We Shall Overcome

 ”We Shall Overcome(勝利をのぞみ)"はアメリカの公民権運動で歌われたとして広く知られている曲で、一部の讃美歌集にも載っています。わたしが指導しているJoyful Hope Gospel Choir「オンラインでゴスペル」の今月の課題曲3曲のうちの1曲でしたので、この曲について、少しまとめてみました。

 曲の背景

 "We Sall Ovwrcome"は、ピート・シーガー(Pete Seeger、1919 - 2014)が歌ったとして有名、1960年代のアメリカの公民権運動を象徴する歌です。ピート・シーガーは、「花はどこへ行った(Where Have All the Flowers Gone?)」の作詞作曲をしたフォークシンガーです。わたしが子どもの頃に意味もわからず好んで口ずさんでいた曲は、反戦歌の代表曲だったのですね。黒人活動家の女性が歌っていた"We Will Overcome"をピート・シーガーが改作したもの(バーダマン・里中、2018年、239頁)という説があります。チャールズ・A.・ティンドリーが書いた”I'll Overcome Someday(1901)"の一部を転用し発展したという説が以前は有力でしたが、詩形と拍子が違うことから現在では無理があると考えられています(『讃美歌21略解』、1998年、296頁)。『讃美歌21略解』によると、 The European Magagin and Rondon Reviwに現れる”We Shall Overcome"というアフリカ系アメリカ人の霊歌が原形ではないかという説もあり、それは最初の8小節の旋律が非常によく似ているからで、しかし結びつきの論証はされていないということです。しかしSICILIAN MARINERS260番にこの歌詞がつけられており、SICILIAN MATINERSは船員との関連が強い曲であるので、この旋律が奴隷としてアメリカに連れてこられた人たちの船上での労働歌のようなものだったのかもしれないという説があるということです(前掲書、296頁)。讃美歌21(471「勝利をのぞみ」)では作詞作曲者欄はアフロ・アメリカン・スピリチュアルと記載されています。『讃美歌21略解』の説明では、アフロ・アメリカン・スピリチュアルであるという確証がないのではないかと思います。讃美歌54年版第二篇164番では作詞作曲者がどのように記載してあるかを見てみると、作詞作曲共にアメリカ民謡、編曲Paul Abelsとなっています。この時代の賛美歌集にコード付き楽譜で載っていることにも驚きました。ちなみに、日本のキリスト教会やキリスト教主義の学校現在多く用いられている『讃美歌21』は580曲中にコード付き楽譜の使用は「勝利をのぞみ」を含み2曲しかありません。福音派教会で主に用いらている『新聖歌』には採用されていません。アメリカのバプテスト派の賛美歌集が手元にあったので、作詞作曲者欄を見てみると、作詞はAmerican Folk、作曲はTraditional、Arr, by Paul Abelsとなっていました。他の賛美歌集ではこの曲が載っているのか、載っている場合は作曲者はどのように記載されているのかを調べてみようと思います。

歌詞

We All Overcome

1 We shall overcome, We all overcome, We shall overcome some day; Oh, deep in my heart, I do believe, We shall overcome some day.

2 The Lord will see us through, The Lord will see us through, The Lord will see us through some day; Oh, deep in my heart, I do believe, The Lord will see us through some day.

3 We're on to victory, We're on to victory, We're on to victory some day; Oh, deep in my heart, I do believe, We're on to victory some day.

4 We'll walk hand in hand, We'll walk hand in hand, We'll walk hand in hand some day; Oh, deep in my heart, I do believe, We'll walk hand in hand some day.

5 We are not afraid, We are not afraid, We are not afraid today; Oh, deep in my heart, I do believe, We are not afraid today.

6 The truth shall make us free, The truth shall make us free, The truth shall make us free some day; Oh, deep in my heart, I do believe, The truth shall make us free some day.

7 We shall live in peace, We shall live in peace, We shall live in peace some day; Oh, deep in my heart, I do believe, We shall live in peace some day.

New National Baptist Hymnal #372 (From:Risk, "New Hymns For A New Day")

ピーター・シーガーの歌詞で検索すると上記の1、4、7、5番に加えて

The whole wide world around, The whole wide world around, The whole wide world around someday;  Oh, deep in my heart, I do believe, We shall overcome some day.

他にも

We are not alone, We are not alone, We are not alone some day; Oh deep in my heart, I do believe, We shall overcome some day.

前半の歌詞が後半最後の部分でで復唱されずに”We shall overcome some day"になっているものは後半(Oh, deep in my heart以降)をコーラス部分としているものに見られるようです。

ジョーン・バエズの歌詞にはさらに6番の歌詞の変形ともとれる

We Shall all be free, We shall all be free, We shall all be free someday; Oh deep in my heart, I do believe, We shall overcome someday.

というものもありました。

この曲の作詞作曲についてピート・シーガーの他に、Zilphia Holton、Frank Hamilton、Guy Carawanとなっているものもあり、この辺りはさらに調べてみる価値がありそうに思いました。


参考文献

日本基督教団讃美歌委員会編『讃美歌21略解』、日本キリスト教団出版局、1998年初版、2012年4版。

ジェームス・M・バーダマン、里中哲彦『はじめてのアメリカ音楽史』、筑摩書房、2018年。

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