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コンサートに出かけただけ、のはずなのに・・・・・。

昨日は、千葉県の君津市まで、最愛のマエストロ・山下一史率いる千葉交響楽団の演奏会に出かけた。

前日の大雨がウソのような秋晴れの日。暦から言えば”冬晴れ”なのだろうけれど、そう呼ぶには、暖かかった。

私の住む松戸市からは、片道電車で2時間半はかかる。クラシック音楽に興味がない方は、「そんな遠いところに、わざわざ・・・・」と、思われるのかもしれない。10年以上前の私なら、たぶんそう思ったはずだ。そのころの私は、クラシック音楽に興味もなかったし、旅を好む人でもなかった。

10年前の大宮ソニックシティでの、仙台フィルハーモニー管弦楽団と山下一史との名演で、一目ぼれしてから、変わったのだ。

加えて、5年前に、山下さんが千葉交響楽団の音楽監督に就任してくださって、千葉県のあちこちで演奏されるようになって、私もまた追いかけるようになったのだった。

千葉県は、日本で2番目に広いのだそうだ。そのくせ、御多分に漏れず、房総半島方面の地域は、基本が車社会で、交通網の整備が乏しい。山下さんたちは、もちろん、そうした地域にも、いや、むしろそういう地域にこそ音楽を届けたいと、少しずつ出かける折を増やしておられる。

私は、日帰りするしかないので、どうしても追いかける範囲が限られるけれど、君津はまだ、電車の本数もあって、小旅行気分で出かけられる地域だ。幸い、ここのホールは、雰囲気も良く、居心地もよい。山下さんたちも、ここでの演奏は好きらしいな、と、聴いていてわかる。

ただ。JR君津駅からホールまでの交通手段が、タクシーかバスしかない。山下さん指揮の演奏を聴きに遠出をする私だけれど、そんなに懐が豊かではないことが少なくないので、本音を言えば、出来るなら、歩いてホールに行きたいのだ。

帰りはどうしても秋に来ることが多いので、日暮れが早く、暗くなってから歩く危険は冒したくない。なので、せめて、行きは歩きたいなぁ、と思っていた。

今回で、君津に行くのは、確か3回目だと思うのだけれど、バスの窓から観る風景はのどかで、気持ちよかった。いまや徒歩民族を自称し自認もしている私の血が、騒ぐのだ。「歩いてみたい!」と。

だが。私は甘かった。公共の施設がホームページに載せている地図が、当てにならないことが多いことを、忘れていたのだ。バスで15分。それなら、私の経験から計算すれば、徒歩で1時間もあれば、着けるはず。もう一つの情報、タクシーでの料金が片道¥2000と出ていたことを、見逃していたのだ。タクシーで¥2000かかる距離が、徒歩1時間で済むはずがないのに。しかも、私は、君津の土地勘がしっかりあるわけでもない、方向音痴だというのに! 

これは、茨城県の龍ヶ崎市に、やはり山下さん指揮の「第九」のコンサートを聴きに行ったときにも痛感したのだけれど、車社会の自治体は、歩く人にやさしくない。

都内だったり、千葉でも都市部では、施設への道案内などもしっかりしている。歩いて訪れる人がいることを、ちゃんと想定しているのだ。

ところが、基本が車社会の地域だと、標識なども車を運転する人眼線でのものになる。駅に観光案内地図が、出来ていたのだけれど、それを観れば、いかにもホールは近いように描いてある。

それをすっかり忘れて、時間に余裕があることで、大船に乗った気分で出かけた私は、大変な目に遭ったのだ。

地図にある目印は、市役所や警察署で、あとはラーメン屋さんやホームセンターだったりした。バスに乗っていて、割に近くにあるんだな、と、感じていたのに、歩いてみたら、かなり離れているではないか。地図にも近くにあるような感じで描いてあったのに。

私はその時、「これはおかしいな」と、気づくべきだったのだ。けれど、ここまでに書いてきたとおりの状態の私は、自分の感覚がずれていることにすら気づけなかった。それでも、歩きながら、ホールへの案内もほとんど見つからないので、だんだん、不安になってきた。

さぁ、どうする? こういう時一番いいのは、地元の人に道を訊くこと。それも、おかしい、と感じた時点で。ところが、どうも私は人に道案内を乞うのが得意ではない。それがかえって事態を悪くするのだけれど、なんとか自力でたどり着きたいと、あがいてしまうのだ(それなのに、私は、人に道案内を乞われることが少なくない。何故?)。

電車を降りて、歩き始めてから、スマフォを観ると、40分ほどたっていた。コンサートは2時からだが、その15分前には、最愛のマエストロのプレトークがある。プレトークはあきらめるにしても、なんとか開演に間に合わせるなら、あと、50分。

結局、コンサート前半には、間に合わなかった。

図書館の受付の方に道を尋ね、言われたとおりに歩いても、その人が言うような道に出てこないので、今度はケーキ屋さんに飛び込んで道を尋ねた。教えていただいた道は間違ってなかった。後でわかったのだが、かなり遠回りのコースを取っていたらしく、バス通りから外れていたのらしい。教えてくださった方たちも、ホールに行くときは、車を使うのだろうと思う。

ホールに着いたときは、前半の終盤戦だった。コンサートの前半は、モーツァルトの「劇場支配人」序曲と、ピアニストの牛田智大さんをソリストに迎えての、ショパンのピアノ協奏曲第2番。

ここで正直に告白するが、私は牛田さんを聴きたくはなかった。なので、彼の演奏を聞かずに済んだことは、ラッキーだったのだ。滴る汗を持参した手ぬぐいで吹きながら、「結果オーライ、ですな」と、負け惜しみではなく、つぶやいたものだった。

ただ、トータル2時間歩きどおしの足は、いやはや、パンパンでした。よくホールにたどり着けたと、自分の無謀さにあきれる一方で、奇跡のような現実に感謝した。

初めて、君津に来た時、「歩く人にやさしくなさそうな街だな」とは、本能的に感じていたのだ。そうした危機感みたいな感覚が、やはり、久しぶりの遠出で舞い上がって、かなり鈍くなっていたのだろう。

君津での”バス15分”は、歩くにはかなり厳しい距離! そう肝に銘じた日でした。ただ、少し土地勘ができた私、無謀にもリベンジしたくて仕方ない。チャンスがあるなら、来年になるのだけれど、さて、その時は来るのか? さすがに雨なら、歩く元気はないので、バス使いますけれどね。

本当は、コンサート聴きに来ただけの人の私、思いがけず2時間のウォーキングしちゃいました、とさ。君津の街と、少しでも仲良くなれていれば、良いのだけれど・・・・、無理かしら???


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