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百貨店

 百貨店を1865年、つまりメンデルの遺伝学・不思議の国のアリスの先駆けとして繙こう。 
 三者に通ずるは組合せ術、アルス・コンビナトリアの問題だ。メンデルは「種の起原」にて露わとなった生物の形態の変化を遺伝子の組合せへと変貌させ、不思議の国のアリスは論理学者ドジソンによる言語の組合せ術の書物となった。百貨店は圧倒的物量とその配置による組合せ術だ。1852年のボン・マルシェ開店によって消費社会は視覚に迫る商品の氾濫に直面する。
 この組合せ術に直面する人々に必須なるはどのように夥しい記号を「見る」かの術だ。それはバロック期の消費社会にも問題となる。マンチーニの絵画省察はオランダの西インド会社創設年である1621年のイタリアに於いて商品をどのように「見る」べきかのガイドだ。
 見る目を養う。百貨店の文化事業は「見方」を養い、消費に繋げる事業だ。ここに資本主義の糜爛と美学誕生の影を同時に見る。

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