どうやら、新しいステージに進むらしいーーー山下一史&千葉交響楽団の今月2つのコンサートを聴いて、思うこと
今年の10月は、最後の帰省の後、山下一史&千葉交響楽団のコンビでのコンサートを2つ聴きました。
19日の土曜日が、千葉市市民会館での定期演奏会。そして、27日の日曜日が、君津市民文化ホールでのコンサートでした。
19日の定期は、シベリウス&ニールセンの作品を集めた、北欧プログラム。27日の君津は、オッフェンバックとサン=サーンス、フォーレとラヴェルといった、オールフランスプログラム。
山下さんは、現在はドイツロマン派の作品がお好きでもあり、得意ともされていますが、学生時代のお好みは、フランス音楽だったと聴いています。情熱的でありながら、骨太な指揮をされるマエストロです。私は、山下さんの指揮から伝わる人間性豊かな音楽が好きで、聴きに行っています。
千葉響の音楽監督になられてから9年間。チャイコフスキーやブラームス、或いは、ベートーヴェンやシューマン、メンデルスゾーンなどの作品を軸に、千葉響の演奏レヴェルを飛躍的にあげてこられたのです。
この山下さんが、どうやら、千葉響と新しい段階に入りつつあるようだと感じたのが、今月の2つのコンサートでした。プログラムも趣向が変わっていますし、なかなか斬新です。
ことに19日の定期演奏会は、19世紀から20世紀の音楽です。この時は友人と一緒でしたが、彼女曰く「”現代曲”って、東京のオーケストラでも、やっぱり、(お客の)入りは良くないよね。今日はこれ、良く入っているよ」とのこと(クラシック音楽の世界では、19世紀以降の音楽が”現代曲”扱いらしいです)。私自身、シベリウスもニールセンも好きではあるものの、それでもこの日のニールセンの「フルート協奏曲」と「交響曲第2番<4つの気質>」は、知りませんでしたから、初めて聴いたのです。
千葉県のクラシック音楽ファンは、なかなか好みが偏っているようです。ロマン派の作品は好きでも、ベートーヴェンやブラームス、チャイコフスキーやメンデルスゾーンなら、そこそこ集客もできますが、シューマンはどうも人気がないようです。私はシューマンのシンフォニーの3番の「ライン」を早く山下&千葉響で聴きたくて、9年間待っていますが、山下さんが取り上げる気配がないんですね。
逆に山下さんご自身が、ワーグナーとかリストとかショパンとかは、あまりお好みではないようで、まずプログラムに入りません。私自身が好きではないので、この点助かっていますが(^^;たぶん、この3人の作品なら、集客楽でしょうがねぇ。
それを9年間の経験で、よくご存じのはずのマエストロが、秋の定期演奏会で、まったく傾向の違うプログラムを組まれたことに、私は「おや?」と思ったのです。千葉のクラシックファンの成熟度を確かめるための、冒険だったのでしょうか?
フランス音楽にしても、ちょこちょこプログラムに入れることは、もちろんありました。ドビュッシーやラヴェルは、相当お好きのようですし。けれど、それで一つのコンサートを作るということは、なさらなかったんですよね。
君津は、山下&千葉響にとても好意的なホールですし、お客さんもとても暖かいのですね。山下さんの開演前のお話では、ホールからラヴェルの「ボレロ」をリクエストされたうえ、ソリストのピアニスト・實川風(じつかわかおる)さんが、サン=サーンスのピアノ協奏曲の4番を希望されたので、それならと、すべてフランスの作品になさった、とのことでした。
19日の定期演奏会にしても、この日のソリストでもあり楽団員のフルート奏者・吉岡次郎さんの希望から北欧プログラムにした、と、おっしゃっています。
一見、きわめて自然な流れのように聴こえます。山下さんは、オーケストラの方々の希望・提案をまず拒絶されないのだそうです。演奏のアイディアの一つとして取り入れることが多く、そこから楽団員の信頼を得ている部分もあるようです。
そういう方なのだとしても。ソリストやホールからのリクエストをヒントに、思い切ったプログラムを組んだことに、やはり私は一つの予感を抱いているのです。
それは、このコンビが新しい段階に進み始めたんじゃないか、という予感です。
山下さんの千葉響のシェフとしての任期はあと1年です。にもかかわらず、山下さんの口からは、様々な新しい企画の話が出てくるんです。ニールセンのシンフォニーの全曲演奏だとか、君津での新しい企画が生まれつつある、とか。
ニールセンのシンフォニーは確か6曲あるはずですが、これを残りの1年でやったら、大変なことになるでしょうし(集客の面で)、そもそもコンサートの回数が足りません。ベートーヴェンなどと違って、なかなかマニアックな方の作品ですしね。
新しい企画を作るのなら、それを1年限りにするのはもったいない話です。君津側にとっても、単発のイヴェントなら応じないと私は想うんですよ。山下一史人気あってのものなら、定着させないと意味ないですわね。
そう考えると、これはやはり山下さんへの続投要請もあって、それを山下さん自身受け容れるおつもりなのかな、と、私は考えています。
以前記事にもしたのですが、千葉響のホームホールの一つで、現在休館中の習志野文化ホールのパイプオルガン。その存続の是非を問うクラウドファンディング、なんと成功したのだそうです。19日の定期演奏会で、山下さん自ら参加へのお願いをされたのですが、そこから一気に賛同者が増えたとのこと。27日の君津でも再度お願いをされましたが、この日に成立したそうです。
19日の時点であと3000万必要ということだったのに、27日には必要金額残金が350万にまで減っていたのだとか。山下さんの呼びかけでファンが一気に動いたのでしょうね。恐るべし!
実際にはどうなるかはわかりません。答えは来年の今頃出るはずです。
演奏についての言及ができていませんが、これはまた何処かでするつもりです。ただ、どちらも素晴らしかったし、だからこそ、私に「もしかしたら・・・・・」という予感を抱かせたんでしょう。なにしろ、どちらも最近名演を聴いても、涙腺が緩まなくなっている私を泣かせたほどでしたから。
私がいろいろお世話になっている仙台フィルの或る団員さんは、「いや、あんまり長い付き合いは、だめですよ、フラーノさん! ほどほどのお付き合いが良いんですよ」とおっしゃいます。ただ、仙台フィルのようなもう高い評価のあるプロオーケストラには、まだ千葉響はなってません。さらなるひと押しを、山下さんはご自身の最後の仕事とされているのかなぁ、などと愚考する秋です。
寒暖差の大きな陽気ですね。皆様、くれぐれもご自愛くださいませm(__)m💕💛
ここまでお読みくださったあなたに、心から感謝いたしますm(__)m💕💛
ありがとうございますm(__)m💕💛