理解できるようでできない、収斂進化、そして、平行進化に関する雑記。
①高校の生物の教科書で、私の心を踊らせた「収斂進化」について
収斂進化という言葉を、高校で生物を習った人なら、副教材などで触れたかもしれない。定義については実験医学の用語集を借りるが、異なる系統の生物が,環境要因などで同様の選択圧に曝されることにより,似かよった形態へと,それぞれ進化を遂げるような現象、ということになる。
オーストラリアに今も生息する有袋類と他の哺乳類と比較された図表は魅力的で、自分でもこんな世界を触れられるのではないかと思わせるだけの説得力を持っていた。以下のサイトは絶滅した哺乳類も含め、有意義である。極論すればコウモリの翼も飛翔する鳥類の翼の収斂という考え方もできる。機能的には、空を飛んでいる。コウモリにかかった選択圧については、夜行性が多いのに、ならば、地中に潜っても良いのに、どうして飛ぶ方向へ、など、よくわからないが...
収斂進化の10の驚くべき例収斂進化の10の古典的な例、類似した生態系の異なる動物が同じ一般的なボディープランを進化させるプロセス。
収斂進化については、私が非公式の卒業論文のテーマとして、ドナルド・ウィリアムソン博士は、進化の要因として評価していなかった。
一つの環境への適応のために一つの形態になるわけではない、魚の流線型は速く泳ぐのに適しているが、遅く泳ぐのに適しているわけではない...
彼が収斂進化の例としてあげたのは、プルテウス幼生の腕の本数くらいだったのではないだろうか。以下の過去記事をリンクに掲載する。最後の章に関連する事項の記載をしている。
それはさておき、収斂進化の遺伝的な要因については、どのくらいわかっているのか?様々な生物で原因となる遺伝子はわかっているようだ。以下の英語論文は、ショウジョウバエ、トゲウオを中心に例が豊富である。多面的な発現を抑える方向へ遺伝子が変異するという動きが、強調されている。いたずらに変異しても機能が損なわれては生存できないので、理屈としては納得できるように思える。また、遺伝的な要因としては、原因となる遺伝子が交雑により広まることも一因として紹介されている。ただし、近縁種に限った話のようである。
視覚的に感動と説得力のある「収斂進化」であるが、私が何かのフロンティアを開拓するようなことは、ついになかった。夢とロマンそしてチャレンジ精神と若さでもって、未知の世界を知ることなど、言葉で語るほどたやすくはなかった。ニュートンだったか忘れたが、「本ではなく自然に学べ」という名言があるようだが、私も含めた圧倒的多数の凡人にとっては、「本に学べ、そして満たされよ」で良いと思った。
収斂という現象の意味と最近後件については、以下の記事が面白いのでこちらに譲る。形態形質よりも遺伝子の情報を元に系統樹を作成した方が真実に近いということが書かれている。特に、ネズミと瓜二つのハネジネズミとマナティーは、どちらも「アフリカ獣上目」となり、象と同じ進化の枝のうえに分類されることもわかっており、見た目とは想像も付かない視点であるだけに、面白い。
同じネズミに見える小動物でも、系統樹では縁遠い例が、以下の本にも書かれていた記憶がある。安価ではないが、カラフルで写真も満載であり、動物好きにはたまらないのではないかと思う。
ただ、系統樹といえども、細菌や寄生虫の遺伝子の水平伝搬も考慮しなければならないので、系統樹の形は枝と枝が横に絡み合った網状の形をとる、と考えた方が良いようにも思う。
私の過去記事も紹介したい。幼生転移仮説のウィリアムソン博士と、仮説の反対者であるストラスマン博士に関する過去記事である。前者は生物の収斂進化を評価せず、後者は評価していた。
③「収斂進化」と「平行進化」。用語の紛らわしさ、そして、生物の進化としての面白さ。
収斂進化と平行進化という言葉がある。前者は、異なる系統の生物で同様な形態や機能を持つように進化することであり、後者は、同じ系統の生物で同じ環境であっても別々の形態や機能を持つように進化すること、と自分なりに理解している。イメージとしては、前者が、別々の点から始まった直線が一つの点に交わるという絵であり、後者は、別々の点から始まった直線が文字通り互いに平行な直線となって交わる点がないという絵である(非公式の卒業論文では、平行進化という言葉を何度か挙げているので、そのうちの一つのリンク先を貼り付けたい)。
正直、平行進化がどういうものか、というのを、収斂進化に比べても、日本語・英語含めて、あまり見かけることはないという印象がある。以下の記事は、それゆえ、一般向けだがかなり珍しいという感想を持った。ソロモン諸島に住むカグラコウモリ属のコウモリやカリブ海の島々に住むアノールトカゲは、生存競争を回避するためなのか、それぞれのコウモリやトカゲが体の大きさや手足の大きさを変えていくようなのである。
収斂進化は収斂進化で、面白い知見を見つけた。脊椎動物の中でも、系統の異なる魚類などでは、内臓として胃袋がはじめからないものがあるというのだ。そして、幾つかの遺伝子が共通して欠失あるいは偽遺伝子となって機能していないというのだ。
私自身、本当にこの2種類の進化の現象を理解できているだろうか?何とも怪しいところだが、今後も、知的とはいえない老人の身ではあるが、興味だけは持っていきたいと思う。
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