の先取りアイテムを我先にとご来店されるお客様が多かったものですが、最近ではごく一部に限られるようになりました。

「そろそろ何か欲しい」を「これを買って帰りたい!」に変えよう

 今年も気温の高い秋が予想されるなか、買ってすぐ着られる“夏素材の秋品番”と、心躍る“先取りアイテム”のどちらにお財布を開けるべきか、お客様は迷われます。

 「寒くなったから羽織ものを買いたい」など具体的ニーズのあるお客様が多い実売期に比べ、端境期は「そろそろ何か秋ものでも…」とニーズがまだ抽象的なお客様がほとんどです。この「何か欲しいナ…」ともやもやしている状態に、どうお応えできるかがカギです。

 ニーズを具体化し秋のスタイルをスタートしてもらうことができれば、当日のご購入はもちろんその過程での信頼関係によって今後の顧客化も期待できます。

 では、どんな接客ができると信頼関係が生まれ、お客様の「何か欲しい…」を「コレが欲しい!」に変えられるか、考えてみましょう。

推しアイテムを3つは確認しておく


 FW立ち上がりのいま、入店自体は多くありません。お客様の動向もそこまで偏らないため、実売期に比べると売れ筋がぼんやりとしています。そんな今、アイテム別でおすすめ品番をパッと3つくらい答えられる人がお店に何人いるでしょうか。

 実売期だと体感的に売れ筋が分かるのですが、端境期はうっすらとしているため意識しておかないと即答できません。ニーズが具体的でないお客様とおすすめがすぐ出せない販売員、この二人の会話は世間話で終わりがちです。提案のきっかけとして、推しアイテムが頭の中に常にあるかどうかは重要です。
 
 ブランドの強化品番はもちろん、最近試着が多いものなど、理由を言える推しアイテムを店頭全体で5品番くらい持っておくと、会話が続きやすく接客のチャンスも生まれます。その中には個人的な推しがあってもよいでしょう。好みが合えば話も弾みます。

森より木を見てもらうアプローチ

 ご来店のお客様に、どんなお声掛けをしていますか?店頭にはかなりの数の商品が並んでいます。あてもなく見ていると商品のひとつひとつは目に入らず、まるで森の景色のようです。

 お客様に新作をくまなく見てもらいたいという気持ちから「秋ものがたくさん入荷しておりますのでどうぞごゆっくりご覧ください」というようなお声がけをしがちですが、これだと景色を見ていってと言っているのに近いです。

 そこでたとえば「秋ものがたくさん入荷しておりますので、ごゆっくりご覧ください。まだ暑いですけど、あちらのボディに着せているセーターはもう売れていて、こちらのカットソーはもうすぐ完売ですよ」ここまで言えると、どうでしょうか。お客様は一瞬でもそのセーターとカットソーを見てくださいますし、実際に人気商品なら「へぇ、これが売れてるのか…確かにかわいいかも」と気に留めてもらえるかもしれません。

対面だからできることを意識的に実践

 販売員の皆さんは毎日店頭にいて当たり前になってしまっているかもしれませんが、対面だからこそできるコミュニケーションは小売においてものすごく価値があります。改めて、対面だからできることに自覚をもって意識的にスキルを上げるべく取り組みたいものです。

 というのも、オンラインの商品ページは多くの方が概要を掴みやすい形にまとめられていて、ひとりひとりのお客様にフォーカスした内容にはできません。掘り下げた内容やタイムリーな情報が書けなかったり、お手持ちに合わせたスタイリング提案もできなかったりします。   店頭では当たり前の接客の流れがなかなか通らないのがECです。

 仮に当日のご購入に繋がらなかったとしても、お客様が知りたいこと、知っておいた方がよい情報を適切な深度でタイミングよく伝えられるかどうかが肝心で、それによって「お店にきてよかった、また来よう」と思っていただけるかどうかです。そのコミュニケーションの積み重ねが顧客化という形で実を結ぶのです。
 
 端境期は入店が少ない分、お客様との丁寧なコミュニケーションに時間をとれる時期です。ニーズの引き出し方や話の伝え方を鍛錬するにはぴったりなので、実売期に向けて一回り成長できるよう頑張っていきましょう!

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