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行政書士試験の基礎知識分野の試験委員のヤマについて

 私はマンション管理士試験の攻略法や勉強方法の記事を書いているヤツという認識だと思いますが、マンション管理士試験よりも先に行政書士試験に合格していて、行政書士試験委員分析とかしていたので、久しぶりにそちらを。


 さて、行政書士試験では、今年の本試験から、「一般知識等」科目は、「基礎知識」科目へ変わります。
「情報通信・個人情報保護」と「文章理解」は、これまでと同様に出題されますが(あと、区分けのハナシなだけで、政治経済社会も出題されると思います)、「基礎知識」科目では「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が新たに加わります。 その諸法令は、行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法の出題が予想され、条文問題が出題されるのではないかと思われます。なので、それらが出題されていた平成18年より前の古い過去問を演習するとよいかと思います。
 
 発表された行政書士試験の新しい試験委員をみると、人数と専門分野の兼ね合いで、新任の木村俊介先生がおそらく担当されるのではないかと思います。総務省出身ですし。
 また、試験委員には、労働法や税法を専門とする先生は選任はされていませんので(平成18年以前は出題されており税法は玉國先生が担当されてました)、余力がある場合にだけ、これらの法律は手を出すことにしておいた方がよさそうです(得点のコスパが悪い)。
 今回は、①試験委員分析って必要?、②R6試験委員(基礎知識分野)、③試験委員からみる出題のヤマ、④ヤマをふまえてやるべき過去問の順に書いていこうかと思います。
 ※今回は、基礎知識の試験委員(2号委員)に絞ります。


■試験委員分析って必要?
 今の時代、あからさまに試験委員の関心論点から出題がされることは減ってきたのですが(なくなったわけではないです)、試験委員制度が導入された平成12年から17年頃まではかなりひどかった。というのも、試験委員の著作を使っていると有利で、試験のネタ本にまでなっていたことがあった時期だからです。
 例えば、石川敏行先生の行政法の入門書からインスパイヤされたパズルの記述式問題やら、兼子仁先生の岩波新書の『新地方自治法』からまんま出題されていたりしましたから…(気になる方は、それぞれ平成12年問37(禁反言)や平成13年問17(地方自治法で住民投票)を見てください)。
 合格点が6割でいいから、難問(Cランク問題)が1割〜2割混ざることも多いため、あまり問題視されなかったのかもしれません。さすがに学部の試験ではなく国家試験なので、それはだんだん改められてきたように感じますが。
 だからといって、試験委員分析は、無益と言うこともないのです。とくに新任の年度は、得意分野から出題されやすいです。
 やはり初期は、
①平成16年に青木輝勝先生の就任→
国際標準化機構(ISO)、国際標準規格(ISO15408)の出題(平成16年問51 及び問56を参照)。
 研究分野がISOだからって(その当時の企業はISO取得とかやってたとはいえ)、1年にISOで2問は偏りすぎてひどい。
 最近の場合では、
②平成26年に坂根徹先生の就任→核軍縮、第二次世界大戦後の国際経済、難民(それぞれ平成26年問51.52.54)の出題
(ついでに翌年は、ストレートに国際連合と国際連盟を出題(平成27 年問47))
 難民や国連研究の先生で、『入門 国際機構』(法律文化社)を書かれているだけのことがあります。行政書士試験では、国連はよく出題されてるから、文句は言えないけど。ISOは文句あるけど。
③令和2年に山本薫子先生の就任→地域再生・活性化(令和2年問題54)の出題
 山本先生は、郊外都市における住民活動、地域活動を専門にされています。

 どうでしょうか。就任初年度は、わりと試験委員の関心事が出題されていますよね。



■R6試験委員(基礎知識分野)
 なので、今年の試験委員のネット上でわかる専門分野くらいは見ましょう。そして、行政書士試験の試験範囲に属するか否か、過去問があるかどうか見ましょう。

1、 生貝直人先生(一橋大学)
 大学のサイトで掲げているキーワードは以下のとおり。
プラットフォーム、情報経済、ソフトロー、自主規制、プライバシー、情報法、インターネットガバナンス、共同規制、表現の自由、情報政策、デジタルアーカイブ、英米法、EU法、著作権、情報通信政策

 そして、主な著作は以下のとおり。あまり関係がなさそうなものは省いてます。ざっくりながめる程度でいいですよ(私は一部読んでますが)。
『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために : その思想、実践、技術』の「本人による自己の個人データの活用」 (分担執筆、ビー・エヌ・エヌ新社、2020年3月)
『デジタルアーカイブ・ベーシックス 1 権利処理と法の実務』の「デジタルアーカイブの構築に関わる法制度の概観」(分担執筆、勉誠出版、2019年3月)
『スパム[spam]: インターネットのダークサイド 』(監修、河出書房新社、2015年12月)
『よくわかる社会情報学』の「政府規制・自主規制・共同規制」(分担執筆、ミネルヴァ書房、2015年5月)
『クラウド時代の著作権法: 激動する世界の状況 』の「諸外国におけるオープンデータ政策と著作権」 (共著、勁草書房、2013年7月)
『デジタルコンテンツ法制 』の「2010年代のデジタルコンテンツ法制」(共著、朝日新聞出版、2012年3月)
『「統治」を創造する新しい公共/オープンガバメント/リーク社会』の「オープンガバメントと著作権」 (共著、春秋社、2011年12月)
『情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究』(勁草書房、2011年10月) 

 主な論文は以下のとおり。
〔鼎談〕EUデータ法が目指す世界. ジュリスト. 2024
EUのAI規制枠組:AI規制論の生成AI前後. 法とコンピュータ学会誌. 2024
欧州におけるデータ法制の展開. 比較法研究. 2023
図書館等のデジタル・ネットワーク対応-特集 著作権法改正と改正動向. ジュリスト = Monthly jurist / 有斐閣 [編]. 2021
座談会 デジタル広告と競争法・透明化法-特集 デジタル広告の法的問題. ジュリスト = Monthly jurist / 有斐閣 [編]. 2021
デジタルプラットフォーム規制を巡る欧州の動向. 法律のひろば. 2021
通信分野の個人情報保護と利活用 : プラットフォームによる/に対する/を通じた統治. ジュリスト. 2019
鼎談 EU新著作権指令の意義. ジュリスト. 2019.
第四次産業革命でデータポータビリティーは不可欠なものに : EUでは、個人主導型のデータ利活用を促すGDPRを制定 (特集 社会を変えるデータ利活用). 金融財政事情. 2018
改正個人情報保護法、そして民間主導のゆくえ. NBL. 2015
プロバイダ責任制限法制と自主規制の重層性 : 欧米の制度枠組と現代的課題を中心に. 情報通信政策レビュー. 2010. 1





2、木村俊介先生(明治大学)
 主な著作は以下のとおり。
『パンデミックと行政法』(単著、信山社、2023年5月)
『広域連携の仕組み』(単著、第一法規、2015年、改訂版2019年)
『グローバル化時代の広域連携』(単著、第一法規、2017年)
『人口減少時代における地域公共交通のあり方』(共著、日本都市センター、2015年)
『都市自治体におけるファシリティマネジメントの展望』(共著、日本都市センター、2014年)

 主な論文は以下のとおり。
自然災害に係る道路の営造物責任に関する考察
比較制度研究 アジア3カ国の地方分権と地方財政 : インドネシア国、フィリピン国及び日本の地方一般財源に関する考察
都市自治体におけるファシリティマネジメントの展望
人口減少時代における地域公共交通のあり方 —都市自治体の未来を見据えて—
超高齢・人口減少社会のインフラをデザインする
まちづくりと地域公共交通(上)(下)
自治体の遠隔型連携の課題と展望 ー新たな広域連携の可能性ー






■試験委員からみる出題のヤマ
 以上の著作から、試験問題を作るとするなら、以下の分野が重要だと予測が立ちますね。


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