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板橋区立美術館

 早瀬龍江に中村宏。日本シュルレアリスムの砦たる板橋区立美術館は、シュルレアリスム的な地たる赤塚に「設置」されている。
 デペイズマン。呆気に取られるような並列のこと。この概念は赤塚の地が体現している。閑静な住宅街・丘・大仏。東京大仏は、その脈絡の無さに於いて最も優れた仏教美術だろう。何故か大仏がある。そして近隣の植物園は、デルヴォーの作品を想わせる。
 それだけではない。赤塚の公園には狸がいる。狸のヘルメス的側面に着目しよう。いたと思うと消え、人を騙して悪戯するこの動物は、日本に於いて胡散臭くも神秘的な体験の青写真となっていたではないか。赤塚大仏の憎めないケレン味を考慮すれば、土地柄と言ってもよい。
 この土地に板橋区立美術館がある。思えばシュルレアリスムとはケレン味に溢れた運動だった。ある種の露悪と、「見えて」しまう神秘。シュルレアリスムはサブカルチャーなのだ。ほら、狸もそう言ってる。

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